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雨雪を翔ける二つの剣は。

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雨雪を翔ける二つの剣は。

12 - 第十話 逆の立場

♥

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2023年10月23日

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真冬視点

彼方さんが任務に出てから、少し経った

いつもより遅い時間だから、もしかしたら怪我をしているかもしれない

そう思って、僕は手当てをする道具を一式、すぐに使えるようにして待っていた

すると、部屋の襖が開いた

真冬

っ、彼方さ…

真冬

!!

そこに立っていたのは、顔や腕に血がついたままの彼方さんだった

真冬

彼方さん!

真冬

彼方さん、大丈夫ですか?怪我したんですか…?

彼方

真冬……

彼方さんはいつもと違って、どこか上の空で返事も曖昧だった

真冬

とにかく怪我見ますから、こっち座ってください…!

僕は彼方さんの手についた血を洗い流して、羽織を別のものに取り替えた

そして切り傷を止血して、処置を施した

真冬

…はい、とりあえず処置は終わりました

彼方

うん……

真冬

…彼方さん?

彼方

…………

真冬

彼方さん、彼方さん…

いくら揺すっても、呼びかけても、彼方さんはそれに反応しない

真冬

っ、彼方さん!

彼方

彼方

…何?

何回も名前を呼びながら揺すっていると、やっと反応した

真冬

やっぱり変ですよ、何かあったんですか?

彼方

別に、何も……

真冬

っ……

真冬

何かあったに決まってます、お願いだから話してください!

彼方

…何も、ない

真冬

…!!

彼方さんは、僕から顔を背けてそう言った

真冬

そうやって、そうやっていつも…

僕はその顔に手のひらを当てて、僕の顔が見えるように固定した

真冬

何で僕を頼ってくれないの…!?

真冬

絶対に何かあったのに…絶対に彼方さんが辛いことになってるのに…!!

真冬

僕のことを巻き込みたくない?それとも僕にまで辛い思いをさせたくない?

真冬

そんなのどうでもいいから…っ!!

真冬

…お願いだから、僕のこと頼ってよ

彼方

真冬……

光の灯っていない青色の瞳で僕を見つめる彼方さんは、何とも言えない表情をしていた

それを見て、僕はさらにやるせない気持ちになった

真冬

っ…

真冬

何で頼れないの、僕、そんなに頼りない相方なの?

彼方

……!

そう僕がつぶやくと、彼方さんの目には少しずつ光が灯っていく

そして、同時に瞳が潤んでいた

真冬

っ…う…

僕は溢れてくる涙を抑えられなくて、彼方さんの目の前で、涙を拭った

彼方

っ…ごめん……

そう言って彼方さんは、僕の肩に頭を乗せた

僕はその体を腕の中で抱えて、僕もまた彼方さんにつられてたくさん泣いた

真冬

…………

真冬

(結局、聞けなかった…)

あの後、彼方さんは泣き疲れて眠ってしまった

僕はそんな彼方さんを布団に寝かせて、今は隣の畳の上で僕も寝転がっている

真冬

彼方さん……

僕はそう呟きながら、彼方さんの顔にかかった横髪を耳にかけた

昔とは違う、切り傷の跡だらけの体

こんなに大きくなったのに、僕も彼方さんも、ある意味成長できていないところはあるのかもしれない

そう思いながら僕は、目を閉じて眠りに落ちた

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