緑がノートを写し終えて、帰ろうかと立ち上がったとき。
彼のスマホが、机の上で震えた。
画面に表示されたのは、"「水」"という名前。
緑 。
緑 。
そう言って彼は教室を出ていった。
その背中を見送りながら、胸の奥にチクリと刺さるものがあった。
"友達"_たったそれだけのはずなのに。
どうしてこんなに気になるんだろう。
彼が誰と話しているのか。
どんな顔で話しているのか。
その相手に、私の知らない"緑"を見せているのか_
それを想像するだけで、心がざわついた。
私は席に座り直して、またいつものようにノートを開いた。
【仮説の更新】 ・緑が他の女の子と話している → 嫉妬? ・声のトーンや表情が気になる → 意識している ・"ただの友達"と言われると安心して、でも寂しくなる → 感情が不安定。論理の制御がきかない。 結論:これはもう、"恋"と定義するしかないのでは?
橙 。
私はぽつりと呟く。
どれだけ分析しても、数式にしても、心は言うことを聞いてくれない。
それどころか、証明しようとするほどに、恋は深くなっていく。
緑 。
緑 。
教室のドアから顔を覗かせた彼は、何も知らない顔で笑った。
それが、苦しくて。嬉しくて。切なくて。
橙 。
私は立ち上がって、彼の隣に並んだ。
この気持ちは、証明できない。
でも確かに、"ある"ってことだけは、もう否定できなかった。
コメント
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橙彡~ッ 素直になりなよ~ッッ!! 緑彡のこと… 『大好きになればいいんじゃない?』