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僕は無貌の君を撮る

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僕は無貌の君を撮る

1 - 僕は無貌の君を撮る

♥

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2020年07月10日

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写真を撮るのが好きだった

特に、家族や友達の笑顔を撮るのが好きだった

でも、それはもう過去のこと

今となっては、君の笑顔も思い出せない

ごめんなさい

柚希

御影?何ボーッとしてるの?

御影

ん?ああ、悪い

御影

少し考えごとをな

どうやら、僕の幼馴染みである柚希が話しかけていたようだ

柚希

ふーん、まぁいいけど

御影

それで、何かあるのか?

柚希

私の話聞いてた?

柚希

はぁ

柚希

御影、私がどんな顔をしてるか分かる?

御影

・・・

御影

笑顔、かな?

僕は不安げに答える

柚希

・・・

柚希

正解!

どうやら合っていたようだ

御影

見れば分かるでしょ

柚希

そうだよね

柚希

少し、気になったからさ

御影

・・・

柚希

最近、よく私の顔から目を反らすから

柚希

もしかして、私の顔が変なのかなぁって思って

御影

そんなわけない

御影

柚希は可愛いよ

柚希

嬉しいな、ありがとう

御影

はいはい、どういたしまて

僕は照れを抑えるため、素っ気なくかえす

御影

あ、そうだ

御影

柚希、写真撮っていいか?

柚希

え?いいけど

柚希

久しぶりじゃない?写真撮るの

御影

最近はそういう気分じゃなかったから

御影

それに、僕にはこのカメラは高価すぎる

御影

もう少し安い物の方が気安く触れるよ

そう言って僕は、お高そうなカメラを見る

このカメラは、ポラロイドカメラというもので 僕の好きなメーカーのカメラだ

柚希

ひどいなぁ、そのカメラ、私が御影のために買ったんだよ

柚希

使ってもらわなきゃ、カメラと私が泣くよ?

そうだ、これは僕の誕生日に彼女からもらった物だ

ネットで値段を調べたら、5万ほどする物で 白目を剥きそうになったのを覚えている

御影

はは、ごめんごめん

御影

じゃあ、撮るぞ

御影

はい、チーズ!

パシャ!

御影

・・・

柚希

どうかな?

柚希

綺麗に撮れてる?

御影

ちょっと待って、今現像されてるから

僕はカメラから現像された写真を見る

柚希

どう?

御影

あぁ、とても綺麗だよ

僕は、泣きそうになるのを抑え言う

柚希

…そう

柚希

御影、私そろそろ帰るね

御影

ん?もうそんな時間か

柚希

ええ、じゃあまた明日

御影

ああ、また明日

そうして彼女は部屋から出ていく

見送りはしない

そうしたら、もう耐えられないから

そして、一分ほど経っただろうか

御影

うぅ…

御影

ごめん、ごめん…

僕は泣いた

好きな人への申し訳なさでいっぱいだった

御影

何で、何で、僕は

ふと、僕の膝の上に置いてある先ほどの写真を見る

やはり、彼女の顔は無貌だった

貴方のことが好きだった

貴方の無邪気な笑顔が好きだった

でも、それはもう過去のこと

今となっては、貴方の本当の笑顔を見ることはできない

ごめんなさい

御影

・・・

柚希

・・・

ボーッとしてる彼の顔を見る

柚希

可愛い

口から、そんな言葉がこぼれた

柚希

っ!

自分が発した言葉に照れていると

御影

…ごめんなさい

彼の口からそんな言葉がでてきた

柚希

・・・

その彼の無意識の言葉を聞き、さっきまでの高揚感が一気に霧散する

柚希

御影…

彼は、私が気づいていないと思っているのだろうが 私は気づいている

彼が私の顔が見えていないということに

最初は少しの違和感だった

そうして、彼の両親に聞くと どうやら彼は相貌失認という障害をもったと聞かされた

13歳の頃の事故の後遺症のようなものらしい

そして、この症状は相手の表情や その相手が誰なのか判断がつかない、といったものがあるらしく

その中でも彼は特異で

相手の顔が真っ黒に塗りつぶされて見える、らしい

だから彼は今、声や仕草で相手が誰なのかを判別していると

彼の両親は泣きながら話してくれた

柚希

私の顔も、

きっと、彼には無貌に見えるのだろう

柚希

・・・

柚希

はぁ

ネガティブな考えを払拭するべく、私は彼に声をかける

柚希

御影?何ボーッとしてるの?

御影

ん?ああ、悪い

御影

少し考えごとをな

そこから私たちはいつもの会話をしていたけれど

彼は、何かを思い付いたような声をだし

御影

柚希、写真撮っていいか?

柚希

え?いいけど?

そう私に言った

私は彼が写真を撮ろうとするとは思わず、少し驚いたが了承した

御影

はい、チーズ!

パシャ!

御影

・・・

柚希

どうかな?

柚希

綺麗に撮れてる?

私は、残酷なことだとわかっていながら、彼に聞く

御影

ちょっと待って、今現像されてるから

柚希

どう?

彼は、今にも泣きそうな歪な笑いで

御影

あぁ、とても綺麗だよ

そう言った

柚希

…そう

もう限界だった

私は、目から涙を溢す

急いで私は涙を拭ったが

彼は私が涙を溢したことに気がつかず

歪に笑っていた

それが私の胸を締め付けて

柚希

御影、私そろそろ帰るね

御影

ん?もうそんな時間か

柚希

ええ、じゃあまた明日

御影

ああ、また明日

そうして私は逃げ出した

柚希

…ただいま

私は、誰もいない家に 帰りを知らせる言葉を響かせる

柚希

・・・

私は今日のことを振り返る

柚希

御影…

彼は顔が見えなくなってから、趣味の写真を撮らなくなった

風景写真を撮ろう、と誘ったことはあったが拒否された

柚希

でも、今日は

写真を彼は撮った

彼は前に進もうとしている

なのに、私は…

柚希

ごめんなさい…

私は彼のことを手伝うべきなのだろう

でも、彼がそれを拒否したらと考えると行動ができなくなる

柚希

・・・

ふと、机に置いてある写真立てに入っている写真を見る

そこには幼い頃の私と彼

眩しくなるような笑顔をしてる写真を見て

柚希

許して…

私はその写真に縋る

いつか彼が、無貌の私の笑顔を撮り

笑ってくれるのを期待する

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