医者
先生の声が、部屋中に響く。
明日から、一時的にひまちゃんはここのベッドの上からいなくなる。
明日にはー…
四角い机の周りを、 俺らは囲って座っている
先生はカルテを見ながら、 説明をする。
俺らはそれを黙って聞く。
横を見ると、下唇を軽く噛んで、 俯いてるいるまちゃんがいた。
らんらんだって、 話はしっかり聞いていながらも、 膝に置いた手は震えている。
こさめちゃんも、 眉を顰めて。
みことちゃんも、 今までに見たことないような 苦しそうな顔をしていた。
先生の話が終わっても、 俺らはまだそこにいた。
動く気はなかった。
一人一人、覚悟を決めていた。
彼は必ず、生きて帰ってくる。
そう信じて、俺は目を瞑る。
きっと、あと一つ。
何か、何かが思い出せない。
俺の、
君と…、
すち
ピロン
すち
すち
すち
すち
俺が死ななきゃ、みんなが死ぬ。
そうだ、俺が自殺した理由は
これなんだ。
遺書は書く時間がなかった。
誰かに伝える気もなかった。
でも、みんなが死ぬのは嫌だった。
だから俺は自殺したんだ。
すち
いつかは覚悟した死も。
両親を殺した俺でさえも。
自殺することに恐怖を感じた。
ただ、一瞬。
一瞬が、大切に思えた。
死ぬのは怖かった。
けど俺が死なないことで みんなが死ぬことの方が 倍に怖かった。
すち
暇72
暇72
すち
すち
暇72
すち
すち
すち
暇72
暇72
暇72
すち
すち
すち
すち
暇72
暇72
すち
暇72
暇72
すち
『たぶん、死んでるけど』
きっと、心の中ではそう思ってた。
記憶の中の自分の顔は、 無理に笑っているように見えた。
ひまちゃんは天井を見たまま目を瞑っていたから、気づいていない。
嗚呼、これが、
いや、なんで言わなかったんだろう
あのメールのことを
きっと、わかってくれたのに
彼だったら大丈夫って言ってくれたはずなのに…
すち
すち
その日、俺は寝なかった。
ひまちゃんを、見てたかったから。
死者に、そんなのいらないだろうけど
きっともう、最後だと思っていたから
すち
暇72
すち
すち
すち
すち
暇72
すち
なんで俺は…
この日、俺はとびおりた。
そして、運良く生きていた。
でも記憶をなくしたから。
なんで記憶が消えたのかも
自殺をしたのかも、
思い出せなかった。
けど心の中では、 少しの満足感があった気がする。
目覚めてからずっと、
これで良かったんだって、
思ってたのかな。
俺は、みんなが大好きだったから
みんなに死んでほしくなかったから
自殺したんだ。
血のつながった家族でないからこそ。
守りたかったんだ。
俺の中の宝物は、
みんなで、
俺は、
本当は“優しい”人だったんだ。
すち
こさめ
LAN
いるま
すち
すち
すち
みこと
すち
いるま
すち
すち
LAN
LAN
LAN
すち
すち
…ぎゅっ、
すち
こさめ
こさめ
みこと
みこと
すち
LAN
LAN
LAN
LAN
LAN
すち
いるま
いるま
いるま
いるま
LAN
みこと
医者
医者
こさめ
いるま
医者
すち
医者
LAN
医者
医者
こさめ
すち
ガララララッ
みこと
いるま
こさめ
すち
LAN
LAN
LAN
すち
こさめ
いるま
みこと
みこと
LAN
LAN
LAN
すち
すち
すち
すち
絶対生きろ。
絶対死ぬな。
俺らは声が枯れるまで
そう続けた。
一人の2本の腕に対して
5人の手のひらが乗せられた。
大丈夫。
君は強いんだ。
絶対、一緒にいきれるから。
絶対戻ってこれるから。
俺らは、ずっと、願った。
声に乗せて、ずっと願った。
君が、また。
俺らと過ごす日はすぐ近くにある。
絶対離れ離れになんてならない
お願い神様。
また俺らに、奇跡をください。
その軌跡で、俺らは救われるんです。
俺らの目には、大量の涙があった。
みんなぐちゃぐちゃになりながら 嘆いた。
どんなに恥ずかしくても、 醜くてもいい。
彼とまた過ごせるのなら、 もう何も望まない。
彼の細い指は、
この夜、みんなに握られていた。
時間の流れは早かった。
秒針の音なんて、 もう聞こえなかった。
コメント
26件
シクフォニみんなの応援のところで泣いたぁ 絶対、絶対に成功するから!!ひまちゃん頑張れ!
ひまちゃん頑張れっ!! 感動しました!続き楽しみです!
ぬぉぉぉぉ表現が天才すぎて 泣いたんだけど、、泣 手術成功まじで願ってる!!