とある普通の日だった。
窓からは太陽の光が射し込む。
治
そう言えば、二人の持っている写真は君達の先生がくれたのだよね?
桜子
うん、そうだけど。
治
不思議なことに、写真の風景が横浜の海や街の景色なんだけれど。
治
桜子ちゃん達の世界にも、同じような街があったのかい?
敦
橘堂の写真もあったよね。
鏡花
湯豆腐のお店っていうことも知ってた。
空
それについては、先生から良く
聞かされてた。
桜子
海の話や街についても、写真を見せながら話してた。
空
先生が何週間か軍を空けた時は、新しい写真を持ってきたり、お土産を買ってきてくれたり。
治
その写真が横浜の風景…か。
桜子
可笑しいとは思った。
戦争のまっ最中にあんな綺麗な、景色の写真なんてあり得ないから。
空
先生は目的地のことも、教えないまま。
そう思えば胸が苦しくなる。
先生の顔が浮かんでしまうんだ。
乱歩
他の皆も呼んできて、話した方が早いし正確なんじゃない?
治
そうですね、話もしやすいだろうし。
敦
なら、マフィアに連絡してみます。
乱歩
いや、敦にはもっと大事な任務がある。悪いけど鏡花ちゃんが、やってくれる?
鏡花
分かった、少し待って。
敦
あの…僕の大事な任務って?
乱歩
昨日、天然な女の子に会ったでしょ?あの子、今、昨日の公園に居るから連れてきてくれる?
敦
じゃ、行ってきます!
治
よろしくね~、敦くん。
桜子
いってらっしゃい。
空
気をつけて。
琵琶乃
…なんで、こんなに騒ぎなの?
桜子
私もあんまり、分からない。
雨翠
師匠!お元気でしたか!ウチ、師匠が
気になって、心配だったんですよ!
空
わ、分かったから…!雨翠、いい加減に
離れてよ!
雨翠
別に良いじゃないですか!
空
私は、良くないから!
乱歩
…なんで、あんなことなってる訳?
桜子
雨翠は何故か、空を尊敬してるから。
治
あれは、熱烈なアプローチだね。
鏡花
…あの人と似てる気がする。
敦
太宰さんを見た時の芥川とも
同じだね。
治
あんな、熱烈ではないさ。
空
琵琶乃と桜子も、手伝ってよ!
桜子
…頑張って、空。
琵琶乃
空が言った方が良いと思うけど。
空
それが、無理なんだってば!
乱歩
話、始めて良い?
桜子
良いと思う。
空
はぁ…(漸く、離れてくれた。)
琵琶乃
やっとなの?
乱歩
ん、それで写真と先生について。
治
ねぇ、琵琶乃ちゃん。君が持っている
写真を見せてくれるかい?
なに、奪ったりはしないからね。
桜子
うん、大丈夫。
琵琶乃
…これです。
琵琶乃が机に出したのは
一枚の写真。
其処には、3人の男性が写っている。
敦
え、しゃ、社長ですよね?
右側の人って。
乱歩
多分、若い頃の社長だね。
治
加えて、森さんまでいるとはね。
鏡花
じゃあ、真ん中が。
桜子
私達の先生。
琵琶乃
先生からは、大切な友人と撮った
写真だと言っていました。
雨翠
大事な写真なのか、ウチらには一回しか見せてくれませんでしたし。
空
おまけには、失くしてないか
一日に10回は確認してた。
乱歩
出掛けると言った日は、先生は友人に
会ってくると言ったね?
桜子
うん。何処かは、言わなかったけど。
そこまで言えば、江戸川さんと
太宰さんは、お互いに
目を合わせた。
治
これは、社長と森さんを呼んで話す
必要がありそうだね。