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母がくれた幸せ

第19話 - 運命の恋人

1,380

2020年05月04日

#ホラー

#短編集

テラーノベル

教授

それではテストをはじめ！

ユウキ

あ、あれ？筆箱がない！？

教授

そこ！このテストで単位が決まるんだから集中するように！

ユウキ

（そんな！絶対鞄に入れたはずなのにどうして！？）

？

どうぞ

ユウキ

えっ？

？

シャーペンと消しゴム、よかったら使ってください

ユウキ

あ、ありがとうございます！

ユウキ

（た、助かった…！）

ユウキ

（それにしてもなんて綺麗な子だろう…）

ユウキ

（経済学部の授業では見たことがないから他の学部の子かな…）

ユウキ

（綺麗なだけじゃなく心までやさしいなんて…）

ユウキ

（名前だけでも知りたいな…）

教授

そこまで！各自テストを提出するように！

ユウキ

あのっ、ペンと消しゴムありがとうございました！

？

いえ

ユウキ

それで…あの…

？

どうかしましたか？

ユウキ

な、なんでもありません！

？

それじゃあ失礼しますね

ユウキ

（俺のバカ…緊張して名前も聞けなかった…）

ユウキ

はぁ…

イサム

おーい、ユウキ！これおまえのじゃね？

ユウキ

あっ、俺の筆箱！？

イサム

やっぱり！変なカエルのキーホルダー付いてたから覚えてたんだ

ユウキ

変って言うな！ご当地ゆるキャラのヨミガエルくんだぞ！

イサム

黄泉の国から蘇ったカエルって！設定がゆるくねーんだよ！

ユウキ

それがいいんだろ！

イサム

そんなことよりおまえ…いじめにでもあってんのか？

ユウキ

は？なんの話？

イサム

この筆箱…ゴミ箱に入ってたんだよ

ユウキ

えっ！？

イサム

俺、食堂でバイトしてるだろ

イサム

それでゴミを片付けるときに見つけたんだ…

イサム

間違えて捨てるなんてありえねーだろうし…

ユウキ

マジかよ…俺、誰かに恨まれてんのか！？

ユウキ

いや、全然思い当たることねーな…

イサム

そうか、ならいいんだ

イサム

きっと拾ったやつが捨てたんだな

ユウキ

ひでーなぁ！落とし物はちゃんと届けろよ！

ユウキ

と、言いたいところだけど…

ユウキ

そのおかげであの子に出会えたんだよな…

イサム

なんの話だ？

ユウキ

それがさ…

ユウキはさっきのできごとを話した

イサム

そんなことがあったのか！

ユウキ

ちょっと運命的だろ？

ユウキ

でも、もう会えないだろうな…

ユウキ

名前も知らないし何学部かもわからないんだ…

イサム

そんなに落ち込むなって！

イサム

それが本当に運命ならまた会えるかもしれねーぞ！

ユウキ

（運命、か…）

数日後──。

ユウキ

こちらハンバーグセットでございます

ユウキ

（ふぅ…やっぱり毎日バイトはきついな…）

ピンポーン♪

ユウキ

はーい！ご注文をお伺い…あっ！

？

あっ

ユウキ

あのっ、お、俺のこと覚えてますか！？

ユウキ

このまえテストでペンと消しゴムを貸してもらった…

？

もちろん覚えていますよ

ユウキ

そ、その節はありがとうございましたっ！

ユウキ

それで、あの…名前っ、教えてくれませんか！？

？

名前？

ユウキ

あっ、お、俺は経済学部1年のユウキっていいます！

シホ

私は文学部2年のシホです

ユウキ

（年上のお姉さんだったのか…どうりで落ち着いた雰囲気だ！）

ユウキ

教えてくれてありがとうございます！ご、ご注文は！？

シホ

イチゴタルトと紅茶をください

ユウキ

イチゴタルト！？俺も好きなんです！

シホ

私もケーキの種類の中で一番好きです

ユウキ

気が合いますね！

ユウキ

（好みが合うなんてうれしいなぁ）

ユウキ

（あれ？　シホさんが使ってるストラップって…！）

ユウキ

ヨミガエルくん！！！！

シホ

ああ！好きなんですよ、ヨミガエルくん

ユウキ

お、俺もです！

シホ

えっ、本当？

ユウキ

ちょっと不気味なところがいいんですよね！

シホ

そうそう！友達には変って言われるんだけど

ユウキ

ははっ、それも同じです！

ユウキ

（こんなに気が合うなんて…やっぱりこの出会いは運命なんだ…！）

ユウキ

あのっ、今度ごはんでも行きませんか！？

シホ

えっ…

ユウキ

えっと、こ、このまえのお礼もしたいし…

シホ

いいですよ！

ユウキ

あ、ありがとうございます！やったぁ！

俺とシホさんは驚くくらい気が合った

食事をきっかけに何度もデートを重ねるようになり

俺は彼女のことが大好きになっていった

ユウキ

（今日こそ告白するぞ…）

ユウキ

シ、シホさん！

ユウキ

お、俺と…付き合ってください！

シホ

はい、もちろん

ユウキ

えっ…ほ、本当！？

シホ

私もユウキくんのことが大好きです

ユウキ

やったぁ！俺、めちゃくちゃうれしいよ！

ユウキ

あのときの出会いを運命かもって思ってたから…

シホ

それ…私もだよ！

ユウキ

本当？それじゃあ俺たちは運命の恋人だね！

シホ

うんっ！

食堂にて──

ユウキ

は～俺マジで幸せだぜ！

イサム

まさかユウキが彼女持ちになるとはな

イサム

しかも相手は美人のお嬢様！うまくやりやがって！

ユウキ

お嬢様ってのは後で知ったんだよ

ユウキ

でも別にそんなのは関係ない

ユウキ

俺はシホ自身が好きなんだからな！

イサム

はいはい、ごちそうさま！

イサム

しかしそのシホって子、授業で見当たらないんだよなー

ユウキ

ひとつ年上の先輩だしな

イサム

早く実物を見てみたいぜ！

ユウキ

今度ダブルデートでもするか？

イサム

俺が相手いないっつーの！

ユウキ

あははっ…って…あれ？

イサム

どうした？

ユウキ

な、なんか腹が痛くなってきた…

イサム

えっ、大丈夫か？

ユウキ

なにかにあたったかな…

ユウキ

俺、帰るわ…

イサム

おう、気を付けてな！

シホ

はい、おかゆ作ったよ

ユウキ

ありがとう…看病してもらっちゃってごめんね

シホ

私が心配なんだから気にしないで

ユウキ

おかゆおいしいよ

シホ

よかった！

ユウキ

なんかこうしてるとさ…一緒に暮らしてるみたいだ

シホ

やだ、ユウキくんったら！

ユウキ

俺…いつかシホと結婚したいなぁ…

シホ

私も…そう思ってるよ

ユウキ

えっ、本当？

シホ

だってユウキくんは運命の恋人なんだもん！

ユウキ

うれしいよ…そうだ！お腹がよくなったらさ

ユウキ

今度ダブルデートしないか？

ユウキ

相手は俺の友達でイサムってやつ

ユウキ

彼女いないから友達を連れてきてくれるとありがたいんだけど…

シホ

イサムくんって…文学部の子だよね？

ユウキ

そうそう、知ってるの？

シホ

…彼に関わるのはやめておいたほうがいいと思う

ユウキ

えっ、なんで？

シホ

あの子、ユウキのこと嫌ってるよ

シホ

友達に悪口を言っているのを聞いたの…

ユウキ

そ、そんな…嘘だろ…

ユウキ

（そういえば筆箱を見つけたのはイサムだった…）

ユウキ

（そもそもあいつが隠していたのだとしたら…？）

イサム

なぁ、おまえシホって子とまだ付き合ってるのか…？

ユウキ

ああ、なんで？

イサム

こんなこと言いたくないんだけど…

イサム

あの子には気を付けたほうがいいぞ

ユウキ

は？何言ってんだよ？

イサム

その…変な噂聞いたから…

ユウキ

おまえもしかして…

ユウキ

適当なこと言って俺とシホを別れさせようとしてるのか！？

イサム

ち、違うよ！俺はただ…

ユウキ

もういい、おまえのことは信じられねえ！

ユウキ

（やっぱりシホの言うとおりだった…）

ユウキ

（イサムとは絶交だ…！）

その数日後、イサムが事故死した…。

ユウキ

そんな…イサム…どうして…

ユウキ

あれが最後だって知ってたらあんなこと…

シホ

自分を責めないでユウキくん…

ユウキ

俺は何もかも失ってしまった…

シホ

何もかもって…どういうこと？

ユウキ

実は…

俺は誰にも話していない秘密をシホに伝えた

父親がリストラされ学費が払えず

大学を辞めなければいけないということを…

シホ

だから毎日バイトをしていたのね…

ユウキ

うん、でももう限界なんだ…

ユウキ

残念だけど大学は辞めて働くことにする…

シホ

…私がお父さんに頼んでお金を借りてあげる！

ユウキ

ええっ！？そ、そんなのダメだよ！

シホ

大丈夫、うちの父は大会社の社長なの

シホ

この大学の学費くらいなんでもないわ

ユウキ

でもお金を借りるなんていくらなんでも…

シホ

もちろんそれには信用が必要だわ。だから…

シホ

私と婚約して！

ユウキ

えっ！？

シホ

私の結婚相手ならお金を貸す信用にあたいする

シホ

父も文句はないはずだわ

ユウキ

シホと婚約だなんて俺にとっては願ったり叶ったりだよ

シホ

じゃあ決まりね

シホ

週末、父に挨拶をしに行きましょう

ユウキ

本当にありがとう…君はやっぱり運命の恋人だ…！

シホの父

君がユウキくんか…話はシホから聞いたよ

シホの父

その学費、ぜひとも私が払おうじゃないか

ユウキ

あ、ありがとうございます！

シホの父

なーに、娘の恋人が苦労をしているのは見過ごせない

シホの父

ところで…君はシホと婚約してくれるそうだね？

ユウキ

は、はいっ！こんな形でお願いするのは図々しいことと思っていますが…

ユウキ

娘さんと婚約させてくださいっ！

シホの父

はっは…もちろんだよ

ユウキ

ほ、本当ですか！？

ユウキ

ありがとうございます！お金も必ずお返しします！

シホの父

金など返さなくてもいい

シホの父

こんな娘と婚約してくれるなら安いもんだよ

ユウキ

えっ…こんな娘…？

シホ

…………

シホの父

ユウキくん、今日は泊まって行きなさい

ユウキ

は、はい…

シホ

ごめんなさいね、狭い部屋しか空いていなくて…

ユウキ

ううん、十分だよ！

ユウキ

それよりも婚約を許してもらえてよかった

シホ

私もうれしいわ

シホ

今日はゆっくり休んでね…

ガシャッ、ガシャンッ！

ユウキ

ん…？なんの音だ…？

ユウキ

手、手足が鎖でつながれてる！？

シホ

おはよう、ユウキ

ユウキ

シホ！な、なんだよこれ！？

シホ

ふふっ、あなたは今日からここで暮らすの

シホ

だって私たち婚約したんですもの

ユウキ

なっ、何を言っているんだ！？

ユウキ

だ、誰かー！助けてください！

シホの父

ユウキくん…

ユウキ

お父さん！助けてください！シホがおかしく…

シホの父

すまない…うちの娘は病気なんだ…

ユウキ

えっ…？

シホの父

気に入った男を手に入れるためならなんでもしてしまうストーカーだ…

シホの父

これまで何十人もの男をこうして連れ込んでいる

シホの父

飽きるまで愛して…

シホの父

廃人同然にして、捨てているんだ…

ユウキ

そんな…

ユウキ

というか、何十人も…！？

シホの父

全身整形をして若く装っているがシホの年齢は40過ぎだ…

ユウキ

う、嘘だろ！？

シホ

ふふっ…じゅうぶん大学生に見えたでしょう？

ユウキ

イサムが言っていたのはこういうことだったのか…

ユウキ

…！

ユウキ

もしかしてイサムは！？

シホ

あの男、私の正体に気づいちゃったんだよね～

シホ

だからパパに頼んで消してもらったの

シホの父

ユウキくん、すまない！

シホの父

私は…私は娘が怖いんだ…！

ユウキ

あっ、お父さん！

シホ

ふふっ…好きな人を手に入れるためになんでもすることがどうして怖いのかしら…

ユウキ

も、もしかして俺たちの出会いは全部！？

シホ

そう…あなたの好みは探偵を使ってすべて把握した

シホ

筆箱を捨てたのも私

シホ

食堂のごはんに毒を入れたのも…

シホ

運命的な出会いに、お部屋で恋人から看病されるシチュエーション

シホ

全部ユウキくん好みだったでしょう？

ユウキ

そ、そんな…運命だと思ってたのに…

シホ

あはははっ！こんな都合のいい運命あるわけないじゃない！

ユウキ

だ、誰か…誰か助けて！！！！

シホ

うるさいお口…ふさがなきゃ…

ユウキ

むっ…むぐっ…

シホ

私に反抗したらいくらユウキくんでも許さないからね、わかった？

ユウキ

うっ…ううっ…

シホ

ふふっ、いい子ね…

シホ

私たちは運命の恋人…ずーっと一緒だよ？

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ふと気付いたしほが40台とか言うならしほの父はそれなりの年齢つまりおじいさんぽくなってるはずですよねそこに突っ込まない主人公ということはお父さんもそれなりに若く見えるように手術とかしてる？させられてる？

恋愛の話かと思ってたらホラーだった怖いわ

サイコパス…(º∀º)🔥🔥

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