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相原 澪

急遽早期試験開始。赤点、単位取得不可故

相原 澪

夜電話約束取消希望。謝罪

山崎 孝太

どうしたんですか

相原 澪

私の学部だけテスト期間が早まってん

相原 澪

今から勉強しなヤバいから夜の電話できひん😥

相原 澪

ごめんな😥😥

山崎 孝太

澪さん今年厄年なんですか

相原 澪

神は死んだよね

相原 澪

孝太君もさ、受験生やんか

山崎 孝太

じゅけん………聞いたことあるような無いような単語ですね

相原 澪

気をしっかり持つんや!それは罠や!!「ゲンジツトーヒ」の恐ろしい罠や!!

相原 澪

互いに時間とれへん中こういう提案すんのは非常に心苦しいんやけど、、

相原 澪

私はテスト勉強、孝太君は受験勉強と部活にしばらく集中した方がいいかなって

山崎 孝太

山崎 孝太

そうですね

相原 澪

テスト乗り越えたら電話しような(^-^)v

相原 澪

って言う励ましのライン

相原 澪

筆記試験のみならずレポート試験も課されて心が折れそうやってん

山崎 孝太

今年厄年なんですか(--;)

相原 澪

(--;)(--;)(--;)(--;)(--;)
と言うわけで今からレポート書く為の本買いに行く…(--;)

山崎 孝太

駅前のあそこですか

相原 澪

うん

よし本屋さん行こう。

善は急げ。

澪さんとのラインを終えると俺は自己最速記録で着替えと支度を済ませると部室を飛び出した。

途中で先輩と鉢合わせたけど適当に誤魔化して、駅前にある大きな書店に走った。

冷房はあまり効いてない書店で澪さんの姿はすぐに見つけることが出来た。

料理雑誌が並ぶコーナーの前で立ち読みしていた澪さんは俺を見ると微笑んだ。

相原 澪

なんとなく来る気がしてたで

山崎 孝太

なんとなく待ってる気がしました

相原 澪

この雑誌意外と面白いからさ

相原 澪

見て。この量で材料費こんだけやで

澪さんは開いてるページを見せてくれた。 量も見た目も申し分無い料理が並んでいた。

相原 澪

……運動部やから多い方がいいやろ?

山崎 孝太

……なんでそんなこと聞くんですか

相原 澪

言わすの?察してよ

澪さんがページをめくった。前のページと比べると見た目のインパクトは弱いけど家庭的な料理が並んでいた。

相原 澪

孝太君は、こん中で好きなやつある?

相原 澪

…………このページにあるやつは私全部作れんで

弱冷房の微風に乗ったシトラスの香りが鼻先を掠めて余計に言葉は奥に引っ込んだ。

俺が情けなくも言葉に詰まっていると 素敵で爽やかな声が背中を刺した。

溝口 圭佑

山崎君じゃん。こんな所でどうしたの

すぐ後ろに素敵で爽やかな笑みを浮かべた先輩が立っていた。

俺が思いっ切り顔をしかめると先輩も早々に仮面を剥ぎ取った。(澪さんに看破されたから無駄だと判断したのかもしれない)

溝口 圭佑

なんか怪しいと思ってたけど、やっぱりな

山崎 孝太

ストーカーなんですか

溝口 圭佑

俺はお前みたいに不純な動機で来たんじゃなくて真面目にここに用があんの

溝口 圭佑

お前には塵ほども興味ねーよ

言葉通り、先輩は1歩前に出て(て言うか俺を押し退けて)蕩けるような笑みを澪さんに見せた。

溝口 圭佑

先日はありがとうございました

相原 澪

先日……?

溝口 圭佑

電車の時の

相原 澪

…ああー。あの時は私もイライラしてたからお礼言われることはしてへんで

溝口 圭佑

でもあのままだったら何言ってたか分からなかったです。本当にありがとうございました

先輩の言う「先日」は何を指しているのか俺には分からなかった。

俺がそれについて尋ねる前に先輩が更に澪さんとの距離を詰めた。 もう先輩は俺に見向きもしない。

溝口 圭佑

昔関西に住んでたんですか?

相原 澪

あ…うん。中学ん時にこっちに来てん

溝口 圭佑

俺のイトコも関西に住んでるんですよ。こっちの卵焼きは甘過ぎるって言ってました

相原 澪

あーちょっと分かる。私も塩で味付けするタイプの方が好きかな

溝口 圭佑

あとイトコは「肉まん」を「豚まん」って言わないことに驚いてました

溝口 圭佑

関西では肉と言ったら牛肉を連想するらしいですから

相原 澪

めっちゃ分かる!最初のぞみ……中学からの友だち、に「豚まん」って言っても通じひんかったもん

先輩が割り込んだおかげで澪さんの表情は見えない。 ただ声は弾んでいた。

冷房の風が強くなったように感じた。 走った後なのに寒気がする__

その感覚を振り払うように出した声は自分でも嫌になるくらい細かった。

山崎 孝太

あの……レポートの材料集めるんじゃないんですか

こんな言葉しか言えない俺を、先輩はいつもの馬鹿にしたような顔で一瞥した。

相原 澪

ほんまや。こんなことしてる場合じゃなかったわ

我にかえったように雑誌を元の場所に戻す澪さんに先輩は再び向き直った。

溝口 圭佑

思いのほか盛り上がりましたね。もしかして俺 邪魔してました?

相原 澪

あ、ううん

先輩はにこやかに会釈すると俺には見向きもせずに颯爽と歩いて行った。

どっちが「自慢の彼氏」になれるかって話。

昨日の先輩の言葉が大音量で響いた。 俺は卵焼きのことも肉まんのことも知らなかった。

いつの間にか足元に視線を固定していた俺の頭に、 世間話をするような調子の澪さんの声が降って来た。

相原 澪

面白い人やな。孝太君の部活の先輩

息が詰まるかと思った。 たぶん、詰まった。

山崎 孝太

…………そうですね

こんな短い相槌を打つのに酷く間が空いたから。

澪さんが続けて何か言う前に急いで次の言葉を引っ張り出した。

山崎 孝太

じゃあ俺この後塾があるので

相原 澪

え……?

澪さんの瞳が一瞬揺れたけど見えなかったフリをして踵を返した。

「面白い」に特別な意味は無い。はず。 俺が貶されたわけじゃない。 はず。

だけど 俺は会話に入れなかったから

今その言葉は聞きたくなかった。

どうして逃げてしまったんだろう。

家に帰って自分の部屋で1人になっても自己嫌悪に陥るだけだった。

___先輩と話してる時の澪さんの弾んだ声が響く。 振り払うようにラインを開く。

送る言葉は思いつかず「しばらくお互い勉強に集中しよう」の文が目に入り結局ラインを閉じた。

また虚無。 残響。

___澪さんに「しばらくお互い勉強に集中しよう」と言われた時 言い様の無い不安を感じた。

それが今日無視出来ないほど肥大して

ベッドに寝転がった俺を押し潰して

二度と起き上がれないような気がした。

母親に「塾に行く時間だ」と一喝されるまで着替えもせずにぼんやりと天井を見つめていた。

塾に向かういつもの交差点は、誰かを探す暇も無くすぐに信号が変わった。

__席につくとすぐに始業のチャイムが鳴り教師が入って来た。

いつもは教科書の何ページを開けと言うのに今日は しまえ と言うので妙だなと思っていたら

………小テストが始まった…。

勉強に充てようと思っていた時間は天井を見つめて過ごしていたので全く対策していない。

突然頭が良くなるミラクルな奇跡が起きるはずもなく、「半分以下の点数の人は居残り追試」が課せられてしまった。

____ぼんやりと聞こえる、授業終わりの解放感に浸っている生徒達の声を耳にしながら英単語を頭に詰め込む。

俺何やってるんだろう と思った。

教室を出ると8時を過ぎていた。

人気(ひとけ)の無い廊下を進んでいると自習室のドアが開いて男の人が出て来た。

__数時間前に書店で出会った人だけど挨拶する気にはなれなかった。

目があう前に急いで横を通り過ぎたのに その人は俺の横を追随して来た。

溝口 圭佑

なんでこんな時間まで居んの?お前の授業だいっぶ前に終わったはずだけど

山崎 孝太

…………

溝口 圭佑

どうせ居残りさせられてたんだろ

山崎 孝太

………………

溝口 圭佑

……あのさあ、俺お前の先輩だよ

そう言いながらも先輩の口調はどこか楽し気だった。

黙(だんま)りを決め込む俺に構わず先輩は謳うように話し続ける。

溝口 圭佑

年齢も学力もテニスもあとその他諸々

溝口 圭佑

全てにおいてお前より上なんだからさ

先輩が俺の肩を掴んだ。 細身のくせに強い力だった。俺の歩みも止まった。

溝口 圭佑

俺の方が「彼氏」に相応しいと思わない?

山崎 孝太

………っ

耳から入って来た先輩の言葉は、もう何十回も再生された記憶のビデオをまた最初から再生させた。

俺の肩を掴んだまま先輩が言葉を重ねる。 同時に頭の中でもあの日の先輩の言葉が響く。

リモコンを持っていない俺は 耳から入って来る言葉も頭の中に響く言葉も止めることが出来ない。音量も調節出来ない。

溝口 圭佑

お前のことだから本屋で蚊帳の外にされたことショック受けてんだろ

勉強もテニスもパッとしない中学生のお前と

溝口 圭佑

あの後俺のことでどうせ何か言われたんだろ。「あの人面白いな」とかなんとか

全国大会常連で進学校に通ってる高校生の俺

溝口 圭佑

俺がカレシなのにってショック受けてんだろ。お前単純だから大体分かるわ

どっちが「自慢の彼氏」になれるかって話

限界だった。

山崎 孝太

先輩が

俯いたまま発した声は無様に掠れていたけど、もう止められなかった。

山崎 孝太

先輩が俺の何を知ってるんですか。何が分かるんですか

山崎 孝太

そんな半笑いで言えるような単純なことじゃない

山崎 孝太

有名なテニスプレーヤーの遺伝子を受け継いで全国大会4連続で優勝して頭も良い

山崎 孝太

そんな恵まれてる先輩に俺の何が分かるんですか

肩を掴んだままの先輩の手が一瞬震えた。 顔を上げなくても先輩の顔から笑みが消えたのが分かった。

溝口 圭佑

……お前

溝口 圭佑

それ本気で言ってんの?

人気(ひとけ)の無い廊下で温度の低い先輩の声はよく響いた。

目に溜まった水滴が零れないように、震える息を吸い込んだ。

山崎 孝太

本気です。本心です。心の底からそう思ってます

山崎 孝太

俺のこと見下して馬鹿にしたいならもう成功してるから、もう俺に構わないでください

山崎 孝太

先輩の猫かぶりに付き合うのはもう うんざりなんです

肩を掴んでいる先輩の手を振り払うと廊下を駆け出した。

限界だった。

祈るようにスマホを開いた。

公式アカウントのラインとかフォローしてるユーザーの新しい投稿とか、なんでもいいから気を紛らせたい。

だけど通知は何もなかった。 あの人からのラインもなかった。

___街頭がやけに眩しかった。

すれ違ったサラリーマンが二度見して来た。

いろんな感情が主張し合って、ぐちゃぐちゃになって、絡まって

立ち止まって整理したいのに

いつもの交差点の信号はすぐに赤から青に変わった。

誰かを探す暇もなかった。

女子大生と男子中学生が交際している話 シーズン2

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