君になりたくて

バァンッ…

スパイクは日坂のコートに叩き落とされた。

ピッ＿＿＿

試合終了のホイッスルが鳴り響く。

県大会2回戦目

勝てばベスト8確定の試合で

セット数は0ｰ2

日坂は負けた。

凌は皆に向けてバッとを頭を下げた。

皆の悔しそうな顔を見て明里は口を噤んだ。

マネージャーは1番近くで選手を見守ることの出来る存在

でも、選手とマネは一緒ではない

仕方ない

決勝戦まで進んだ高校に負けたなんて普通のことだ

あの"負け"は恥ずかしいことではない

凌くんの頑張りは誰よりも知ってる

その上での"負け"

凌の顔がぶわっと赤くなった。

明里は体育館に入った。

県大会から数週間が立った。

明里はドリンクを作っている。

その時、

「おい」

と、声をかけられた。

明里は後ろを振り向く。

男の子にしては少し小柄な身体に私服姿。

明里は珍しく眉間にシワを寄せた。

なによ急に

しかも誰！？

なんでこんな人にムキになってるの私…

一颯が体育館から姿を現した。

男の子はぷいっと振り返り、

スタスタと歩いて行ってしまった。

体育館に戻ろうとする明里の腕を一颯はパシッと掴んだ。

一颯は真っ直ぐ明里を見つめる。

告白の時のことが蘇り、明里の顔はカッと赤くなる。

明里は視線を泳がす。

一颯は明里の逃げ道を塞ぐように壁に手を当てた。

絶体絶命だ…