季節は巡って
何度目かの
7月
いつの間にか後輩も増えて
環境も変わった
でも
僕の気持ちは
あの頃の7月のままだ…
そんなある日…
海月の水槽をじっと見つめる 女性がいた
…あ
黒いパーカーは着ていない
フードも被っていない
白いロングワンピースに ストローハット
まるで別人のような服装
だけど
透明で掴めないような
不思議な雰囲気…
…あのっ
…お久しぶりですね
恥ずかしそうに笑う顔
明るい茶色の髪
…変わっていない
ずっとずっと
会いたかったんだ…
急に来なくなったので…
心配しました
心配しました
…
水槽に映った
困ったように微笑む彼女…
そ、その…
ほら、あの海月!
新入りなんです!
新入りなんです!
ブルージェリーフィッシュ…
大人しい海月で…
大人しい海月で…
あぁ…これは
また、困らせてしまったかな
…って
そんな話し…
聞いてないですよね
聞いてないですよね
ふふっ
いいえ…
聞きたいです
聞きたいです
彼女は手で顔を隠して 笑い声を漏らした
…ぁ
その瞬間に見えた
左手の薬指に光る…
小さなダイヤモンド
その意味を…僕は知っている
それは
…婚約指輪
…はい
…
おめでとうございます
…ありがとうございます
嬉しそうに笑った彼女は
相変わらず綺麗だった
きっと彼女はもう
ここを通る事は無いのだろう
僕の美しい海月は
彼女が選んだ波に
攫われてしまったのだ