主
主
主
主
主
あの時
ヒョンが怒って出て行った時
止めていれば、追いかけていれば、
こんな事には、、、
その日からヒョンは、僕の前から忽然と姿を消した
きっかけはほんの些細なことだった
最近はそういう小さなことで言い合いになることが多くて、 今回のもその一つだった。
すぐ怒るヒョンに、こっちも少しイラついてしまって、
厭味ったらしく文句を言ったらヒョンは家を飛び出していってしまった。
そしてそれを止めなかったことを、直ぐに後悔することになったのだが。
ジョングク
時刻は午後9時
ヒョンが出てってから1時間半が過ぎようとしていた。
ジョングク
一人でぼーっとして、頭が冷静になる。
ジョングク
ぶつくさ言いながら電話をかけてみたが、スマホはテーブルの上に置き去りにされていて連絡のしようがない。
ジョングク
そう考えると少し罪悪感が湧いてきて、外に出て、 ヒョンを探すことにした。
きっと公園かどこかにいるだろう、と楽観的に考えていた。
でも、町のどこを探しても、ヒョンは居なかった。
ヒョンの言った通り、
僕はどこまでも自分勝手だったんだ。
ジョングク
ジョングク
ジョングク
ジョングク
町中を走り回って、公園も、駅前も、隅々まで探した。
なのに、
ジョングク
ジョングク
町を何回も周って、それでも見つけることはできなかった。
疲れ果てたのち、交番に向かっても ただの家出だと一蹴され、まともに取り合ってはくれず、
ジョングク
ジョングク
ジョングク
いなくなる直前にした喧嘩のせいで、
本当の家出の可能性も否定しきれなくて、2日、3日と、時間が流れてゆく。
大学からの帰り道、一人とぼとぼと帰路に就く。
ヒョンがいなくなってから1週間も経ってしまった。
何も進展はなく、毎日交番に通ったが、先程ついに門前払いされた。
大学もバイトも、もしかしたらヒョンに会えるかもという 淡い期待をして行っているだけで、本当は家を出る気力なんて無に等しい。
ここ数年、ヒョンのいる毎日が当たり前だったのに、
ジョングク
ジョングク
ジョングク
安否も不明のまま、捜す術も持ち合わせておらず、ただ帰りを待ちわびるしかなかった。
あれからどれだけ経っただろう。
いつの間にか大学にも行かなくなって、無気力のまま日々を過ごした。
何か月も経ったような気がするけど、数日しか経ってないような気もする。
もう全部、どうでもいい
ヒョンのいない毎日に、価値なんて無い。
心にも体にも、限界が近かった。
ある夜、気付けば外を歩いていた。
ジョングク
ジョングク
取り敢えず長い階段を上ってみて、ここがどこなのか漸く理解する。
ジョングク
満天の星空と、この町全体を一望できる、ヒョンの、お気に入りのスポット。
少し高台にあって、ちょっとした遊具や広場がある、町外れの静かな場所だ。
同棲したての時によく来ていたはずで、すごく懐かしい。
ジョングク
ひどく久しぶりで、あの頃を彷彿とさせる。
ジョングク
一緒にいるだけで楽しくて、二人でなら何でもできる気がしていて。
ジョングク
この人とずっと一緒にいたいと
守りたいと
この夜空に願ったんだ。
ジョングク
ジョングク
ジョングク
ジョングク
ジョングク
この場所すら忘れてたってのに…?)
かつての自分ならば、見つけるまで何としてでも死ぬ気で捜しただろう。追い払われたって警察にも行き続けたはずだ。
事故か事件の可能性だってあるのだから。
ジョングク
ジョングク
ゴシゴシと涙を拭っていると、がさっ、と背後から物音がする。
猫
ジョングク
茂みから顔を覗かせたのは一匹の猫だった。
ジョングク
ジョングク
猫
首輪のプレートには「mochi」と書いてある。
ジョングク
猫
ゴロンと足元に転がっておなかを見せてくる。
ジョングク
しゃがんで撫でてやると、ごろごろ喉を鳴らした。
その可愛い様子に自然と破顔する。
ジョングク
ジョングク
???
???
急に、大声が響く。
声がしたほうを見やると一つの人影があった。
無意識に、心臓が跳ねる。
街灯の逆光で顔は見えないが、僕の耳は確かに、
ずっと聞きたかった音を拾った。