美乃里
結構しつこいなぁ…
美乃里
今日もスルー、っと
美乃里
…ん? 部屋の前に何か白い物が…
猫
にゃあ
美乃里
…猫?
美乃里
可愛い~!!
美乃里
飼い猫だよね…綺麗だし
美乃里
近所に住んでる人の猫かなぁ…
美乃里
早くお家に帰るんだよ?
猫
にゃあ
ドアを開けて部屋へ入ろうとすると、猫も一緒に入って来た
美乃里
こらこら、ここはきみの家じゃないよ
猫
にゃあ~
美乃里
…お腹空いてるの?
美乃里
仕方ないなぁ…一緒に食べようか?
猫
にゃあ
一体どこから来たのか分からないその白猫は、取り分けた夕食の魚を行儀よく食べる
けれど食事を終えても部屋を出ていく気配がない
仕方がないのでその日は一緒に寝ることにした
美乃里
君がイケメンの彼氏だったら最高なのにね
美乃里
な~んて、2次元ばっかに恋してる女に彼氏なんて出来っこないか
美乃里
おやすみ
猫
にゃ~う
謎のイケメン
おはようございます
美乃里
ん…ん~…?
謎のイケメン
そろそろ起きませんか?
美乃里
(あれ…?イケボの目覚ましアプリなんて入れてたっけ…)
ぼやけた頭でうっすら目を開けると見慣れた部屋の天井と…
謎のイケメン
おはようございます!
美乃里
(見慣れないイケメン!!)
美乃里
!!???
謎のイケメン
昨夜はありがとうございました
謎のイケメン
美乃里様の体温…とても温かくて幸せでした
美乃里
え…え!?
美乃里
(昨夜!?体温!?)
美乃里
(私、まさかこの人と…!?身に覚えがないんだけど!!)
謎のイケメン
どうかしましたか?
美乃里
(ちょっと待って…こんな至近距離で見つめられたら…)
美乃里
キャパオーバーですぅ~!!
謎のイケメン
えっ…美乃里様!?
謎のイケメン
美乃里様~!!
美乃里
う…ん…
美乃里
あれ…?
美乃里
私、さっきまで何してたっけ…
美乃里
何かすごく都合のいい夢を見てたような
美乃里
夢…?
美乃里
そうだよね、夢!
美乃里
全部夢だったんだ
美乃里
私の部屋にイケメンがいるなんてシュチュエーション、あり得ないって
美乃里
乙女ゲームのやりすぎかな…
謎のイケメン
あの、美乃里様…
美乃里
え?
美乃里
さっき夢で見たイケメン!
謎のイケメン
夢ではありません
謎のイケメン
私は、昨日お食事と寝床を与えていただいた猫です
美乃里
いやいや、どう見ても人間だよ?
謎のイケメン
美乃里様とお話をするために今は人の姿になっております
美乃里
って言われても…
美乃里
一体何者?
謎のイケメン
名乗るのが遅れまして申し訳ありません
謎のイケメン
私、セナと申しまして
謎のイケメン
猫の王国の、次期国王となる者です
美乃里
次期国王…王子様!?
美乃里
って、まさか、あの怪しいメッセージの犯人!?
セナ
読んでいただけていたのならば
セナ
どうして返信を下さらないのですか?
美乃里
どうしてもなにも、そんな話信じられる訳ないじゃない
美乃里
その顔で何人の女性を騙したのか知らないけど
美乃里
私はそうはいかないから!
セナ
とんでもありません!
セナ
私が妻にしたい女性は美乃里だけ
セナ
こんなに魅力的な女性を騙すなんて…あり得ません
美乃里
魅力的!?!?
美乃里
そ、そういう台詞を軽々しく言えるのがまた怪しいのよ!
セナ
そう言われましても…
セナ
私にとっては貴女以上の女性はいません
セナ
素敵な人に素敵と言うのがいけませんか?
美乃里
と、とにかく!
美乃里
あなたのような得体の知れない男の
美乃里
意味の分からない言葉をすんなり信じるほど馬鹿じゃないから
美乃里
早くこの部屋から出ていって!
セナ
…そうですか
セナ
そこまで拒絶されてしまっては、どうしようもありませんね…
セナ
ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした
セナ
失礼いたします
セナと名乗った男はしょんぼりと肩を落として去っていった
美乃里
……
美乃里
何か罪悪感残るけど…
美乃里
ううん、騙されちゃダメダメ!
美乃里
忘れよう!!
美乃里
すっかり帰りが遅くなっちゃった…
美乃里
…あれ?
美乃里
…野良猫?
美乃里
ずいぶん弱ってるみたい…
猫
…にゃ…
美乃里
見ちゃった以上放っておけないし
美乃里
ひとまずウチにおいで
弱り果てていた猫を抱き抱え、急いでマンションの自室へ戻る
美乃里
きみ、何だか泥だらけだね
美乃里
とりあえずお風呂入ろっか?
汚れたその猫を浴室へ連れていき、温かいシャワーでゆっくりと泥を落とす
美乃里
ん…?
美乃里
茶色く見えてたのは全部汚れだったの?
美乃里
なんだ、本当はこんな綺麗な白い毛並み…
美乃里
って、この白猫、どこかで見覚えが…
セナ
またもお世話になってしまいましたね…
美乃里
!!
セナ
やはり貴女はお優しい方だ
聞き覚えのある低音ボイスと共に、白猫はみるみる人の姿になっていく
美乃里
あ、あなたは…!!
セナ
猫王国王子、セナです
美乃里
そんなことよりまず服を着るか体を隠して!!
セナ
おっと…失礼いたしました
美乃里
気を取り直して…
美乃里
一体どうしてあんな姿に?
セナ
花嫁を連れ帰ると宣言して国を出てきた以上帰ることが出来ず
セナ
とはいえ野良として生活 したこともありませんので…
セナ
一国の次期国王ともあろう者が、情けないことにこのざまです
美乃里
私のせい!?
セナ
とんでもありません!
セナ
私が勝手に美乃里様に惚れてしまっただけですから
セナ
美乃里様に責任は一切ありません
美乃里
って言うけど…
美乃里
責任感じずにはいられないよ
美乃里
猫っていうのが本当ってことは分かったし
美乃里
悪い人には見えないから…
美乃里
いきなり結婚じゃなくて、まず付き合ってみるところからなら
セナ
いいんですか!?
美乃里
そんな喜ばれると…
美乃里
何か恥ずかしいんだけど
セナ
喜ばずにいられません!!
セナ
私の恋人になって下さるんですね!?
美乃里
えっと、まぁ…一応ね
セナ
ありがとうございます!!
セナ
きっと猫王国一幸せにします!
美乃里
あ、ありがとう…
美乃里
分かってると思うけど、私は猫じゃないよ?
セナ
勿論、承知しております!
セナ
美乃里様、大好きです…!
美乃里
…!!
こうして私は何故かイケメンの王子と付き合うことになった
並んで街を歩けば、周りから羨望の眼差しを受けるなんて生まれて初めてだ
友人達も皆、オタクで2次元命の私に彼氏が出来たなんて奇跡だと面白いくらいに驚いてくれた