相原 澪
相原 澪
山崎 孝太
相原 澪
相原 澪
相原 澪
山崎 孝太
相原 澪
相原 澪
山崎 孝太
相原 澪
相原 澪
相原 澪
山崎 孝太
山崎 孝太
相原 澪
相原 澪
相原 澪
山崎 孝太
相原 澪
山崎 孝太
相原 澪
よし本屋さん行こう。
善は急げ。
澪さんとのラインを終えると俺は自己最速記録で着替えと支度を済ませると部室を飛び出した。
途中で先輩と鉢合わせたけど適当に誤魔化して、駅前にある大きな書店に走った。
冷房はあまり効いてない書店で澪さんの姿はすぐに見つけることが出来た。
料理雑誌が並ぶコーナーの前で立ち読みしていた澪さんは俺を見ると微笑んだ。
相原 澪
山崎 孝太
相原 澪
相原 澪
澪さんは開いてるページを見せてくれた。 量も見た目も申し分無い料理が並んでいた。
相原 澪
山崎 孝太
相原 澪
澪さんがページをめくった。前のページと比べると見た目のインパクトは弱いけど家庭的な料理が並んでいた。
相原 澪
相原 澪
弱冷房の微風に乗ったシトラスの香りが鼻先を掠めて余計に言葉は奥に引っ込んだ。
俺が情けなくも言葉に詰まっていると 素敵で爽やかな声が背中を刺した。
溝口 圭佑
すぐ後ろに素敵で爽やかな笑みを浮かべた先輩が立っていた。
俺が思いっ切り顔をしかめると先輩も早々に仮面を剥ぎ取った。(澪さんに看破されたから無駄だと判断したのかもしれない)
溝口 圭佑
山崎 孝太
溝口 圭佑
溝口 圭佑
言葉通り、先輩は1歩前に出て(て言うか俺を押し退けて)蕩けるような笑みを澪さんに見せた。
溝口 圭佑
相原 澪
溝口 圭佑
相原 澪
溝口 圭佑
先輩の言う「先日」は何を指しているのか俺には分からなかった。
俺がそれについて尋ねる前に先輩が更に澪さんとの距離を詰めた。 もう先輩は俺に見向きもしない。
溝口 圭佑
相原 澪
溝口 圭佑
相原 澪
溝口 圭佑
溝口 圭佑
相原 澪
先輩が割り込んだおかげで澪さんの表情は見えない。 ただ声は弾んでいた。
冷房の風が強くなったように感じた。 走った後なのに寒気がする__
その感覚を振り払うように出した声は自分でも嫌になるくらい細かった。
山崎 孝太
こんな言葉しか言えない俺を、先輩はいつもの馬鹿にしたような顔で一瞥した。
相原 澪
我にかえったように雑誌を元の場所に戻す澪さんに先輩は再び向き直った。
溝口 圭佑
相原 澪
先輩はにこやかに会釈すると俺には見向きもせずに颯爽と歩いて行った。
どっちが「自慢の彼氏」になれるかって話。
昨日の先輩の言葉が大音量で響いた。 俺は卵焼きのことも肉まんのことも知らなかった。
いつの間にか足元に視線を固定していた俺の頭に、 世間話をするような調子の澪さんの声が降って来た。
相原 澪
息が詰まるかと思った。 たぶん、詰まった。
山崎 孝太
こんな短い相槌を打つのに酷く間が空いたから。
澪さんが続けて何か言う前に急いで次の言葉を引っ張り出した。
山崎 孝太
相原 澪
澪さんの瞳が一瞬揺れたけど見えなかったフリをして踵を返した。
「面白い」に特別な意味は無い。はず。 俺が貶されたわけじゃない。 はず。
だけど 俺は会話に入れなかったから
今その言葉は聞きたくなかった。
どうして逃げてしまったんだろう。
家に帰って自分の部屋で1人になっても自己嫌悪に陥るだけだった。
___先輩と話してる時の澪さんの弾んだ声が響く。 振り払うようにラインを開く。
送る言葉は思いつかず「しばらくお互い勉強に集中しよう」の文が目に入り結局ラインを閉じた。
また虚無。 残響。
___澪さんに「しばらくお互い勉強に集中しよう」と言われた時 言い様の無い不安を感じた。
それが今日無視出来ないほど肥大して
ベッドに寝転がった俺を押し潰して
二度と起き上がれないような気がした。
母親に「塾に行く時間だ」と一喝されるまで着替えもせずにぼんやりと天井を見つめていた。
塾に向かういつもの交差点は、誰かを探す暇も無くすぐに信号が変わった。
__席につくとすぐに始業のチャイムが鳴り教師が入って来た。
いつもは教科書の何ページを開けと言うのに今日は しまえ と言うので妙だなと思っていたら
………小テストが始まった…。
勉強に充てようと思っていた時間は天井を見つめて過ごしていたので全く対策していない。
突然頭が良くなるミラクルな奇跡が起きるはずもなく、「半分以下の点数の人は居残り追試」が課せられてしまった。
____ぼんやりと聞こえる、授業終わりの解放感に浸っている生徒達の声を耳にしながら英単語を頭に詰め込む。
俺何やってるんだろう と思った。
教室を出ると8時を過ぎていた。
人気(ひとけ)の無い廊下を進んでいると自習室のドアが開いて男の人が出て来た。
__数時間前に書店で出会った人だけど挨拶する気にはなれなかった。
目があう前に急いで横を通り過ぎたのに その人は俺の横を追随して来た。
溝口 圭佑
山崎 孝太
溝口 圭佑
山崎 孝太
溝口 圭佑
そう言いながらも先輩の口調はどこか楽し気だった。
黙(だんま)りを決め込む俺に構わず先輩は謳うように話し続ける。
溝口 圭佑
溝口 圭佑
先輩が俺の肩を掴んだ。 細身のくせに強い力だった。俺の歩みも止まった。
溝口 圭佑
山崎 孝太
耳から入って来た先輩の言葉は、もう何十回も再生された記憶のビデオをまた最初から再生させた。
俺の肩を掴んだまま先輩が言葉を重ねる。 同時に頭の中でもあの日の先輩の言葉が響く。
リモコンを持っていない俺は 耳から入って来る言葉も頭の中に響く言葉も止めることが出来ない。音量も調節出来ない。
溝口 圭佑
勉強もテニスもパッとしない中学生のお前と
溝口 圭佑
全国大会常連で進学校に通ってる高校生の俺
溝口 圭佑
どっちが「自慢の彼氏」になれるかって話
限界だった。
山崎 孝太
俯いたまま発した声は無様に掠れていたけど、もう止められなかった。
山崎 孝太
山崎 孝太
山崎 孝太
山崎 孝太
肩を掴んだままの先輩の手が一瞬震えた。 顔を上げなくても先輩の顔から笑みが消えたのが分かった。
溝口 圭佑
溝口 圭佑
人気(ひとけ)の無い廊下で温度の低い先輩の声はよく響いた。
目に溜まった水滴が零れないように、震える息を吸い込んだ。
山崎 孝太
山崎 孝太
山崎 孝太
肩を掴んでいる先輩の手を振り払うと廊下を駆け出した。
限界だった。
祈るようにスマホを開いた。
公式アカウントのラインとかフォローしてるユーザーの新しい投稿とか、なんでもいいから気を紛らせたい。
だけど通知は何もなかった。 あの人からのラインもなかった。
___街頭がやけに眩しかった。
すれ違ったサラリーマンが二度見して来た。
いろんな感情が主張し合って、ぐちゃぐちゃになって、絡まって
立ち止まって整理したいのに
いつもの交差点の信号はすぐに赤から青に変わった。
誰かを探す暇もなかった。
コメント
7件
パイセンンンンンンンンn
とりあえずパイセン 1発受けてもらってもいいすか? 孝太くん頑張れ…!!! でも溝口パイセンもなんか事情がありそうな… だからって!人の彼女奪おうとする姿勢はめちゃくちゃ良くないと思いますけどね!
わあああああ!あの、もう、最高ですね!!!!! 完璧で裏表の激しい人よりあんまり器用にいかない人の方が可愛いですよ! 澪さんに会いたくて行った本屋で偶然先輩にあってしまって落ち込んで帰るの、すごくこっちまで悲しくなりました...続きも楽しみにしてます✨✨