ウチの学校の校門前には バス停がある。
最寄り駅から 少し距離があるため、
殆どの生徒は そのバス停でバスに乗り、
駅で降りて電車で帰る。
でも歩けない 距離ではないから、
寄り道したい時は 歩いて帰ることも少なくない。
まあ今日は寄り道する 予定はないけど。
結木凛
じゃあまた明日〜
友達
凛またね!
黒尾鉄朗
やっくん仲良くネ
夜久衛輔
分かってるっつの!
バスを待つ部活仲間達と分かれて 2人肩を並べて帰る。
空はすっかり暗くなり、 星が散らばっていた。
夜久はなんで 帰りに誘ったんだろうとか、
何を話そうとか、 頭がグルグルと回る。
すると私の疑問に答えるように 夜久が口を開いた。
夜久衛輔
特に理由は無いんだけどさ
夜久衛輔
何となく一緒に帰りたいなと思ったんだ
夜久衛輔
高校卒業したら会える事も減るだろうし
夜久の声は どこか寂しげだった。
私も夜久も 他の友人でさえも、
敢えて言葉にしなかったこと。
卒業したら ただのクラスメイトの私達は、
きっと 会えなくなってしまう。
会わなくなってしまう。
知らないふりをしていても 頭では分かっていて、
ふと思い出しては 見て見ぬふりをする。
それこそ恋人同士なら、 また違ったのだろうか。
結木凛
夜久と会えなくなるのは嫌だなぁ
夜久衛輔
!
自分の言葉にハッと我に返る。
様子を窺うように 隣を見ると、
街頭に照らされた夜久の頬は ほんのり赤く染っていた。
結木凛
( 何言ってるんだ私は… )
夜久と付き合いたいとか、 恋人になりたいとか、
本気で思ってたわけじゃない。
ただ好きだなぁって、 そう思ってただけだ。
けれど改めて私と 正反対の女の子が好みだと
知ってしまうと、
やっぱり悲しく辛いものだ。
結木凛
…明日公民の小テストだね
夜久衛輔
だな〜、帰ったら復習しねぇと
私が話題を変えると
合わせるようにいつもの調子に 戻る夜久を見て、
胸が苦しくなった。