テラーノベル
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湯気の熱が、少しずつ背中から遠ざかっていく
小さく息を吐きながら、風呂場を出た
髪は、濡れたままポタポタと滴る
その場にあった服を首を傾げながら着た
???
シン
シン
???
シンは、目を細め微笑む
シン
シン
少女は、少し戸惑いながら床に座る
タオルが少女の頭を包み込む
丁寧に優しく…自然に
シンは、当たり前のように髪を拭いていく
この人は──
なんでずっと笑ってるんだろう─
???
シン
また…笑った
タオルで髪を拭く音だけが、静かに続いていた
やがてシンの手が止まる
視線が、自然とユイの腕へ落ちる
新しいものから古いものまで
噛んだ傷
シン
シンは、静かに立ち上がり
棚の上に置いてある小さな箱を持って来る
シン
少女は、迷う
そして躊躇してしまう
でもシンは、そっと優しく手を掴み
手当を始める
シン
優しいまま
驚くほど丁寧に
ピリとした刺激に身体が少し跳ねる
???
シン
落ち着かせるように優しく
少女も何も言わないままただ耐える
白い包帯が、手首に巻かれていく
1周…また1周と
シン
思い出したかのように柔らかく
誰の…名前?…
シン
シン
ユイ
シン
シン
ユイ
自然にそこにある名前
少女は、口の中で名前を繰り返す
初めて触れる音みたいに
シン
シン
ユイ
自分でも分からない質問
″どうしてその名前なのか″
よりも
どうして自分に名前をくれるの?……
の方が近い
シンは、少し考え
シン
シン
シン
逃げ道を用意するような言い方
でも
その声は、まるで
変えないで欲しいと言っているように聞こえた
少女は、考える
自分の中にその名前を置いてみる
″ユイ″
空っぽだった場所を満たしてくれるような
なにかが入る感覚
怖い
だけど少しだけ暖かかった
ユイ
ユイ
シン
シン
自然に呼ぶ
呪い子でも
化け物でもない…
初めての呼び方
与えられた名前なのに
不思議と…
嬉しかった
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