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#へたりあ
主
主
主
主
紅茶の香りが、まだ少し苦手だった頃。
イギリス
低い声に、アメは慌てて背筋を伸ばす。
カップに口をつけると、舌に渋みが広がって思わず顔をしかめた。
アメリカ
イギリス
即答だった。
逃げ場のない言い方に、唇を引き結ぶ。
けれど視線の先では、イギがわずかに眉を緩めていた。
イギリス
その言葉に、アメは小さく頷く。
意味はよく分からなかった。
ただ、それで十分だった。
認めてもらえるなら。
アメリカ
机を叩く音が、やけに大きく響いた。
イギリス
変わらない声。変わらない言い方。
それが余計に腹立たしい。
アメリカ
アメリカ
アメリカ
睨みつけても、イギは視線を逸らさない。
まるで、最初から結論が決まっているみたいに。
イギリス
その一言で、何かが決定的にずれた。
アメリカ
吐き捨てるように言って、椅子を蹴る。
背を向けたあとも、視線が刺さる気がした。
振り返らなかった。
アメリカ
静まり返った部屋で、その言葉だけがやけに軽かった。
イギはすぐには答えなかった。
ほんのわずかの沈黙。
けれど、今までにない種類の間。
イギリス
アメリカ
苛立ちを隠さず返す。
すると、あっさりと返事が落ちた。
イギリス
拍子抜けするほど簡単に。
アメリカ
思わず声が出る。
もっと引き止めると思っていた。
もっと、面倒なやり取りになると。
けれどイギはそれ以上何も言わなかった。
ただ、手元のカップに視線を落としたまま。
その表情は、よく見えなかった。
久しぶりに足を踏み入れた部屋は、あまり変わっていなかった。
イギリス
言われて、なんとなく従う。
差し出された紅茶に、少しだけ懐かしさを覚えた。
アメリカ
イギリス
とだけ返した。
それだけ。
昔なら、何かしら言い返してきたはずなのに。
沈黙が続く。
カップを置く音が、妙に大きく聞こえた。
アメリカ
何気なく言ったつもりだった。
世話を焼かれる理由も、もうない。
軽く言うとイギは
イギリス
また同じ返事。
それ以上、何も続かない。
どこかで、噛み合わないまま。
会う回数は多くない。
会話はもっと少ない。
それでも完全に途切れないのは、なぜなのか分からなかった。
アメリカ
机の上に置かれたカップ。
昔と同じ香り。
アメリカ
そう言うと、イギは手を止めた。
ほんの一瞬だけ。
イギリス
それだけ言って、何事もなかったように引いた。
あっさりと。
まるで最初からなかったみたいに。
その様子に、少しだけ違和感を覚えた。
理由までは、考えなかった。
アメは肩をすくめた。
アメリカ
軽く言ったつもりだった。
区切りの確認みたいなものだ。
イギリス
あっさりと返事が来る。
それで終わるはずだった。
なのに。
沈黙が落ちる。
やけに長い。
アメリカ
訝しくなって顔を覗き込む。
そのとき、初めて気づいた。
視線を逸らしたまま、肩がわずかに揺れている。
アメリカ
理解が追いつかない。
怒っているわけでもない。
責めているわけでもない。
ただ、声も出さずに、静かに泣いている。
アメリカ
言葉が続かない。
望んだ通りの関係になったはずだ。
縛られない、対等な。
それなのに。
目の前のそれは、どう見ても――
イギリス
イギは何も言わない。
拭おうともしないまま、ただ涙を落とす。
その理由を、アメは最後まで理解できなかった。
カップの縁に、わずかに残った跡を見つめる。
すでに冷めきった紅茶。
湯気はもうない。
昔は、すぐに冷める前に飲めと言っていた。
今は、何も言わない。
言う理由がないからだ。
手を伸ばしかけて、止める。
そこにあるはずのものは、もうない。
――最初から、なかったように扱うべきだ。
そう決めたのは自分だ。
……好きにするといい
あのとき、そう言った。
あれ以外の言葉を選べたのかは、今でも分からない。
引き止めるべきだったのか。
あるいは、もっと早く手放すべきだったのか。
どちらにしても、同じ結末になった気がする。
だから。
間違っていない。
そう思うしかない。
指先に、わずかな熱が残る錯覚があった。
幼い頃、当然のように掴んでいた手の感触。
振り払われたときの、あの一瞬の軽さ。
思い出す必要はない。
忘れるべきだ。
すでに終わったことだ。
……もう親じゃねえんだからさ
さっきの言葉が、やけに鮮明に残っている。
正しい。
すべて、正しい。
自分で認めた関係だ。
それなのに。
どうして、ああいう顔を見せたのか。
理解できないのは、むしろ自分の方だ。
視界が滲む。
理由は分かっている。
だが、それを言葉にする必要はない。
してしまえば、何かが壊れる。
――いや、もう壊れているのか。
……そうだな
誰もいない部屋で、同じ返事を繰り返す。
それが一番、正しいから。
カップに残った紅茶は、最後まで手をつけられなかった。
主
主
主
主
主