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【完結】世の中は理不尽だけれど…

第5話 - 世の中は理不尽だけれど…④

400

2021年01月15日

#日常

#ほのぼの

#悪魔

虚木（ｳﾂﾛｷﾞ）

【それぞれの仕事】

《ロマリエルの場合》

太郎

良い匂い！

ロマリエル

あら、坊っちゃん早起きね

太郎

うん！

太郎

ねぇ！ねぇ！なに焼いてるの？

ロマリエル

茄子をゴマ油で炒めて

ロマリエル

お味噌汁に入れようと思って

太郎

うわぁ！美味しそう！

ロマリエル

ふふっ、きっと美味しいわよ

太郎

じゃあ、ぼく、ご飯用意するね

ロマリエル

気を付けてね

太郎

はーい！

・

ロマリエル

（朝食の後片付け終わりっと…）

ロマリエル

（太郎ぼっちゃんはベザルと散歩に行ったから）

ロマリエル

（その間に掃除機かけちゃおうかな）

ポケットからスマホを取り出し画面を見る。

ロマリエル

（………うん、特別仕事も入ってないし）

ロマリエル

（サクッとやっちゃおう）

・

ロマリエル

ハッ！

ロマリエル

もうこんな時間！

ロマリエル

坊っちゃんごめんね！

ロマリエル

すぐお昼ご飯用意するから

太郎

うん！

ロマリエル

（良い子でぬりえしてくれてる、よかった…）

太郎

マリー！

ロマリエル

なに？

太郎

お昼、うどんがいいな！

太郎

卵のってるやつ！

ロマリエル

はい！かしこまりました

ロマリエル

（…子供ってもっとワガママの塊みたいなものだと思ってたけど…）

ロマリエル

（太郎坊っちゃんは良い子なのよねぇ）

ロマリエル

……

ロマリエル

（良い子にいていないと怒られる……）

ロマリエル

（そういうのが、根本にあるのかなぁ…）

・

太郎

サタン、おかえり～！

サタン

うむ、帰ったぞ

ロマリエル

おかえりなさいませ

サタン

マリー、変わり無いか？

ロマリエル

はい

サタン

うむ

ロマリエル

すぐお食事になさいますか？

サタン

ああ、そうだな

ロマリエル

（……ふふっ…新婚さんみたい）

ロマリエル

……

ロマリエル

（…こういうことでもないとたくさんいるサタン様の使い魔の中で）

ロマリエル

（目を向けられることもなかったんだろうなぁ…）

太郎

マリー！ぼくも手伝っていい？

ロマリエル

ええ、二人で準備しましょ

ロマリエル

（そう…太郎坊っちゃんがいなければ…）

ロマリエル

（私は"その他大勢の中の一匹"でしかなかったんだわ）

太郎

どうしたの？マリー

ロマリエル

ううん、ありがとう。太郎坊っちゃん

太郎

……？

太郎

…うん！どういたしまして！

・

《ベザルの場合》

太郎

ごちそうさまでした

ロマリエル

残さず食べてくれてありがと

太郎

マリーの料理は何でも美味しいから

ロマリエル

あら、嬉しい

ロマリエル

でも、そんな言葉どこで覚えたの？

太郎

サタンが言ってたんだよ

太郎

真似してみたんだ！

ロマリエル

そう、とっても嬉しいわ

太郎

よかったぁ

太郎

あ！

太郎

ベザルもご飯食べた？

ベザル

うん

太郎

じゃ、散歩行ってきます！

ロマリエル

はーい、行ってらっしゃい

・

太郎

昨日こっちに行ったから…

太郎

今日はこっちに行ってみよ！

ベザル

うん！そうしよう！

ベザル

（サタン様のテリトリー内だから）

ベザル

（悪いモノはいないと思うけど…）

太郎

わぁ！見て！ベザル！噴水だ！

ベザル

あ！いきなり走ったら危ないよ！

太郎

大丈夫！

太郎

わぁ…凄い！

ベザル

（サタン様が言うには、太郎くんはずっと室内にいたとか）

太郎

あ！鳥！ねぇ、ベザル！

太郎

あの鳥、取ってきてよ！

ベザル

そんなことしたら鳥が可哀想でしょ？

太郎

え…あ…

太郎

うん、そうだね

ベザル

それにボクはあんな毛まみれの生き物、かぶり付きたくないな

太郎

あはは！そうだね

ベザル

（今日までどういう生活をしていたのか知らないけど…）

太郎

ねぇねぇ、あの人たちはどこに行くのかな？

地下鉄の駅から出てきたサラリーマンたちは、

皆、同じ方向に歩いていく。

ベザル

みんな仕事に行くんだよ

太郎

サタンみたいに？

ベザル

うん

太郎

…仕事かぁ…

ベザル

（太郎くんの両親はどんな人だったんだろ…）

ベザル

（…自分の子供を虐待する奴なんてロクな奴じゃないんだろうけどさ）

少年

ママ～！

少年の母親

ケンタ！こら！走ったら危ないでしょ！

少年

見て見て！綺麗な落ち葉拾ったの！

少年

ママにプレゼント！

少年の母親

あら、ありがとう

少年の母親

ママ、嬉しいなぁ

太郎

……

ベザル

太郎くん…

太郎

ねぇ、ベザルのお父さんとお母さんも犬なの？

ベザル

へ？

ベザル

うーん…

ベザル

僕たち使い魔には親っていうのがいないんだ

太郎

！

ベザル

だから、僕たちの親はサタン様なんだよ

太郎

そうなんだ！

ベザル

（そうだ…）

ベザル

（ボロ雑巾みたいになって）

ベザル

（死ぬしかない僕を救ってくれたのは）

ベザル

（サタン様だったんだ）

太郎

サタンって何でも拾ってきちゃうんだね

ベザル

え？

太郎

ぼくも拾ってきたし

太郎

ベザルも拾われたんでしょ？

ベザル

あははっ、そうだね

ベザル

言われればよく色んなもの拾ってるかも

太郎

ふふっ…サタンって変なの

太郎

さ、行こう！ベザル！

太郎

あんまり遅いとマリーが心配しちゃうね！

ベザル

うん！

・

《ヴィアルテの場合》

下級悪魔

ねぇ、お嬢さん

悩める女性

！？

下級悪魔

どうして泣いてるの？

悩める女性

え…あ、それは…

下級悪魔

悲しいことがあったんでしょ？

下級悪魔

ねぇ、オレに話してくれる？

悩める女性

い、いえ…

下級悪魔

心配しなくてもいいんだよ

下級悪魔

一緒にあのムカつく浮気野郎を懲らしめてやろうよ

悩める女性

！！

悩める女性

ど、どうしてそれを！？

下級悪魔

お嬢さん見てたらわかるよ

下級悪魔

ね？どう？

下級悪魔

一緒に、あいつに復讐しよう？

悩める女性

……

ヴィアルテ

はい、そこまでぇ～

下級悪魔

！？

悩める女性

！？

ヴィアルテ

お前さぁ、誰のお膝元で活動してんの？

下級悪魔

！！

ヴィアルテ

知らないなんて言わせねぇよ

下級悪魔

ぐっ…

下級悪魔

い、今時、縄張り争いするなんて時代遅れなんだよ！

下級悪魔

誰がどこで何しようと勝手だろ！？

ヴィアルテ

ええ、ええ、勝手ですよ

ヴィアルテ

勝手ですとも

ヴィアルテ

んじゃ、俺があんたを追い出すのも勝手だよな？

下級悪魔

なっ！？

ヴィアルテは思い切り下級悪魔の顔面を殴った。

悩める女性

きゃっ！

下級悪魔

き、貴様っ！

下級悪魔

下等な使い魔の分際で！

下級悪魔

サタンの七光りで粋がりやがっぶっ

さらにもう一発殴る。

ヴィアルテ

うるせぇな

ヴィアルテ

ごちゃごちゃ言わずにさっさと消えろ

ヴィアルテ

てめぇが何を言おうと

ヴィアルテ

ここは、あのお方のテリトリーなんだよ！

下級悪魔

ち、ちくしょう！！

下級悪魔

覚えてやがれ！！

ヴィアルテ

……

ヴィアルテ

漫画みたいなセリフ吐いて行きやがったな

ヴィアルテ

……

悩める女性

ヒィ！

悩める女性

…あ、あ、やめ…

ヴィアルテ

ほい、これ

悩める女性

へ？

ヴィアルテ

なんか悩んでたんだろ？

ヴィアルテ

ここなら幾らでも愚痴聞いてくれるぜ

悩める女性

…BAR…神曲（かみきょく）？

ヴィアルテ

そっ、この名刺持ってったらワンドリンク無料になるから

差し出された名刺を女性はおずおずと受け取る。

ヴィアルテ

嫌なこと吐き出して

ヴィアルテ

美味しいカクテル飲んだら

ヴィアルテ

少しはすっきりするんじゃねぇの？

悩める女性

……

ヴィアルテ

あんな、よくわかんねぇ奴に絡まれることも無くなるしな

悩める女性

……

女性はペコリと一礼して、

その場から足早に去っていった。

ヴィアルテ

……

パチンッと指を鳴らすと、

人差し指に真っ赤な炎が灯る。

その炎で咥えた煙草に火を点けた。

「サタンの七光りで粋がりやがって」

ヴィアルテ

…はぁ…

ため息と共に紫煙を吐きだす。

ヴィアルテ

うるせぇな

ヴィアルテ

七光りで威張って悪いかよ

ヴィアルテ

…弱い使い魔はそうでもしなきゃ

ヴィアルテ

生き残れねぇんだよ…くそがっ

ヴィアルテ

……

ヴィアルテ

よし、店長にメールしねぇとな

ヴィアルテ

また、怒られるのはごめんだ…

・

【完結】世の中は理不尽だけれど…

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