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第1話 - あ

2023年03月26日

#恋愛

結城真矢

マコト

ワカナさん、こんばんは

マコト

連絡先教えてくれてありがとうございます！派遣初日で疲れましたよね

マコト

改めましてマコトです。今年で29歳なので、ワカナさんの10個下ですかね

マコト

若輩者ですが、仕事の連絡もこっちのほうが手軽だと思いますので、気楽にご連絡ください

マコト

これからよろしくお願いします

ワカナ

マコトさん！今日はありがとう。こちらこそよろしくね

ワカナ

敬語なんて嫌よ、普通に仲良くお話ししましょ？

マコト

いや、10歳も歳上の方にそんなことできませんよ…

ワカナ

いーやーだ！タメ口にしてちょうだい

マコト

…わかりました、それで仕事がしやすくなるなら

マコト

改めてこれからよろしく、ワカナさん

ワカナ

ふふ、お願いね

ワカナ

あ！名前も呼び捨てね！

マコト

いや、それはさすがに…厳しいかな

ワカナ

えー、どうしても？

マコト

立場もあるから…ここは譲れないよ

マコト

ワカナさんまだ派遣で入社したばかりで慣れてないでしょ？

マコト

仕事ならここでいくらでも教えるから、そのつもりでお願いします

ワカナ

もーしょうがないな

ワカナ

代わりにもっと仲良くなったらお願いね？

マコト

…一旦その話はやめにしよう、分かったとは言えないから

マコト

ひとまず、仕事のことはここで聞いてね

マコト

それじゃあお願いします

〜数日後〜

ワカナ

ねえマコト

ワカナ

早く返事してよ

ワカナ

ねえってば！

マコト

ワカナさん？どうしたの？

マコト

今日はお休みだったよね？

ワカナ

ねえ、全然連絡くれないのね

ワカナ

私あれからずっと待ってるんだけど

マコト

え？なんのこと？

マコト

仕事で何か連絡事項あったかな…

ワカナ

そうじゃないの！！

ワカナ

仕事のことじゃないのよ

ワカナ

全然誘ってくれないのね

ワカナ

随分焦らすじゃない？

マコト

誘う？なんのこと？

マコト

ここ最近は飲み会もないよ？お願いする仕事もないし…

マコト

もしかして送信先間違えてる？

ワカナ

そんなんじゃないの

ワカナ

全然デート誘ってくれないじゃない！！

ワカナ

連絡先交換してからデートのお誘い待ってたのよ！

ワカナ

私、あなたの気持ちがわからない

マコト

いや、待ってよ

マコト

デートってなんのこと？

マコト

そんな約束した覚えないよ

マコト

それにこれは仕事用の連絡だけに使うって話をしたよね

ワカナ

えーそうだっけ？

ワカナ

連絡先聞いたら、普通はデート行くって思うものでしょ？

ワカナ

あ、そっか

ワカナ

さては恋愛経験ないんだ！なんにも知らないのね？

ワカナ

マコトってばイケメンなのにウブなんだから！

マコト

いや、そんなことは…

ワカナ

良いの良いの！

ワカナ

ここは私が手取り足取りレクチャーしてあげなきゃね？

ワカナ

ふふ、オフィスラブって昔から憧れだったのよ

ワカナ

今週末どうかしら？2人とも休みよね

ワカナ

どうせ行くなら〜、高級フレンチとか良いわよねぇ？

マコト

あの、どういうこと？

ワカナ

あーでもぉ、マコトのほうが稼いでるじゃない？…頼りにしていいよね？

マコト

ちょっと待ってください

ワカナ

ああ、高級フレンチは負担だったかしら…まあ初めはおしゃれなとこなら文句ないわ

マコト

いやそういうことじゃなくて

マコト

なんで僕がワカナさんとデートすることになってるんですか？

ワカナ

ええ？だってマコトがそう言ったんじゃない

マコト

一言もそんなこと言った覚えはありませんよ

ワカナ

ほら、また敬語に戻ってるって！

ワカナ

それに、呼び捨て、お願いね？私はもう呼び捨てにしちゃうからね

マコト

この際はっきりお伝えしておきます

マコト

僕はそんな気持ちありませんよ

マコト

それに、職場のグループチャットに僕とワカナさんの名前を使った投稿もやめてください

マコト

みんな僕とワカナさんが付き合ってるように勘違いしている人も出てきてます

マコト

何か勘違いさせてしまっているかもしれませんが…

ワカナ

そんな気がなくても良いのよ！

マコト

え…？

ワカナ

女性が求めていたら、それに応えるのが男ってものでしょ？

ワカナ

大丈夫よ、ちゃんとリードしてあげるから！

マコト

いや…仕事用の連絡だと何度も言ってるじゃないですか

マコト

ひとまず今日は落ち着いてもう寝てください

ワカナ

なんか冷たいのね

ワカナ

まあいいわ

ワカナ

また会社でいちゃつきましょ！

ワカナ

じゃあね！

～深夜～

ワカナ

ねえ、まだ起きてる？

ワカナ

ねえ早く起きてよ

ワカナ

たすけて

マコト

…こんな深夜にどうしたんですか

マコト

夜中の3時ですよ？

ワカナ

あ！良かった起きてた

ワカナ

ねえ、今から家行ってもいい？

マコト

はあ？

ワカナ

お願いよ、寂しくなっちゃったの

マコト

いま何時だと思ってるんですか！明日も仕事なので寝ますね

ワカナ

待って！怒らないでよ

ワカナ

ね？一晩だけ一緒にいてほしいのよ

マコト

嫌です

ワカナ

マコトのハンカチだけじゃ物足りないの！！

ワカナ

男ならいい加減察してよ！！

マコト

え、それって僕のハンカチを持ち帰ってるってことですか？

ワカナ

そうよ、何か悪いの？

ワカナ

女性がしたいと思ったら、男性は従わなくちゃいけないのよ

マコト

そんなわけないじゃないですか

マコト

だからか、最近身の回りの物がよく紛失するのは…

ワカナ

机の上に放置してあったペンとか、食べかけのお菓子ももらっちゃった！

ワカナ

でも良いじゃない、これが愛情表現なんだから

マコト

良いわけないでしょ、何してるんですか？

マコト

立派な盗みですよ

ワカナ

なに堅苦しいこと言ってるの？

ワカナ

そんな間柄じゃないよね

ワカナ

もう恋人同士でしょ？

マコト

いい加減にしてください、だから何度も言ってますよね？

マコト

僕とあなたは恋人なんかじゃないです

マコト

プライベートなので伏せてましたが、もう言いますね

マコト

僕、彼女いますよ

ワカナ

なに…？

ワカナ

どういうこと？

マコト

だから、僕彼女いるんです

マコト

ちなみにもう同棲までしてます

マコト

あなたを家に呼ぶことも、恋愛関係になることもありませんので

マコト

だからこれ以上付きまとわないで下さい

ワカナ

私のこともてあそんだってことよね！？

ワカナ

ふざけんなよ！！

ワカナ

あんたタダじゃおかないから！！

マコト

はあ？

ワカナ

これってれっきとした不倫よね！？

ワカナ

会社に訴えてるから！！

マコト

なに言ってるんですか…

マコト

どう見たっておかしいのはあなたでしょ…

ワカナ

いいえ！あんたがおかしい！！

ワカナ

彼女がいることも隠して、人のことたぶらかして

ワカナ

マジでふざけんなよ、浮気者の女たらしが

マコト

本当にひどいな…

ワカナ

会社に言われたくなかったら、さっさと彼女と別れて私と付き合いなさいよ！！

ワカナ

それで全部チャラにしてあげる！

マコト

なんて人だ…

マコト

そんなことでは別れませんよ

ワカナ

はー、そんなこと言っていいんだねｗ

ワカナ

会社は女性である私の言うことを信じるだろうけど？

ワカナ

社会は女性優遇なのよ、恋愛も社会も決定権はいつだって女性なの！

ワカナ

あなたはなんにも知らないだろうけど、そういう風にできてるのよ？

ワカナ

男性であるあなたが勝てるわけないじゃないｗｗ

マコト

ひとまず僕からもあなたのこと会社には報告しますからね

マコト

それだけは知っておいてください

ワカナ

あーはいどうぞどうぞｗ

ワカナ

後悔すると思うけどなー

～1週間後～

ワカナ

ねえ、今日派遣会社から呼び出されてるんだけど

ワカナ

何かした？

マコト

ええ、この前の件など、いろいろ報告済みです

ワカナ

それだけ？

マコト

どうしてですか？

ワカナ

いや、何だか知らないけどすぐ支社に来いって

マコト

ああ、そうなんですか

ワカナ

あんた、何かしたの！？

マコト

だから報告しただけですよ

マコト

あなたの職務怠慢や、勝手に不倫とか言いふらして騒ぎを起こしたこと

ワカナ

それだけでこんなことになるわけないじゃない！！

マコト

なりますよ

マコト

ワカナさん、仕事もサボってばかりでしたよね？

マコト

仕事そっちのけで恋愛小説ばかり書いて

マコト

そして職場でも再三注意したのにデートプランのことしか話さない

マコト

仕事になってないの、わかってますか？

ワカナ

いや、それは…

マコト

あなたは社会は女性の味方と言ってましたが、そうじゃなかったみたいですね

マコト

これが社会というものですよ

マコト

あなたの契約解除をすることになりましたので、そのおつもりで

ワカナ

へ…？

マコト

部長や派遣会社とも相談して、本日そう決まったんですよ

ワカナ

まだ、契約更新、まだよね？

マコト

ここまでのことになったんです

マコト

もうそれどころの話じゃありません

ワカナ

なんで、勤務態度が多少悪かっただけで…？

マコト

いえ、あなたは窃盗などの犯罪までしてましたよね

マコト

このチャットでもそうお話していたじゃないですか

ワカナ

いや、あれはノリというか、冗談みたいなものでしょ…

マコト

あまり嘘を重ねないで下さい

マコト

他にも僕の家までつけてきたこととか全部

マコト

脅迫じみた不審な手紙もポストに入れてましたよね？

マコト

僕、実は全部知っていたんですよ

ワカナ

な、なによ

ワカナ

脅してるつもり？

ワカナ

証拠、ないでしょ！

マコト

いえ、私物がなくなった時点で家や職場に小型カメラを仕掛けておいたんです

ワカナ

へ…？

ワカナ

なに、してんの

マコト

職場のカメラは部長に許可を取ってあるので言い付けても無駄です

マコト

カメラにはしっかりあなたが映ってましたよ

マコト

部長とも相談して、仕方なく派遣会社と警察に通報したんです

ワカナ

うそ、でしょ

ワカナ

ま、待って

ワカナ

本当なの？

マコト

本当ですよ、あなたと違って嘘はつきません

マコト

こんな大ごとにしたくなかったんですが

マコト

彼女を傷つけるような手紙があったらさすがに我慢の限界です

ワカナ

うそ、うそ

マコト

警察から連絡が行くのも時間の問題です

ワカナ

ね、ねえ…？

ワカナ

今からでも私達やり直せない？

ワカナ

これからは真面目に仕事するから…ね？

マコト

もう遅いんですよ

マコト

最初に注意したときからそうしていれば良かったのに

ワカナ

どうして、こんなことに…

ワカナ

私、警察に捕まるの…？

マコト

さあ、どうでしょうね。経歴に傷はつくんじゃないですか

マコト

どうしてこうなったのか、しっかりと反省してください

ワカナ

え、私どうなるの…

ワカナ

社会も警察も私を守ってくれるわよね？

マコト

そんなわけないじゃないですか

マコト

何度も言わせないで下さい

ワカナ

おねがい、ちょっと待って、下さい

ワカナ

一度、直接お話しませんか？

ワカナ

お願いします…どうか

マコト

人の物を盗んだら窃盗罪、脅迫したら脅迫罪です

マコト

恋愛の決定権は知りませんが、社会と法律の決定権は男女関係ないんです

マコト

あなたはなんにも知らないんですね

ワカナ

そんな…

マコト

言い分があるなら警察署で聞いてもらってください

ワカナ

お願い、助けて…

～後日談～

マコト

それからワカナさんは程なくして派遣会社に呼び出された

マコト

派遣会社の役員からこっぴどく叱られた上、その場でゴネりだしたために派遣会社自体をクビになったそうだ

マコト

その後、警察からも呼び出され、事情聴取を受けたらしい

マコト

どうなったかはまだわからないけど、経歴に傷がついたことは間違いない

マコト

あれだけのことをしたんだから当然だ

マコト

しばらくして、ワカナさんを見かけた知り合いによれば、日雇い労働の現場に姿を見せているらしく

マコト

当時に比べてかなり老け込んでしまったそうだ、まともな職場には受け入れられなかったらしい

マコト

さらに、婚活パーティでも見かけたらしく、そこでも相変わらずだったようで

マコト

誰からも受け入れられていなかったみたいだ

マコト

一方で、ワカナさんのいた派遣会社からは、あの一件から優秀な派遣さんがたくさん来てくれるようになった

マコト

仕事も順調にいき、昇進の話まで来ている

マコト

そしてなんと、同棲していた彼女と結婚も果たした！

マコト

この幸せを大切にしようと思う

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結城真矢

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