倉庫の奥で, 何かが落ちる音がした。 乾いた金属音。 蓮音の足元だった。
蓮音
……っ
短い息が漏れる。 康平が視線を落としたとき, 蓮音はしゃがみ込んでいた。
康平
蓮音?
返事がない。 両膝を抱えるようにして, 背中を丸めている。 肩が わずかに震えていた。
康平
どうした?
今度は,はっきりとした声。 近づこうとした瞬間, 蓮音の指先が床に触れ, 力なく滑った。
蓮音
……立てない
絞り出すような声だった。
康平は迷わず膝をつく。
康平
めまい?
蓮音
違……
否定しようとして, 言葉が続かない。 呼吸が浅い。
康平
蓮音、顔上げて
そっと顎に手を伸ばしたところで, 蓮音の身体がびくりと跳ねた。 その反応に,康平の動きが止まる。
康平
……ごめん
反射的に手を引く。
その「ごめん」が、 ようやく”何か”に触れた合図だった。
康平
触られるの、
嫌だったか?
嫌だったか?
静かな声。 責める響きはない。
蓮音は、首を横に振る。
でも,否定としては弱すぎた。
蓮音
……違います
康平
じゃあ、なにが
問いかけの形をしているが, もう軽くはない。
雨音が倉庫を叩く。 外界と完全に 切り離されたみたいに。






