菜月
あ、もしもし!
目黒くんのお母さん
菜月ちゃん!お久しぶり?元気?
菜月
あ、はい!
目黒くん、私が入院してること親御さんに伝えてるかな?
目黒くんのお母さん
よかった…意識戻ったんだね
目黒くんのお母さん
犯人は捕まってるのよね?
菜月
はい…あの…お母さん…
目黒くんのお母さん
ん?
菜月
蓮さんとは別れました
目黒くんのお母さん
…え?冗談よね?
菜月
本当です…
目黒くんのお母さん
あんなに仲良しだったじゃない
菜月
…
目黒くんのお母さん
菜月ちゃんから振ったの?ちゃんと話し合った?
菜月
いえ…でも蓮さんの意思なので
目黒くんのお母さん
蓮から別れを切り出したってこと?
菜月
はい…でも説得とかしないでくださいね…
目黒くんのお母さん
えっ…あ…ん…えっと…
菜月
…
ずっと幼少期から仲良かった2人がいきなりこうなったらそりゃ心配だよな…
目黒くんのお母さん
お母さんね…
菜月
はい…
目黒くんのお母さん
結婚式のドレス…菜月ちゃんに似合うの選んでたの
菜月
え!?
目黒くんのお母さん
買ったわけじゃないんだけど…そろそろかなって…
目黒くんのお母さん
でもよく考えたら…菜月ちゃんまだ21だしね…仕事バリバリ頑張りたいんだろうし…
菜月
ご期待に添えず申し訳ございません…
目黒くんのお母さん
いや…ただショックで…
菜月
はい…
目黒くんのお母さん
そっか…わかった…
菜月
はい……
目黒くんのお母さん
菜月ちゃんが嫌じゃなかったら私達だけでも仲良くしてくれない?
菜月
もちろんです!
目黒くんのお母さん
ありがとう…じゃ。
目黒くんのお母さん
お見舞い行けなくてごめんね
目黒くんのお母さん
お母さんも仕事忙しいから…
菜月
はい。分かってます…
目黒くんのお母さん
また新しい彼氏できたら教えてね……
お母さんの振り絞ったような声が心にチクチクと刺さる感覚になった
菜月
はい…
菜月
はぁ…
渡辺翔太
菜月さん
菜月
あ、渡辺さん!!
渡辺翔太
元気そうだね。目黒くんから聞いた
渡辺翔太
別れたって事も
菜月
…あ…
渡辺翔太
まあ内容については聞かないから
菜月
…
渡辺翔太
何食べる?パン派?ご飯派?
菜月
…ご飯派です
渡辺翔太
はい、おにぎり。
菜月
ありがとうございます…
渡辺翔太
あ、お兄さんにも連絡した?
菜月
いやまだ…
渡辺翔太
連絡しときなよ。
菜月
はい…
渡辺翔太
……仕事いつ来れそう?
菜月
え?
渡辺翔太
いきなりごめん。フロントがうるさいからさ。
菜月
やっぱり邪魔ですよね…
渡辺翔太
逆。早く会いたがってる。
菜月
……
渡辺翔太
え?
渡辺翔太
…どうしたの?
渡辺翔太
……
渡辺翔太
……
特に何かをする訳でもなく表情だけはオロオロしている渡辺さん…
渡辺翔太
………過去の男なんて忘れろよ
菜月
え?
渡辺翔太
…
菜月
えっと…
渡辺翔太
俺さ、菜月さんのこと
菜月
なんでそんなこと言われなくちゃいけないんですか!?
渡辺翔太
…
菜月
赤の他人の貴方に…目黒くんの事とやかく言われたくない…
渡辺翔太
赤の他人……?
菜月
私の事心配してくれてるのは伝わってます…
渡辺翔太
……
菜月
前から思ってたんですけど渡辺さんってなんでいつも上からなんですか?
渡辺翔太
え?俺が上から?
菜月
私の事分かったような言い方で余裕な態度で…私みたいな感情的な人間を上から見て蔑んでるとか?
渡辺翔太
そう熱くなるなって
菜月
それですよ!
渡辺翔太
…
菜月
あなたは人に依存した事ないからそうやって余裕でいられるんですよ
渡辺翔太
……
菜月
目黒くんと付き合うのが康二への気持ちを忘れるためってふざけないで…
渡辺翔太
…
菜月
そんな訳ないでしょ!
菜月
私が貴方にいつ協力してって言いました?助けてっていつ言いました?
渡辺翔太
…ずっと………ずっと…そう思ってたの?
渡辺翔太
俺の事…………
菜月
でも………友達の時は嬉しかった
渡辺翔太
え?
菜月
一人でいいんじゃない?ってLINEしてくれたこと…
渡辺翔太
……
菜月
ふっと心が楽になりました…
渡辺翔太
…
菜月
……私…友達ができないから作れなかったんじゃないんです。いやふっかは例外だけど
渡辺翔太
…
菜月
あの時私が友達いらなかったのは目黒くんがいたからなんです
渡辺翔太
…
菜月
目黒くんの愛情で十分だったからいらなかった。
渡辺翔太
…
菜月
目黒くんと行きたい場所に行けて
幸せだった…
渡辺翔太
……
菜月
もう私には誰もいない…なのに渡辺さんみたいに余計な口出しする邪魔者だけは…
菜月
えっ!?
渡辺翔太
好きだから。
菜月
え?
渡辺翔太
好きだから、、ほっとけないから、、だから口出ししてしまう。。
渡辺翔太
俺だって余裕がある訳じゃない。。
渡辺翔太
ずっと目黒くんに嫉妬してた
入る隙がないし…
だけど目黒くんから一方的に別れを告げたって聞いて失望した
菜月
……待ってください…渡辺さんはただの職場の…
渡辺翔太
俺にとって菜月さんは一人の特別な女性…
菜月
………え?
渡辺翔太
誰もいないわけじゃない。俺が…菜月さんのそばに…ずっといる…
菜月
……離してください…
白いシャツから覗かせる明らかに病的に細い腕も
男性ってだけに
やっぱりそれなりに強い力な訳あって
なかなか振りほどく事が出来ない
菜月
強っ…あと…ほっそ…
渡辺翔太
俺の事…男として見てほしい。
菜月
……
渡辺翔太
俺と…付き合ってほしい…
菜月
……え……?あ、あれだ……あの…2週間くらい意識戻さなかったら多分感動的にしてくれてるとか…?ほら…どっきりみたいな?
渡辺翔太
はぁ…ふざけんな…
菜月
ふざけてんのは渡辺さんじゃ…
次の瞬間
唇に生温かい感触が走った
気づいた時には背中に片手を回され
もう片方は頭を包まれた…
菜月
……
渡辺翔太
……
渡辺翔太
キスしちゃった…
渡辺翔太
やっぱ恋愛って遠慮したらダメだよな…
渡辺翔太
ごめん…意思を確認する前にしちゃって。だけど我慢したからこれでも
菜月
…
渡辺翔太
俺せっかちだから返事早めにお願いします。。
渡辺翔太
じゃ…
渡辺さんがぎこちない去り方をしたあと
唇を手で粗暴に拭いて
目を見開く
菜月
私…今…何された…?
数秒ぼーっとして渡辺さんに問い詰めに行こうと病室を出ようとすると
菜月
あ…
佐久間大介
随分と幸せそうだな…菜月…
菜月
あ、たしか…この間お会いしましたよね…?
佐久間大介
所詮その程度の認識か…
佐久間大介
お前今幸せか?
菜月
え…幸せ…?幸せに見えますか…?
佐久間大介
見えるよ。この間とは違う男とキスして
いいよな、男に不自由しない女は…
菜月
何が言いたいんですか?
菜月
ってかなんで私の名前…知ってるんですか?