TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

春の朝。 大学の中庭にはまだ薄い霧が残り、桜の花びらがゆっくり舞い落ちていた。 紫苑は、自転車置き場の前で足を止める。 さっきから背中が少しだけざわざわしている。 風の音とも違う、気配とも言えない、落ち着かない感じ。

紫苑

(昨日の“影”……やっぱり見間違いだったよな。
俺、疲れてんのか……?)

愛梨

しおんっ!おはよーーっ!!

突然背中に飛びつく勢いで抱きついてきて、紫苑は前のめりになる。

紫苑

うわっ!?あ、あいり!?朝から全力で来るなよ!

愛梨

ふふっ、ごめんごめん〜

二人とも朝から元気だねぇ。あいちゃん、いつも飛びついてしおんくん困ってるよ?

愛梨

だって幼なじみじゃん!遠慮する必要ないし!

紫苑は顔を赤くして目をそらす。 少し遅れて美羽が髪をまとめながら合流する。

美羽

ほんと、あんたらだけ漫画みたいにテンション高いのね。……で。今日の放課後の話だけど

昨日の会議を振り返る4人

昇降口に入ると、学生たちの声が響いている。 愛梨はノートを大事に抱えたまま、紫苑に見せる。

愛梨

見て〜!昨日の“ふかけん”ノート、まとめてきたよ!

ページにはびっしりと ・サークルの目的 ・やりたいこと ・必要な備品 ・調査したい場所 が可愛い字で並んでいた。

紫苑

おお……めちゃくちゃしっかりしてるな

美羽

愛梨、昔からまとめ役だけは優秀なんだよね

愛梨

だけ?!

褒めてるんだよ〜、あいちゃん。僕も手伝うから、なんでも言って

愛梨は満面の笑みでうなずく。

そんなやり取りを見ながら、紫苑はふと視線を感じた。昇降口のガラス。 そこには自分たち4人の姿が映っている——はずなのに。一瞬だけ、ひとつ影が多く見えた気がした。

紫苑

(、、、、)

美羽が廊下を見回しながら話す。

美羽

それで。調査場所なんだけどね、候補が一つあるの

愛梨

え、、どこ!

美羽

“旧部室棟”。
 大学の北側の森に近いところにあるやつ

愛梨

あそこ……夜になると誰かいるって噂の?先輩たちが入らないほうがいいって言ってた場所だよ!?

でも、噂ってだけでしょ……?
もし使えるなら、僕たちの部室にできるかも

美羽

そう。まずは外から確認するだけ。中に入るかどうかはそのあと決める

紫苑はまた背中に感じるあの“ざわり”に眉をひそめる。

紫苑

(旧部室棟……噂だけならいいけど……昨日からなんか変だ)

愛梨が紫苑の顔を覗き込む。

愛梨

しおん?こわいの?

紫苑

怖がってねぇよ!考えてただけだって!

美羽がにやりと笑う。

美羽

じゃ、決まりね。放課後——

その瞬間、紫苑の背後で何かが落ちたような音がした。

カランッ…… 廊下には誰もいない。 風が吹いた形跡もない。

だが、紫苑の足元に古い鍵がひとつ、転がっていた。

紫苑

なんだこれ

愛梨が鍵を拾い上げる。

愛梨

ん……これ、なんだろ。
番号も何も書いてないし……

美羽

旧部室棟っぽくない?
雰囲気からして

なんだか……呼ばれてるみたいだねぇ

紫苑は背筋に冷たいものが走るのを感じた。

愛梨

大丈夫だよ、4人なら怖くないから!

美羽

放課後。旧部室棟の入り口まで行こう。あくまで“見るだけ”。いい?

3人がうなずく。 夕方の鐘の音が、どこか不安げに響いていた。

美羽

じゃあ、放課後ね。みんなで行こ。旧部室棟、ずっと気になってたし!

愛梨

おお〜!なんかワクワクするね!え、でもホラースポットじゃないよね…?

大丈夫だよ、あいちゃん。明るいうちに行けば怖くないと思う……たぶん

愛梨

多分って言った!!!

紫苑

まぁ、4人いればなんとかなるだろ。…てか、旧部室棟って立ち入り禁止じゃないのか?

美羽

ううん、完全には禁止じゃないよ。使ってない部室が多いだけ。ゼミの準備室とかは残ってるし。

愛梨

そっか〜!じゃあちょっと安心した…

あいちゃん、怖くなったら僕の後ろに隠れていいよ

愛梨

ありがとう!しずく!

紫苑

(いや…俺の後ろでもいいんだけどな…言えないけど…)

美羽

じゃ、授業終わったら下駄箱集合ね!全員遅刻しないこと!

愛梨

はーい!

うん、わかった。

紫苑

おう。

紫苑

(旧部室棟…昔から噂はあったけど、本当に何かあるのか?
まあ、美羽が言うんなら、行くしかないか…。
それより愛梨…怖がりすぎないといいけど。)

愛梨

(怖いのは嫌だけど…みんなで探検ってちょっと楽しそうかも。紫苑、なんか今日ずっとボーっとしてるなぁ…。大丈夫かな?)

(あいちゃんが怖がらなければいいな…。
でも4人なら、きっと大丈夫。昔みたいに。)

美羽

(絶対あの部室棟は怪しい。
誰も使ってないのに、夜だけ電気ついてるって前から噂だったし…確かめるなら今しかない。)

**放課後のチャイムが鳴る**

愛梨

終わったあああ!

紫苑

疲れたああ

愛梨

よし!紫苑、行くよ!

紫苑

お、おう!

じゃあ下駄箱で合流しよ。

美羽

みんな遅れないでよー!私ひとりで先に行くからね!

4人はそれぞれの荷物をまとめ、 わずかに緊張と期待を胸に、下駄箱へ向かう――。

(靴を履き替えながら)

愛梨

わぁ、今日めっちゃ人多い…!紫苑、早く早くー!

紫苑

わかったって…そんなに急がなくても。

あいちゃん、楽しみなんだね。ほら、靴紐ほどけてるよ。

愛梨

えっ!?あ、ほんとだ!

紫苑

ほら貸して。踏んだら危ないだろ。

愛梨

ありがと…!紫苑、なんかお母さんみたい。

紫苑

お母さんじゃねぇよ。

でも紫苑は昔から面倒見いいよね。

(バッグを肩にかけて登場)

美羽

お待たせー!ごめん、先生に呼び止められてさ。

愛梨

みうちゃん!来た!

紫苑

よし、これで全員か

じゃあ行こ。旧部室棟って…校舎の裏側だよね?

美羽

うん。グラウンドとフェンスの間を抜けていくと着く。
あんまり人通りがないから、迷わないようにね。

4人は並んで歩き出す。 まだ夕方で明るいはずなのに、校舎の影が長く伸びていた。

愛梨

なんか…この辺って人いないね

授業で使ってない教室ばかりだからね。でも、ほら大丈夫。僕ら4人いるし。

紫苑

美羽、ほんとに場所わかるのか?

美羽

大丈夫。知らないわけないじゃん。この大学、ホラー好きには有名なんだよ。

愛梨

えっ…やっぱホラーあるの?!

美羽

まだ言わない。現地で説明する!

愛梨

えぇぇぇぇーーー!!

グラウンド横のフェンスを抜けると、 古びた二階建ての建物が姿を現す。 窓はところどころ割れ、壁の塗装も剥がれ落ちている。 しかし、入口の引き戸だけは妙に綺麗だった。

紫苑

…なぁ、美羽。あの入口だけ新しくねぇか?

美羽

でしょ?それが気になってたの

なんだか…空気がひんやりしてきたね。

愛梨

し、紫苑……帰るなら今のうちだよ…?

紫苑

大丈夫だって。ほら、行こう。

4人は旧部室棟の前に立ち、 静かに息を呑んだ――。

愛梨

……ねぇ、ここほんとに入るの?

美羽

もちろんでしょ? “霧影大学七不思議” の発祥地だよ?

うん。ほら、掲示板にも “元・研究棟は立入禁止” って薄ーく残ってる…

愛梨

だから怖いんだってば!!

紫苑

大丈夫だよ、愛梨。
 もし何かあっても、俺が――

愛梨

えっ、しおんがなに

紫苑

い、いや! なんでもない!!

美羽

はいはい。ラブコメは後で。

美羽

あれ……? カギ、空いてる。
なんだ〜、せっかく鍵開けようと思ってたのに!

紫苑

空いてる? さっき閉まってなかった?

愛梨

え…やだ…誰か中にいるってこと?

紫苑

いや、この棟ってもう使われてないはずだし。
……でも、ドアが少し開いてるのは変だな

美羽

ほら、見て。隙間できてるでしょ?
鍵かけ忘れた…とか?

紫苑

だけど、ここ放置されて10年以上なんだよな。
“かけ忘れ”は無いだろ…

愛梨

ねえ…本当に入るの? こわ…

美羽

もちろん! 入るよ!!
だって、せっかく鍵あるんだしっ!

紫苑

……いや、あるのに開いてる方が不気味だろ

愛梨

た、たしかに……誰か先に入ってるってこと?

美羽

もしくは、まだ“誰かが中にいる”とか?

紫苑

おい、脅すなよ。あいり固まってるじゃん

愛梨

か、固まってないし?

でもさ、この旧部室棟って普段使われてないんだよね?なのに鍵が開いてるの、やっぱり変じゃない?

紫苑

管理の人が点検に入ってるとか?

美羽

午後のこの時間に点検ってあんまりないよ。照明もついてないし……

愛梨

え、えーっと……どうする? やめとく?

美羽

やめるわけないじゃん。せっかく来たんだし

うん。ここまで来て引き返したら逆に悔しい

紫苑

……しょうがない。じゃあ俺が先入るよ

愛梨

ちょっと待って!!!!

紫苑

な、なんだよ、

愛梨

暗い中にひとりで入るのは絶対ダメ!!みんなで入ってよ!まとめて!!

美羽

大丈夫だよ、あいり。置いていかないから

よし、じゃあ4人で一気にね。
せーの――

(ギィィ……という湿った音を立てて扉が開く)

紫苑

……なんだよ、思ったより普通じゃん

愛梨

え……? が、がらんとしてる…

美羽

うん。誰もいないし、足跡もないね。ホコリがずっと放置されてる感じ

“いた気配”も全然しないね。
つい最近まで使ってたって感じじゃない

愛梨

なんだ……良かった……

紫苑

でもさ……鍵が開いてたのに、
誰もいないって逆に妙じゃない?

美羽

そうだね。埃の溜まり方からして、最近ここに人が出入りした跡はないよ

じゃあ誰が鍵を開けたんだろ……?

(一瞬だけ空気がひんやりする)

愛梨

やっ、やめてよ……その言い方……なんか怖くなるでしょ…

紫苑

……まあ、とりあえず今日は下見ってことで。奥の方も見てみるか?

美羽

そうだね。何もないって分かれば一番いい

うん、行こ。

(そっと足を踏み入れながら)

気をつけてね

(4人が慎重に奥へ進む。足元には薄いホコリが積もっている)

愛梨

うぅ……なんか薄暗い……こういうところ、苦手なんだよね……

紫苑

大丈夫だって。足元転ばないように気をつけろよ

(壁をそっと触りながら)

美羽

この棟、かなり古いみたい。
壁、少し湿気てる……

……あれ? 奥に扉があるよ

愛梨

えっ!? 扉? こんなとこに?

紫苑

本当だ……しかも、なんか他のより古くない?

(奥の扉は薄茶色く変色し、所々塗料が剥がれている。取っ手は黒く錆びている)

美羽

ちょっと待って、この扉……
他の教室の扉と形状が違う

うん、ノブが古いタイプだし……元々は別の用途だった部屋なのかもね

愛梨

ねえ……この扉……なんか……開けちゃダメな感じする……

紫苑

いや、まあ……気になるけど……
とりあえず取っ手を──

しおん、待って。開ける前に、一応確認しよ?

美羽

そうだね。鍵がかかってるかどうかだけでも…

紫苑

…分かったよ。触るだけな

(しおんがそっとノブに触れる)

ガチャ……

紫苑

……えっ、開く?

愛梨

ひ、開いちゃうの……!?

(ドアノブが「ガチャ…」と音を立てた瞬間)

美羽

――ちょっと待って!!

紫苑

うわっ!? なんだよ、急に……!

愛梨

び、びっくりしたぁ……心臓止まるかと…

みうちゃん? どうしたの?

(美羽は扉のすぐ横、床の端にしゃがみ込み、何かをじっと見ている)

紫苑

おい、なに見つけたんだ?

(指先で埃を避けながら)

美羽

ここ……床だけ、埃が薄い。
踏み跡みたいな……線が残ってる

愛梨

え……じゃあ誰か、この扉使ったってこと……

最近だと思う。埃の厚みが周りと違うよ

紫苑

ってことは、ここ……
本当に“使われてないはず”の部室なのか?

美羽

それに……この跡、扉から中に向かって続いてる。
中に“入った誰か”がいる可能性……ゼロじゃない

愛梨

や、やだ……その言い方……ホラーじゃん…

あいちゃん、大丈夫。僕ら4人一緒だから

紫苑

どうする? 開けるか、それとも

僕が、見てくるよ

愛梨

えっ!? し、しずくが……? 危なくない?

美羽

しずく、無理しないで。危なかったらすぐ戻って

大丈夫だよ。

紫苑

……気をつけろよ

うん!

(雫はそっと扉に手をかけ、ゆっくり押し開ける)

ギィ……

……あれ?

紫苑

どうした? なにか見えたのか?

ううん……なんか思ってたのと違って……

美羽

違うって……どういう……

ちょっと、言葉にしづらいから……中、見てみて?

愛梨

えっ、なに……? なにがあるの……?

再会モノガタリ〜再会は祝福か、それとも呪いか。

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

4

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚