テラーノベル
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冒険者ギルドの隣にひっそりと佇む食事処〈文目の詩〉。
ここには少し、変わったサービスがある。
目利きのスタッフによる、クエストの斡旋。
スタッフの鑑定眼が確かなこともあって、それを目当てに店に通う者も少なくない。
スタッフ
店に入ると、赤いメイド服の少女の姿があった。
小柄で芯の強そうな、ツインテールがよく似合う、この店のスタッフ。
少し肌が白く、耳の先が尖っているのは、エルフの血が入っているのだろう。
ゴブリンの巣の探索で命運を共にした相手。
忘れられるはずもない。
スタッフ
微かに嬉しそうに、少女は言う。
スタッフ
スタッフ
そして、名前を問われる。
クエストを受注する時に、スクロールに書いた気もするが……。
名前の韻の踏み方を知りたい、ということだろうか?
音の響きが大切な意味を持つ種族も、世の中にはいるらしい。
まぁ、ここで名乗らない理由はない。
スタッフ
スタッフ
少女は反芻し、そして
スタッフ
スタッフ
自身の名を告げた。
互いの名を知る。それは、他人ではない関係になることを意味する。
危険と隣り合わせの生き方をしている冒険者にとって、それは少し、特別なことだった。
ルティ
ルティ
前回もそうだったが、この少女、ルティはなかなかに押しが強い。
話を聞かないという選択肢は、おそらく存在しないだろう。
ルティ
ルティ
そして、1枚のクエストスクロールが示される。
ルティ
ルティ
ルティ
野盗。つまりそれは、ヒトを相手にするクエストということになる。
少し厄介な気が、しないでもないが……。
ルティ
ルティ
ルティ
ルティの中で、クエスト受注は決定事項になっているらしい。
いつもならもう少し考えるところだが
ルティが勧めるクエストなら乗せられてみるのも面白いと、根拠もなく、そう思えた。
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一昼夜のクエストであっても、用意するものはあまり変わらない。
水と食料を少し。
身体が資本であるため、あまり元手がかからないのが冒険者という職業だった。
ルティ
ルティ
尋ねられ、少し戸惑う。
どういうわけか今回のクエストには、ルティが同行していた。
南の方に用事があるということだが
メイド服の彼女と一緒にいると、何故か妙に気を使う。
外でもその服装は、どうなのだろう?
まぁあまり、気にしないでおく。
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荒れた街道を、キャラバンが進む。
キャラバンの構成は、行商人7人と一頭建ての馬車が5台という、そこそこのもの。
荷物は主に、魔法関係の交易品。
満載というわけではないため、荷台の片隅に乗せてもらっている。
ルティ
言いかけて、ルティは動きを止める。
その視線は馬車の後方、開けた砂原に向けられている
ルティ
ルティ
キャラバンの後方、それと前方から、接近する集団の姿があった。
ルティ
ルティ
おそらく、そうだろう。
武器を掲げ、目的もなく荒野を走り回る文化があるのなら話は別だが
そのようなものがあるはずがない。
ルティ
ルティ
これがクエストである以上、対応するしかない。
ルティ
ルティ
ルティ
ルティを幌の中に潜ませ、砂の上に降り立つ。
キャラバンは足を止めていた。
野盗はキャラバンの周囲に円を描くように、包囲を形成しつつあった。
状況が固定されると、面倒なことになる。
切り崩すために、先手を取る。
CAST A SPELL
選んだのは、魔法だった。
護衛がいることを知らしめるために、最も派手なものを選んだ。
放つ紫電が近くにいた野盗を穿ち、吹き飛ばす。
この魔法は、雷撃を放つもの。
空を裂く光は派手だが、威力は大したことはない。
直撃しても、大人が失神する程度。
牽制のために雷撃を放つ護衛をどの程度の脅威と見るかは、相手次第なところではある。
CAST A SPELL
二人目を穿つ
野盗の総数は16程度。
その内の2人が早々に戦闘不能になる状況は、看過できないもののはず。
読みがあたり、音が響いた。
笛の音だろう。
その音に反応して、野盗たちが動きを見せる。
包囲を解き、撤退していく。
雷撃を受けた者を回収し、振り返ることなく走り去るその手際は、見事なものだった
ルティ
ルティ
状況を察して、ルティが幌の中から顔を出す。
怯えているかと思ったが、そうでもないらしい。
ルティ
追い払ったという表現は、正しくはない。
野盗は撤退していった。
そう。敗走ではなく、計画的な撤退。
それが意味するのは、次の襲撃が有り得るということ。
どうやらこのクエストは、一筋縄ではいかないらしい。
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気が抜けないまま、夜になった。
キャラバンは足を止め、休息に入った。
馬車を使う以上、馬に無理はさせられない。
危険ではあるが、休息は必要になる。
ルティ
焚き火の番をしていると、ルティが隣に腰を下ろす。
返すのは、曖昧な返答。
一晩程度なら、休みなしでもなんとかなる。
ルティ
味気のない相槌が返され、会話が途絶える。
ルティ
僅かに間をおいて、ぽつりと、ルティは告げる。
ルティ
ルティ
ルティ
その声には元気がなく、僅かに影が感じられた。
ルティ
ルティ
ルティ
そこで、言葉が途切れる。
疲れていたのだろう。
ひとの肩を枕にして、ルティは眠っていた。
夜は魔物が活発に動き回る。
危険であるからこそ、野盗が動く可能性は低い。
来るとすれば、明け方。
今度は策を練ってくるだろう。
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