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はるは酷い嘘つきです。
ゆりが自殺した翌日。
それは教卓に残された紙切れ
私が見つけた、ゆりの言伝。
自殺したゆりからの、
ハル
ゆりは自殺した。
それは、或る冬の寒苦が襲う街の日
空が暗くなり始める
学生たちは昇降口を通り、各々の帰路をたどる
冷たい風の吹く校庭は、もうだれひとりいなかった。
屋上。
そこには錆びた柵に手を掛ける少女がひとつ。
少女は、柵を越える
錆びて弱々しくなっていた塗料がパラパラと剥がれた
そして、少女は
長い髪の根を空に張り、
空に落ちていった。
時間がゆっくり進む
空の藍色をみる。
少女は、それ程綺麗な空を見た事がなかった
そして少女は、天使の手をとった。
ハル
ゆりの自殺を取り上げるニュース番組
飛び降り自殺。
自殺の原因を詮索している。
そんな文が淡々と読まれ、
私は涙を流した
泣く。次第に声が掠れ始め、目尻は疾うに真赤だ
ゆりが、しんだ
いやだ。いやだよ
ハル
もう此処に、この街に居ないゆりに言葉をかける
けどそれはただ虚へ言葉を放っているだけで、
どれだけ否定してもゆりはもういなくて。
その夜は泣きじゃくった。
泣いているとゆりを思い出す
ゆり
ゆり
他愛ない言葉。
そういえばこんな私への態度が、私を救ってくれたんだっけ。。
一学期
私はいじめられていた
理由は1つ、ただの暇つぶしだろう
私はお前らのおもちゃじゃない
暇つぶしに人をいじめるな
そんな言葉は言えるはずもなく
喉にいつも遮られた。
二学期
ゆりという人が気にかけてくれるようになった。
今までいなかった仲間という存在
ただ喋ったり、一緒に帰ったり
そんな些細なことが、私は嬉しかった
わたしはゆりに、依存していたのかもしれない
誰だって生きていれば不幸にぶつかるんだから
無理に抱え込むことないよ。
ゆりの言葉が脳に響く
三学期序盤
ゆりもいじめの標的となった
それでもゆりは私と仲良くしてくれた
それで、ゆりは私の拠り所となった
どんなに傷がついても、ゆりは確かにいきている
そんなゆりが、私の中では
泥黎の中、ただ唯一生きがいを与えてくれる、脈打つ心臓だった
三学期中盤
ゆりは自殺した
教卓に1つの紙切れを残して。
消えた。
ゆりの言伝。
ハルは酷い嘘つきです。
捻くれ者です。
天邪鬼です。
なので正しくさせようと。
させようと。
世界は今、正しさを求めています。
私は世界の求める正義を仰ぐ存在です。
あなたのような正しくない存在を排除すべく、ここに綴ります。
あなたはよく、愚痴を私に言っていましたね。
ですが、その長ったらしい文も言葉も、努力不足という言葉で収まるのです。
いいですか?
あなたは皆さんに酷いことをされます。
するとあなたはこのような世界は間違っていると嘆きます。
でも、そんなものも、ただの努力不足なのです。
あなたが酷いことに頑なに反抗をしていれば、
正しくないと自身が嘯いた世の中に溶け切っていれば。
あなたは哀れに嘆くことも無いのです。
あなたはこのような言い分に対しては容易く反論が出来るでしょう。
反抗したらもっと酷くなる、
自分は正しく在りたい。
傲慢ですね。
周りの皆々共が間違えたくて間違っていると思いますか?
確かに、虚勢を張って自ら汚れる人は少なからずいるかもしれません。
しかし、大半は正しく在りたいと思いながらも周りに溶け込んでいます。
みんな、嫌々、頑張って溶けているのです。
なのに自分だけが美しくありたいなど、傲慢なんですよ。
あなたは周りの平均点に合わせないと生きていけないのでしょう。
有識者であれば孤立して、新たな集団を作ることができます。
しかしあなたは、出来ないでしょう?
平均点とは程遠く、特別な取り柄も、力もこれといいないでしょう。
たとえ間違いが取り巻く正しさがあっても、少数派は間違っていると排除されます。
そうゆう世の中なのです。
なので、世の中は正しいのです。
あなたは正しくないのです。
あなたは間違っています。
だから、
だから、
償っていきましょう。
そして正しくなりましょう。
正しくないといけないでしょう?
正しく在らねば排除されてしまう世の中なのでしょう?
あなたはこれから生きて苦しんで、
苦しんで生きて、
苦しんで苦しんで、
その苦しさの中で生き恥を晒し、
償っていかなければなりません。
そして孤立して1人孤独に地に伏したとき、
あなたは正しくなれます。
それで終了です。
正しく死にたいのであれば、あなたは生きて、寿命で死んでください。
それが神による、アガペーによる1つの言伝です。
アパシー?認めません。
逸脱?認めません。
応諾でも構いません。
私が死んだその瞬間、あなたをタブラ・ラサとします。
何も書いていない石版です。
そして今からあなたは善を重ね努力をし、正しくなれるように頑張りましょう。
世界が応援しています!
世界はあなたの、あなた一人のエグゼンプラーに方を化しているのです!
頑張りましょう!
努力しましょう!
正しくなりましょう!
生きていきましょう!
苦しんで善を重ねた上で、その地層に体を伏しましょう!
あなたはその時初めて、正しく在る事ができます。
ハル
一枚の紙には、そう字が敷き詰めてあった
私が嘘つきで…ゆりは
…
その日私は、混乱と悲しみでよく眠れなかった。
ゆりは正しくない私に生きてその罪を償えと言った?
でもゆりは、あんな口調でも、回りくどい言い方もしない
では…?
正しいものそ死んで、正しくないものが生き長らえるという皮肉?
………
夢では、私か一人議論をしていた
短い夢だから、結論が出るはずないんだけど。
その夢は、いつもより輪郭がはっきりしていた。
目を覚まし、手紙を手に取る
昨日朝一に教卓で見つけてそのまま誰にも見せずに持って帰ってきちゃったけど
大丈夫かな…
ふと裏返してみる
ハル
そこにはPCのキーボードのような四角形の群れ
四角形ところどころに書いてある番号だった。
番号通りにキーボードと打つとすると…、
haru、watasitati、itigaosoroi。
omoteha、hitotutadasii
ハル
疑問だ
位置がおそろい?1つ正しい?
位置がおそろい?ってなんだ
別に住んでるところが近い訳でもない
同じクラスだけど、席は少し離れていたはずだ
いち…?
キーボードかな、
キーボード。私はひらがなの文字でかいてある、ゆりをさがした
ゆ…8 り…L
いやいや私にはならない
一応8がはで、Lがるとも読めるけど
こじつけかな…
でも、考えとしては何故かしっくりきた
まあ、次考えよう
次は、表は1つ正しい。だ
普通に考えると、表に書いてあることは1つ以外正しくないってことだよね
もしかして、私に生きろって言ったことだったりして…
それ以外が嘘になれば、紙をそのままよむよりゆりっぽさが出る
じゃあ、お揃いの位置は………
色々な想像をした。
生きろと言ったのが嘘だったら、同じ位置は彼岸と此岸の区別、で一応説明はつく
などだ
でも最終的には、
同じ位置はキーボードの位置ということで納得した。
じゃあ嘘は…
考え、考える
「ピンポーン」
インターフォンが鳴る
出てみると、宅前にいるのはゆりの母だった。
渡したい物がある。と、わたしはユリの花を渡された
どうやら、ゆりが生前、育てていた花らしい
虐められ始め、ゆりは自分が死んだらこの花を代わりにして欲しいと
嘯いていたそうだ
その話を聞き、わたしはひとつ引っかかることがあった
ゆりの母がかえり、わたしはユリの花の花言葉をしらべた。
黄色のユリ
花言葉は、偽り
これで、なんとなくわかった
お揃いの位置はキーボードであっていた。
正しい所も生きて欲しいというところで合っていた。
嘘はそれ以外
それ以外の私への言葉だ
あれは、すべて自分の事を書いていたんだ
だからわざわざお揃いの位置であることを教えたんだ
だから、最初はこうなる
ゆりは、酷い嘘つきです。
捻くれ者です。
天邪鬼です。
ゆりは自分を嘘つきと言っていた
。
私のその日は、手紙をただ読み返すことしか出来なかった
次の週学校へ行くと、
ゆりの机には、1人季節に置いてかれたように季節外れな、
綺麗な、陽射し纏う金色のユリが咲いていた
またわたしはそこで考える
いや、違う。いまは、感じる
ゆりが嘘ついていた相手は、自分自身だったのかな
だから、あの紙に書いてあった自分は正しいものというのも嘘。
虐められて肩が狭い日々の中で、
自分を正しくして、認めたかったのかな
教室がいじめられっ子が死んだと騒ぎ立てる中、
わたしはただ、少し離れた席からユリの花を見つめていた