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戦場に机や椅子など上等なもんなどない。今日みたいな野営(やえい)の時は特に。
仕方なく、切り株を椅子がわりにして座る。
そして、たいして美味くもないレーションを口にする。 ※レーション:戦闘糧食(せんとうりょうしょく)。この呼び方が好きなので、今回はアメリカ軍での呼称を採用してます。レーションは所属する軍によって、呼称が変わるよ。美味しいと食べ尽くされる可能性があるので、アメリカ軍はわざと不味く作っている。フランス軍のは美味しいらしい。
秋元詩郎
物資の補充が遅れているせいで、不味くてもこれを食べるしか選択肢はない。だから、仕方なく、口へと捩じ込む。
高城蓮太郎
モソモソとレーションを食べていると、高城さんが戻ってきた。
今日は攻勢作戦だった。俺は接敵機動で、高城さんは戦場外に逃走した敵を追撃する班だった。
秋元詩郎
秋元詩郎
煤(すす)に汚れ、熱で変形した、折れたドッグタグを高城さんに見せる。
高城蓮太郎
俺達の戦友のミゲルは、気のいい男だった。
秋元詩郎
高城蓮太郎
秋元詩郎
対戦車地雷は、人が踏んだだけでは重量が足りなくて爆発しない。だから、敵は対戦車地雷の上に、対人地雷をおいていた。 ※対戦車地雷は垂直の圧力が加えられると爆発する仕組みなので、稀に人が踏んでも爆発する事がある。大抵は爆発しないので、どこの兵士か忘れたけど、対戦車地雷をフリスビーにして遊んでた事もあったよ。
俺が踏んだ事で起動し、ミゲルが通過中に起爆した。
高城蓮太郎
秋元詩郎
高城蓮太郎
秋元詩郎
高城蓮太郎
秋元詩郎
高城蓮太郎
一瞬の沈黙(ちんもく)が流れる。
秋元詩郎
秋元詩郎
秋元詩郎
秋元詩郎
地雷の値段は3ドル。 ※地雷:値段はピンきり。 本日の為替レート 外資→円資1ドル149.34円もとに算出すると3ドル448円2銭
3ドルもあれば消える命。俺達の命の価値は、たった3ドル。
秋元詩郎
秋元詩郎
秋元詩郎
でも、本当よく考えられているよね。
対人地雷の目的は、殺傷することよりも、手足などを吹き飛ばし、怪我を負わせることにある。
それは何故かって?死んだ兵士は置き去りにするけど、負傷した兵士は置いてけないじゃん。その上、俺達に負傷兵を連れて帰る手間をとらせることができて、敵からすれば一石二鳥。
そして、対人地雷の一番の目的は、手足を吹き飛ばされ苦しんでいる仲間を見て受ける精神的ショック。それにより、戦争を続ける気持ちを無くさせることだもんな。
戦場にいると人間の残酷さ非道さ醜悪(しゅうあく)さが嫌でも目につく。
当の昔に心は麻痺したと思っていた。苦しむ仲間を悼む気持ちが、自分に残っていた事に驚きだ。
高城蓮太郎
今まで黙って俺の話を聞いていた高城さんが俺の名を呼ぶ。
高城蓮太郎
秋元詩郎
高城蓮太郎
高城さんは、自分のドッグタグを俺の掌の上に置いた。
秋元詩郎
意味が分からない。高城さんだって、俺達にとって、どれだけ大事なものか知っているはずだ。
高城蓮太郎
高城蓮太郎
高城蓮太郎
高城蓮太郎
ああ、いつだって、俺は高城さんによって生かされる。
この人の側にいる事だけが、俺の生きる意味。
墓前に花と線香を供える。
俺はポケットから、あの日預かったドッグタグを取り出した。
帰国した後も、俺は高城さんのドッグタグを預かったままだった。
秋元詩郎
秋元詩郎
ドッグタグに口づけを落とし、誓いをたてた。
いつだって命は不平等。
でも、そんなのおかしいと思わない?
命を奪った代償が、金なんかで償いきれる筈がない。
命の価値が皆等しく平等ならば、命は命でしか償えないはずだろ?
高城さんは死んだのだから、守若が死なないと命は平等にならなくなる。
だから、俺は決めた。この先、命は平等にするってね。
秋元詩郎
俺はドッグタグをポケットにしまい、守若を屠(ほふ)る為に、墓前に背を向けた。
おわり
あとがき やっぱり、ドッグタグを題材にすると元軍人のあきたかを書きたくなるよね。一番馴染みあるだろうしね。 もう少しで和ニキの誕生日や。誕生日祝い小説は、リク消化も兼ねてハロウィン物にしょうと思ってる。こっちはpixivに乗せる予定。