ひな
ひな
まろの唇が俺の手から離れる
If
ないこ
If
If
If
ないこ
If
ああ、やっぱ言わなきゃ良かったかな
もう完全に嫌われたかも
欲求を満たすことすら出来なくなったらほんとにもう用済みだもんな
ないこ
ないこ
If
If
す、と頬に寄せられた手に思わず顔をよせる
ないこ
If
If
上体を起こしたまろが脱いでいた上着を着直す
ないこ
If
ああ、困らせている
じわ、と涙が滲んだ。何がしたいんだ、俺は。勝手に傷ついて、勝手に拒んだくせに
If
If
ポンポンと俺の頭を撫でてまろが少し笑う
優しくされればされるほど、涙が溢れそうになって俯く
If
まろが出ていってすぐ目に浮かんだ涙を拭う
こんなとこで泣いたら、また迷惑をかける。気を遣わせてしまう。
ないこ
身体を重ねた
playをした
まろは俺が拒んだあともずっと優しかった
なんで
なんで
なんで
キスがDomの欲求を満たす行為のひとつになるのは知っている
キスを拒む俺なんかじゃなくて、もっと優しくて、可愛くて、キスしてくれるSubの所にいったらいいのに
ほんとは、分かってた
まろがそんな事するわけないって
自分から結んだ約束を自分から破るようなやつじゃない。そんなこと、とっくに分かってた
俺の事をただのセフレなんてそんなふうに思ってるわけじゃないことも知ってる
大切な相棒
それがまろの中での俺の崩れることの無い立ち位置
DomとかSubとかそういうの関係なく
そしてきっとそれ以上にも、それ以下にも、俺はなれない
結局それが嫌で駄々を捏ねてただけなんだ。ずっと
ないこ
ぽつり、呟く
こんな風にダラダラと関係を続けても、きっといい事なんてない
やめよう、もう全部
ないこ
最初からパートナーになんて
なるんじゃなかった
ないこ
一瞬の事だった
それじゃあ、という言葉に顔を上げた瞬間
唇に触れた柔らかな感触
If
バツが悪そうに逸らされる青い瞳
ないこ
If
我慢できなくて、ってなんだ
そうやって、また俺を勘違いさせるようなことばかりする
ないこ
ないこ
If
ないこ
なんでもないことを言うみたいに口角を上げてみせる
強ばった頬は無理やり持ち上げたことによって微かに震えた
If
ないこ
ないこ
If
ないこ
If
If
ないこ
If
If
ないこ
ないこ
ないこ
If
強く腕を引っ張られる
今まで見た事ないくらい必死な彼の眼
何をそんなに必死なんだ、他のSubなんていくらでもいるのに
ないこ
掴まれた腕を引き剥がそうと力を込める
ないこ
ないこ
ないこ
If
鼓膜を揺らした言葉が、俺の言葉をとめた
喉がカラカラに乾いて、辺りが暗くなるような、そんな感覚
ないこ
そう気がつくのに時間がかかったのは、まろが今まで始めると宣言せずにplayを始めたことがなかったから
ピリピリとした空気が痛い
張り詰めた空気は、恐らくまろから出されているGlareによるものだろう
ないこ
こんなに真正面からdomのGlareを浴びたことなんて今まで1回も無い
息が深く吸えず、だんだん過呼吸気味になっていくのが分かる
ないこ
両腕を頭の上で纏められ、抵抗できない状態で唇を塞がれた
ないこ
入ってきた舌が上顎をなぞる
こんな状態なのにも関わらず本能的に応えるように舌を動かす
ないこ
上手く呼吸ができず、生理的な涙が視界を歪めた
強いGlareを浴びた足がガクガクと震えて、ここに居たら危険だと警報を鳴らす
ないこ
ないこ
手に強く力を込めてまろの胸板を押す
少し拘束の手が緩んだ所に力を込めて倒れ込むようにまろから離れた
If
ないこ
If
ないこ
俺の背中を撫でようとする手から逃れるように顔を背ける
If
ないこ
下からまろを睨みつける
もう、話したくなかった
ないこ
If
呼吸を整えるように何度か大きく深呼吸して俯いたまま、彼にも聞こえるくらいの声量で口に出す
初めてのセーフワード、
セーフワードがsubを守るためのものだなんて言い出したのは一体どこのどいつなのだろう
己を守るためだったはずの言葉は守る前に俺の心を鋭く抉った
ないこ
If
何か言いかけたまろの手が俺を引き止める前に、玄関の扉を押し上けた
冷たい空気が頬をなぞって、吹き込んでくる
ないこ
スニーカーをつっかけるよう外に出て、足早に歩く
後ろからドアが閉まる音が聞こえた
暫くの間家から、まろから少しでも離れるようにただ早足で歩いた
徐々にペースは落ちて、ゆるやかに減速した
まろは追いかけてこなかった
そりゃそうだ、追いかけて来てもなんのメリットだってない
ないこ
馬鹿馬鹿しい
ないこ
俯いた拍子に目から零れた雫がスニーカーにシミを作った
1度零れ落ちたそれはもう戻ってなんてくれなくて、ひとつまたひとつとシャツやアスファルトを濃くしていく
自分の家を飛び出してきたのだ。帰る場所もない
ないこ
追いかけてきて欲しかったなんて
追いかけてきてくれると、心のどこかでそう思い込んでいたんだ
まろは優しいから
その優しさにつけこもうとしたことすら忘れて
零れそうになった本音と一緒に拭い取るように頬を擦る
第2の性とやらも、
俺を振り回すまろのことも
こんなにワガママで自分勝手な俺も、
全部大嫌いだ
コメント
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ないちゃん…… 素直になって〜!! くっついて欲しい😭 くっそ泣けた