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命はいつだって不平等

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命はいつだって不平等

1 - ドッグタグのあきたかバージョン。シリアス。無糖。

♥

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2023年10月02日

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戦場に机や椅子など上等なもんなどない。今日みたいな野営(やえい)の時は特に。

仕方なく、切り株を椅子がわりにして座る。

そして、たいして美味くもないレーションを口にする。 ※レーション:戦闘糧食(せんとうりょうしょく)。この呼び方が好きなので、今回はアメリカ軍での呼称を採用してます。レーションは所属する軍によって、呼称が変わるよ。美味しいと食べ尽くされる可能性があるので、アメリカ軍はわざと不味く作っている。フランス軍のは美味しいらしい。

秋元詩郎

まっず

物資の補充が遅れているせいで、不味くてもこれを食べるしか選択肢はない。だから、仕方なく、口へと捩じ込む。

高城蓮太郎

秋元どうした?元気ねぇじゃねぇか

モソモソとレーションを食べていると、高城さんが戻ってきた。

今日は攻勢作戦だった。俺は接敵機動で、高城さんは戦場外に逃走した敵を追撃する班だった。

秋元詩郎

高城さん

秋元詩郎

これ

煤(すす)に汚れ、熱で変形した、折れたドッグタグを高城さんに見せる。

高城蓮太郎

・・・・ミゲル、死んだのか

俺達の戦友のミゲルは、気のいい男だった。

秋元詩郎

ええ、最期に会います?手首しか残ってませんけど

高城蓮太郎

地雷か

秋元詩郎

そっ、対人地雷と対戦車地雷のミックス。たぶん、その地雷踏んだのは、先頭歩いていた俺

対戦車地雷は、人が踏んだだけでは重量が足りなくて爆発しない。だから、敵は対戦車地雷の上に、対人地雷をおいていた。 ※対戦車地雷は垂直の圧力が加えられると爆発する仕組みなので、稀に人が踏んでも爆発する事がある。大抵は爆発しないので、どこの兵士か忘れたけど、対戦車地雷をフリスビーにして遊んでた事もあったよ。

俺が踏んだ事で起動し、ミゲルが通過中に起爆した。

高城蓮太郎

・・・遠隔式、タイマー式、赤外線センサー式の地雷を使っていたかもしれねぇんだから、何もお前が踏んだとは限らないだろ

秋元詩郎

そうかもね

高城蓮太郎

それにここ、対人地雷禁止条約加盟国じゃなかったか?

秋元詩郎

そうですよ。でも、手榴弾よりも安価で、効率よくキル出来るとなれば使うでしょ

高城蓮太郎

そりゃそうだな

秋元詩郎

・・・・

高城蓮太郎

・・・・・・

一瞬の沈黙(ちんもく)が流れる。

秋元詩郎

最初さ、何が起こったのか分からなくて、振り返ると俺と数人の歩兵(ほへい)しか残ってなくってさ

秋元詩郎

夥しい肉片の中からミゲルのドッグタグを見つけた時に、ふと俺は何と戦っているのかなと思ってさ

秋元詩郎

だってそうでしょ?昨日酒を酌み交わした奴が、今日には死んでいるなんて事は当たり前だし

秋元詩郎

命は等しくあるべきだとか、命は尊いものだと謳(うた)うくせに、戦場で散る命には目もくれやしねぇ

地雷の値段は3ドル。 ※地雷:値段はピンきり。 本日の為替レート 外資→円資1ドル149.34円もとに算出すると3ドル448円2銭

3ドルもあれば消える命。俺達の命の価値は、たった3ドル。

秋元詩郎

平和が一番だなんだと謳いながら、その平和には沢山の屍(しかばね)が必要で、その死体の山の上に成り立つ平和って、一体なんなんだろうなって思ってさ

秋元詩郎

俺達も敵も戦う理由は同じ、自国の平和のためという大義名分のもとに戦っている

秋元詩郎

そう考えると急に馬鹿らしくなっちまった

でも、本当よく考えられているよね。

対人地雷の目的は、殺傷することよりも、手足などを吹き飛ばし、怪我を負わせることにある。

それは何故かって?死んだ兵士は置き去りにするけど、負傷した兵士は置いてけないじゃん。その上、俺達に負傷兵を連れて帰る手間をとらせることができて、敵からすれば一石二鳥。

そして、対人地雷の一番の目的は、手足を吹き飛ばされ苦しんでいる仲間を見て受ける精神的ショック。それにより、戦争を続ける気持ちを無くさせることだもんな。

戦場にいると人間の残酷さ非道さ醜悪(しゅうあく)さが嫌でも目につく。

当の昔に心は麻痺したと思っていた。苦しむ仲間を悼む気持ちが、自分に残っていた事に驚きだ。

高城蓮太郎

秋元

今まで黙って俺の話を聞いていた高城さんが俺の名を呼ぶ。

高城蓮太郎

手出せ

秋元詩郎

手?はい

高城蓮太郎

これ預かっといてくれ

高城さんは、自分のドッグタグを俺の掌の上に置いた。

秋元詩郎

なんで?

意味が分からない。高城さんだって、俺達にとって、どれだけ大事なものか知っているはずだ。

高城蓮太郎

戦う理由が欲しいなら、俺を理由にしろ

高城蓮太郎

ちょうどいい機会だ。俺もそろそろ除隊しようと思ってた

高城蓮太郎

でもよ、今ドッグタグのない俺が死んだら、無縁仏になっちまうからな。俺を無縁仏にしたくはないだろ?

高城蓮太郎

俺達が日本に帰るまで、それはお前に預けとく

ああ、いつだって、俺は高城さんによって生かされる。

この人の側にいる事だけが、俺の生きる意味。

墓前に花と線香を供える。

俺はポケットから、あの日預かったドッグタグを取り出した。

帰国した後も、俺は高城さんのドッグタグを預かったままだった。

秋元詩郎

高城さん、俺があんたの敵は絶対にとります

秋元詩郎

だから、上から見ていて下さい

ドッグタグに口づけを落とし、誓いをたてた。

いつだって命は不平等。

でも、そんなのおかしいと思わない?

命を奪った代償が、金なんかで償いきれる筈がない。

命の価値が皆等しく平等ならば、命は命でしか償えないはずだろ?

高城さんは死んだのだから、守若が死なないと命は平等にならなくなる。

だから、俺は決めた。この先、命は平等にするってね。

秋元詩郎

次、ここにくる時は、守若の首を供え物として持ってきますから楽しみにしてて下さい

俺はドッグタグをポケットにしまい、守若を屠(ほふ)る為に、墓前に背を向けた。

おわり

あとがき やっぱり、ドッグタグを題材にすると元軍人のあきたかを書きたくなるよね。一番馴染みあるだろうしね。 もう少しで和ニキの誕生日や。誕生日祝い小説は、リク消化も兼ねてハロウィン物にしょうと思ってる。こっちはpixivに乗せる予定。

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