ピンポーン♪
次の日の朝早くにインターホンが鳴る。
私はいつもギリギリだからお母さんが出る。
だれだろ?
インターホン越しにしゃべっているお母さんはなにやら楽しそう。
こんな朝っぱらからよくあんなにしゃべれるな
お母さん
咲羅
びっくりしすぎて飲みかけのりんごジュースを吹きそうになった。
「こっちに帰ってきてたのね~」
なんて言いながら食器を洗うお母さん。
…あ、そうだ、昨日送ってくれたんだった
なんかつい昨日のことなのにすっごく昔にあったような感覚
そんだけ忘れたいのかも
お母さん
咲羅
今度は口に詰め込んだパンを吐き出しそうになる。
お母さん
え、うそ
なんかあんなことあったから恥ずかしい
そんなこと考えている暇もなくパパッと髪をゴムで1つにまとめて軽くメイクをする。
鏡の前で1回だけ笑ってみて気合を入れて外へ出た。
雅紀
咲羅
朝から元気な雅紀は昨日のことなんてなかったかのよう。
久しぶりの家はやっぱりよかったとか
お母さんの料理はやっぱりおいしいだとか
他愛もない会話をしているうちに会社につく。
久しぶりだな、こうやって出勤するのも
会社に勤め始めて3ヶ月くらいで一人暮らしになっちゃったもんな
会社につくとニノがもう来ていて
席に座るなり寄って来た。
和也
咲羅
そう、そんなんじゃない
だけど、久しぶりに一緒に通勤できたことが
些細なことだけどすごくうれしかった。
雅紀
突然のことであわあわしているある日のお昼休み。
いつもは雅紀は自転車で来ているから一緒に帰ってないけど今日は話があるからって。
…話ってなに?
変な期待が私の中で膨らむ。
…だめだ、前だってこれでショック受けたのに
だけど話があるって言われたらそう考えてしまう。
午後の仕事中はこのことで頭がいっぱいだった。
ニノになにを言われても
上司にぼーっとしすぎって注意されても
どうしても頭から離れなくて身が入らない。
雅紀
咲羅
気づいたらもう帰る時間
コートを着てマフラーまで巻いている雅紀が私の顔を覗き込んだ。
雅紀
咲羅
ドキドキ胸がうるさいけど平静を装って
部屋の端にかけてあったコートを着て
ポケットに手を突っ込んで口笛を吹いてデスクに腰掛けている雅紀の元へ行く。
咲羅
雅紀
下に降りていつもは行かない自転車置場に行く。
雅紀の自転車は乗りやすいからってママチャリで
だけどなぜか雅紀がのるとかっこよく見えるママチャリ
雅紀
咲羅
自転車にまたがると後ろに乗れと指示してきた。
いや、私重いし
ていうかよくないでしょ2人乗りなんて
雅紀
咲羅
雅紀だったら笑いながらやりかねない。
素直に後ろに跨って二台の鉄の部分を握りしめる。
雅紀
そう言って私の手をグッと自分の腰に回す。
…密着して恥ずかしい
どんどん心拍数が上がる。
聞こえてないかな?
バレてないかな?
なんて考えながらこの幸せを噛み締めた。
寒くて空気が冷たいから雅紀の体温が気持ちいい
いつまでもこうしていたい
そう思ったけどそうは行かなくて
雅紀
と、雅紀は自転車を止めた
着いた場所は駅。
…なんで駅
雅紀
咲羅
雅紀
咲羅
今しなくてもいいような
いつでもできるようなそんな話で会話を繋げる。
咲羅
雅紀
少し下を向いて頭を掻く
なんか耳赤くなってない?
…寒いから?
雅紀
咲羅
間隔をあけながら話す。
ドキドキが加速して行って爆発しそう
なに、早く言ってよ
どんどん期待しちゃう
好きだって言葉を期待しちゃう
咲羅
これ以上黙ってたら自分の胸の音が聞こえちゃいそうで、思わず急かしてしまった。
そしたらパッて顔を上げて真剣な目で見つめられて
雅紀
咲羅
時が止まる
周りの景色も止まる
思考も止まる
言葉が出ない
何か話したら崩れてしまいそうな、そんな気がして
雅紀
ああ、そんなこと言ってたな
ある日の昼休みの光景が蘇る。
咲羅
がんばれ、自分
精一杯の笑顔を向ける。
涙が、出そう…
咲羅
もうこれ以上いれないって
もう涙が溢れてきてたから
咲羅
逃げるようにして駅の階段を登って行った。
階段を駆け足で登って行ったけど減速する。
我慢してるのにどうしても涙が出てくる。
こんなんじゃ電車にのれない
人に見られたくなくて、今登って来た階段とは真逆のところにある階段で駅から出た。
さっきとは違って駅の裏って感じで
薄暗くてほとんど人は通っていない
遠くの方で公園の街灯が見える。
そこへ吸い寄せられるようにして歩いた。
公園には誰もいなくて
街灯のすぐそばにあったベンチに腰掛けた。
もう冬の寒さで
その突き刺さるような寒さがわたしにひとりぼっちだって言ってるみたいで
咲羅
いろんなことがこみ上げて来てさっきよりも歯止めがきかなくなって涙が溢れ出る。
なんで、
なんで私は雅紀の彼女になれないんだろうって
なんで私はただの幼馴染でしかないんだろうって
私はずっと雅紀が好きなのに
大好きなのに
なんとなくこのままずっと一緒にいられると思ってた
ずっと隣にいてくれるって思ってた
考えれば考えるほど悲しくて涙が溢れてくる。
気づいたら子供みたいに泣きじゃくっていた。
和也
聞き覚えのある声にハッとして顔をあげると
コンビニの袋をもってマフラーに顔を埋めているにのが立っていた。
和也
咲羅
和也
咲羅
自分でも呆れるくらいの下手な嘘。
なんで私っていつもこういうの下手なの
和也
ドスンと私の隣に腰掛ける。
体が触れて熱が心地よく伝わってくる。
咲羅
急に人に優しくされると人間てほんともろいんだなって思った。
隠そう隠そうとして止めてた涙が何かが切れたみたいにして流れてくる。
詰まって詰まって
詰まりながら雅紀のことを話して。
その間ニノはずっとそっかそっか、って優しく背中をさすってくれて
優しくゆっくり聞いてくれて
すごく安心できた。
咲羅
和也
咲羅
和也
いつまでもグスングスンてブルーな私に暖かいムチ。
私、ニノのこういうとこ、好きだ
器用なのか不器用なのか、遠回しな優しさ
咲羅
和也
和也
咲羅
自然と笑ってた。
ニノと言い合いしていると自然と笑えた。
ありがとうニノ、私がんばるね
憎たらしいニノに心の中で呟いた。
コメント
3件
コメントありがとうございます😊🤗🥳
続きが気になります。 咲羅ガンバレ‼︎
こうなってくると、ニノさんも気になってきますね!