カチャ
浩一郎
身を前に乗り出し、銃口に狙いを定める
ばーん!!!
浩一郎
店主
我ながら、夏祭りの射的に大人が真剣になって何をやっているのだろうと思う。
後ろには、順番を待つ子供達が数人並んでいる。
浩一郎
思い出されるのは、「衝撃的」なあの日の事
……30年前 中二の夏
浩一郎
浩一郎
浩一郎
かの子
かの子とは、幼稚園からの幼馴染だった。
かの子は、決して明るく騒がしいタイプでない。
しかし、頭も良く穏やかで、何よりも誰よりも優しい女の子だった。
浩一郎
俺はずっと前から、かの子の事が好きだったのだ。
かの子
浩一郎
そんな中、かの子に夏祭りに一緒に行こうと突然誘われたのだ。
当然俺は舞い上がり喜んだ。夏祭りにデート。これはもう「告白するしかない」
そう思っていた。この後、かの子に何を伝えられるか知る由もなく…
店主
浩一郎
かの子
浩一郎
かの子がそう指差したのは、人形だった。しかも「鴨(カモ)」だ。
かの子
浩一郎
何故あんなのが欲しいのだろう。そう思いながら、狙いを定め引き金を引く。
バーン!バーン!
店主
浩一郎
かの子
浩一郎
バーン!
球はカモの人形のわずかに横をすり抜けていった。
店主
悔しがる俺を尻目に、かの子は笑って肩を叩いた。
その後俺たちは、金魚すくいをやったり、水アメを食べたり、音頭を踊ったり
素晴らしい夏の思い出を作っていった。
そして祭りも終わりに差し掛かった頃、二人して近くの公園のベンチに座った。
浩一郎
浩一郎
ドクン!ドクン!
浩一郎
ドクン!ドクン!ドクン!
浩一郎
かの子
かの子が突然にそう言った
浩一郎
かの子
頭が真っ白になった。
引っ越す?誰が?いつ?どこに??
かの子
かの子
浩一郎
言葉が出なかった。頭が真っ白になって、現実じゃないような気がした。
かの子
かの子がそう言ってベンチに立ち上がった。
浩一郎
かの子
浩一郎
浩一郎
かの子
浩一郎
浩一郎
ようやく出た言葉。そしてそれと呼応して涙が溢れ出てきた。
かの子
浩一郎
浩一郎
かの子
かの子
浩一郎
かの子
かの子
浩一郎
かの子
かの子
浩一郎
かの子
かの子
かの子
浩一郎
かの子
浩一郎
かの子
かの子
かの子
かの子も泣いていた。彼女は今日、ずっと気持ちを隠したまま俺と一緒にいたのだ。
そう考えたらもっと悲しくなって、涙が止まらなかった。
浩一郎
かの子
浩一郎
かの子
かの子
時は戻る…
カチャ。
浩一郎
バーン!!
浩一郎
店主
店主
店主
浩一郎
店主
浩一郎
店主
あれから30年、結局かの子と会うことは無かった。
浩一郎
長い髪に少し茶色が混ざった髪。スッと伸びた背筋に、リンとした顔。
浩一郎
浩一郎
遠くに見える姿だったが、それは間違いく、かの子だった。彼女も夏祭りに来ていたのだ…!
かの子に近づくにつれ、過去の記憶もよみがえってくる。色々な二人の思い出達。
浩一郎
そう叫ぼうとした時だった。
子供
浩一郎
かの子
子供
かの子
かの子
子供
かの子
子供
かの子
子供
浩一郎
浩一郎
かの子は結婚していた。それはそうだ。もう何年経ったんだろう。
人は変わるのだ。時代はうつるのだ。それは当然のことなのだ。
浩一郎
あきとし
浩一郎
浩一郎
あきとし
早苗
浩一郎
あきとし
あきとしが、手に持っているものを差し出した。
浩一郎
あきとし
人生は二面性だ。
早苗
悪い事が起これば良い事が起こる。終わりがあれば始まりがある。
浩一郎
あの日思い描いた人生じゃない。
あきとし
でも、あの時描いた未来より幸せな未来がきっと待っている…
浩一郎
しれない
コメント
23件
黒腹みかげさん、コメントありがとうございます! 僕なんてまだまだですが、誉めて頂き嬉しいです!!
初見です。 表現や描写、話の構成。 全てが素敵で、もう惚れました...! ぜひ参考にさせて頂きたいです
マメポチさんありがとうございます! 嬉しいコメントありがとうございます! 神と特定されたのは始めてです笑