テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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殲脳教室

第1話 - 殲脳教室第1話

621

2021年08月31日

#ホラー

#学園

#高校生

七里ハルト

母親

あら、タケル

母親

おかえり

タケル

…ただいま、母さん

母親

あ、ちょっと待って

母親

話があるの

タケル

…なに？

母親

あんた、なにか隠してることない？

タケル

…なにもないよ

母親

前はあんなに暴れてたのに

母親

今じゃすっかり大人しくなって

母親

なんだか感情がないっていうか…

母親

”更生クラス”に移ってから、ずっとそう

母親

そこで何をされているんだい？

母親

母さん、心配なんだよ

タケル

…心配することはないよ

タケル

…俺は変わったんだ

タケル

…今では、心がすっきりしてる

タケル

…確かに以前は

タケル

…最低な人間だったけど

タケル

…これからは、社会の役に立つんだ

母親

それなら嬉しいけど…

母親

こんなに急に性格が変わるなんて

母親

なんだか気味が悪い…

タケル

…なにも問題はない

タケル

…じゃあ、部屋で少し休むから

母親

わかったわ

タケル

…うん

母親

あら、ちょっと待って

母親

頭にホコリがついてるよ

母親

取ってあげる

母親

（…えっ！）

母親

（頭に何か硬いものが…！？）

母親

（な、なに…これ…！！）

母親

タケル！！

母親

あんたの頭のそれって…！？

タケル

…ああ

タケル

…気づかれちゃったか

タケル

…なら、仕方ない

母親

し、仕方がないって！？

タケル

…こうするしかないんだ

タケルは壁に立てかけてあったバットを手にすると

それを振り上げて、渾身の力で母親を殴った

バゴッ！！

母親

あがっ…！？

母親の頭からは血が吹き出し

驚愕の表情を浮かべたまま、床に倒れこむ

そして、動かなくなった

タケル

…ふう

タケルは台所へと向かい、ガスの元栓を全開にする

ライターを手にすると、それをじっと見つめた

タケル

…わたしはおやくにたてませんでした

火をつけたとたん

タケルの体は爆風で吹き飛んだ

新生高校2年C組

担任

おはようございます

生徒たち

…おはようございます

担任

声が小さいな

担任

おはようございます！

生徒たち

おはよう…ございます

担任

ふん

担任

相変わらず覇気のない連中だ

担任

今日は、転校生を紹介します

担任

じゃあ君、挨拶しなさい

シンジ

はじめまして

シンジ

香月シンジです

シンジ

〇〇県にある〇〇村という、

シンジ

かなり田舎のほうから越してきました

シンジ

よろしくお願いします

生徒たち

…………

担任

みんな、仲良くすること

担任

じゃあ香月くん

担任

君の席は、一番後ろの窓側だ

担任

さっさと席につきなさい

シンジ

（なんか横柄な先生だな）

シンジ

（それにこのクラス）

シンジ

（変な雰囲気だ）

シンジ

（緊張が張り詰めている…）

シンジ

（席はここか）

シンジ

（隣は、女子だな）

シンジ

（なんか、目をそらしてる）

シンジ

よろしく

シンジ

ええと、君の名前は？

女子

…………

シンジ

（無視か）

シンジ

（どうなってるんだ、このクラス）

昼休み

シンジ

（昼休みなのに、静まり返っている）

シンジ

（会話もなく）

シンジ

（みんな黙々と弁当を食べてる）

シンジ

（異様だな）

シンジ

（ちょっと、外に出てみるか）

シンジ

（廊下にも、誰もいない）

シンジ

（他のクラスも静かだ）

シンジ

（この学校全体が）

シンジ

（おかしな空気に包まれている…？）

ドン！

シンジ

（背中を叩かれた…）

シンジ

（誰だ？）

シンジ

（あれ、隣の席の子？）

シンジ

（彼女…）

シンジ

（かわいいけど、目つきが鋭いな）

シンジ

君は…

女子

しっ！

女子はあたりを警戒するように見渡すと

シンジの腕を引っ張って、誰もいない理科室に連れ込んだ

女子

ここなら、話ができる

女子

でも先生に見つかるとやばいから

女子

あまり大きな声は出さないで

シンジ

あ、ああ

女子

私は、瀬戸ユウカ

ユウカ

さっきは無視してごめん

ユウカ

校則で、私語は禁止されてるの

シンジ

この学校、どうなってるんだ？

ユウカ

驚いたでしょ

シンジ

みんな何かに怯えているみたいだな

ユウカ

そうね

ユウカ

でも、3ヶ月前までは違ってた

ユウカ

笑顔や活気がある普通の高校だった

ユウカ

なのに、アレのせいで…

シンジ

アレって？

ユウカ

突然、使われなくなった旧校舎に

ユウカ

”更生クラス”ができた

ユウカ

完全に隔離されてるの

ユウカ

一般の生徒は、近づくこともできない

シンジ

へえ

シンジ

ずいぶん、物々しいんだな

ユウカ

生徒は

ユウカ

学校に常に監視されていて

ユウカ

ちょっとした校則違反でも

ユウカ

そこに送られてしまう

シンジ

なるほど

シンジ

みんなが怯えているのは、そのせいか

シンジ

だけど、”更生クラス”っていうのは、

シンジ

どんなところなんだ？

ユウカ

わからない、でも…

ユウカ

”更生クラス”の生徒は、みんな変なの

シンジ

変って？

ユウカ

どんな生徒でも、そこへ行くと

ユウカ

感情を失ってしまうの

ユウカ

まるで、ロボットみたいに…

シンジ

ふーん

シンジ

それは興味深いな

ユウカ

とにかく！

ユウカ

忠告しておいてあげる

ユウカ

この学校では、大人しくしておくこと

ユウカ

絶対に、問題を起こしちゃダメ

ユウカ

”更生クラス”に行ったら、終わりなんだから！

シンジ

終わりって？

ユウカ

そこから、誰ひとり

ユウカ

戻ってきた生徒はいないんだよ！

突然、廊下で叫び声が響いた

男子生徒

やめて──！

男子生徒

離してくれ──！！

シンジ

なんだ？

ユウカ

あ、ドアを開けないで！

ユウカ

（開けちゃった……）

シンジ

（清掃業者の制服を着た男たちが）

シンジ

（生徒を引きずってる…？）

シンジ

（顔が血まみれだ）

シンジ

（こいつらが殴ったのか？）

シンジ

おい、どうしたんだ？

男子生徒

た、助けてくれ！！

男子生徒

”更生クラス”なんかに行きたくない！！

シンジ

何をしたんだ？

男子生徒

もれそうだったから

男子生徒

トイレに急いで行こうとして

男子生徒

つい廊下を走っちゃったんだ

シンジ

はあ？

ユウカ

廊下は走らないって校則

ユウカ

彼はそれを破った。だから…

シンジ

たった、そんなことでかよ

男子生徒

なあっ！

男子生徒

こいつらを、なんとかしてくれ！

バキッ！

男子生徒

うがっ！！

シンジ

（男が生徒の顔に膝蹴りを…！？）

シンジ

（歯が飛び散った）

シンジ

（ひどすぎる）

シンジ

おまえら、何者だよ？

男たち

…………

シンジ

（顔色ひとつ変えない）

シンジ

（気味の悪い奴らだ）

男たちは生徒を連れて、無言で立ち去っていった

ユウカ

彼らは”掃除屋”って言うの

ユウカ

”更生クラス”の警備員であり

ユウカ

生徒を連行する役目もある

ユウカ

学校のゴミを処分するから

ユウカ

掃除屋と呼ばれてる

ユウカ

先生や掃除屋に歯向かっちゃダメ！

シンジ

そう言われると

シンジ

なんだか行ってみたくなったよ

シンジ

その”更生クラス”へ

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