取り返しのつかない失敗をしてしまい、誰にも言えない
そんな経験はないだろうか?
私には
ある
あれは、私がまだ小さかった頃のことだ
ときどき遊びに行っていた祖父母の田舎には、奇妙なお祭りがあった
お祭りがあると聞いた幼い私は
女の子
といったのだが、祖父母によると
私が思っているような、屋台が出るお祭りではなくて
宗教的な儀式色が強いものなのだそうだ
どんなお祭りかというと
村から少し離れた、森にある神社で
選ばれた女性が一晩寝て過ごす、というものだ
このとき、村人たちは赤いろうそくを灯し
神社では緑のろうそくを灯すという
そういえば、昔見た村中を照らす赤いろうそくの火が きれいだったのを覚えている
そのろうそくは村で手作りしていたらしい
私も一度だけろうそく作りを手伝ったことがある
実は、そのことが「失敗」につながっているのだが……
手伝ったと言っても、ほとんどの部分は おじいちゃんやおばあちゃんがやっており
私は最後の仕上げをしたに過ぎない
その仕上げで、私は間違いを犯してしまったのだ……
何でもそのろうそくは一般的な木の実の油に
この村に生えている特殊な植物を混ぜており
赤いろうそくと緑のろうそくで成分が違うらしい
油そのものは祖父母が既に作っていて
私はそれをろうそくの形にするのと、色つけを手伝った
油の状態ではどちらも無色透明だった
それに染料で色をつけるのだ
おばあちゃん
おばあちゃんが指差したところを見ると、黒っぽい粉が置いてあった
緑、というより黒だけど、まあ深緑と言えなくはないのかな?
おばあちゃん
おばあちゃん
女の子
女の子
おばあちゃん
おばあちゃん
そういうことだったのか!
両方とも黒っぽい粉だと思っていたけれど
よく見ると、黒い粉と、光に当てると緑に見える粉があった
さっきはその区別がつかず
どちらも黒い粉だと思い込んでいたのだ
どうやら私は間違って、緑のろうそくに赤い染料をまぜたらしい
そうなると数があわないから
私はこっそり赤いろうそくに緑の染料を混ぜておいた
……これがよくなかった
おばあちゃんは私の間違いに気がつかなかったようで
本来の成分とは逆のろうそくが出来てしまった
私はそのことを言えずにいた
その後、せっかくろうそくを作ったということで
私は祭りに参加することになった
すると、村の偉い人が、私に神社で一晩寝る役をやらないか、といってきた
おじいちゃんおばあちゃんは渋ったが
この村にはもうあまり若い人がいないらしく
結局、私が神社で一晩寝ることになった
おじいちゃん
おじいちゃん
おばあちゃん
夜になると、村の大人たちに連れられて神社にやってきた
私は自分で作った緑のろうそくに灯をともすと
準備されていた布団に横になり、眠りについた
……が、私は眠れなかった!
神社は狭く、外は真っ暗だ
それに、そもそも一人で寝るという経験は、私にとっては初めてのことだった
しかも神社には当然誰もおらず、真っ暗で物音一つしない
恐怖すら感じる環境だった
よくみんなこんなところで眠れるなぁと思った
それでも明け方頃に少しうとうとしたが、すぐに目が覚めてしまった
目が覚めると一刻も早く神社から出たかった
布団から起き上がると、すぐに神社を出た
そして赤いろうそくに火を点け、帰ろうとした
しかし、昨日よく眠れなかったせいか
赤いろうそくに火をつけた途端、強い眠気に襲われた
女の子
そこで、私は赤いろうそくを足元に置くと
神社の階段でそのまま横になって眠ってしまった
気がついたときはもう日が高く昇っており、 ろうそくはほとんど消えかけていた
私は急いでおじいちゃんおばあちゃんの元に帰った
たったそれだけの出来事なのだが
私はこのときやってはいけないことをやってしまったらしい
おじいちゃんおばあちゃんの村から帰って来たときから
私は奇妙な夢をみるようになった
夢の中では、不気味な触手が私の部屋にいる
触手は、私のことは無視して、部屋から出ようとしている
私はこの触手を出してはいけないと思うのだが
何も出来ずにいる
そんな夢だ
おじいちゃん達の田舎から帰ってきてこの夢を見るようになったことから
私はなんとなく
この夢とあの祭りが関係あるのではないか、という気がした
そこでお母さんに、あの祭りがどんなものなのか聞いてみることにした
女の子
女の子
母
母
女の子
女の子
母
母
女の子
母
母
母
女の子
母
母
母
母
女の子
母
母
女の子
女の子
母
母
なんてことだ
私がろうそくを間違えて作ったせいで
きっとあの化物を連れて帰ってしまったんだ……!
そう考えたが、何日かすると、あの触手の夢を見なくなった
最初私はほっとして
きっとろうそくを間違って作った罪悪感から悪い夢を見ていたのだろう
と考えた
女の子
女の子
あの触手は、私の夢から 出てきてしまったんじゃないか?
そう考えると、急に恐ろしくなった
あの触手は、あのあとどうなったんだろうか
これが、私の体験した取り返しのつかない失敗だ
もしかしたら私は
やばいものを街に解き放ってしまったかもしれないのだ……
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