占い師
占い師
見えるわよ。
占い師
熊に育てられるわよ。
水晶玉の向こうでオバサンは言った。
私
私
私
占い師
占い師
あなたの運命を大きく
変える分岐点に…
私
私は五千円札を机に置いて 席を立った。
占い師
占い師
『 めそ…
聞く耳持たずに扉を閉めた。
順番待ちの人混みを掻き分けて 私は帰路についた。
私
私
じゃない!
スピーカー
逃げ出しました。
スピーカー
見掛けたかたは
警察にご一報を…」
早足で歩く私を スピーカーをオンにしたパトカーが 追い越していった。
私
私
家に帰ると意外な歓迎を受けた。
母さん
母さん
母さん
パチンコで五万円も
勝っちゃいました。
私
私
とはいえ特上寿司は嬉しい。
思わず顔がにやける。
私
茶碗蒸しだ。
私
母さん
頼んでみたの。
母さん
食べちゃいなさい。
まさか…ね。
私は占い師の言葉を思い出しながら 茶碗蒸しの蓋を開けた。
妖精
茶碗蒸しの容器の中から 蚊の鳴くような小さな声がした。
割り箸で中をさぐると 異物を発見した。
つまみ上げてみると それは単四電池ほどの 小さなオッサンだった。
妖精
ありがとう♡
妖精
茹で上がっちゃうなんて
妖精
ドジな魔女っ子ね。
いや、オッサンだ。
アニメそのままの魔法少女の コスプレこそしてるが
あなたは茶碗蒸しの玉子に まみれた小さいオッサン。
妖精
お礼をしなくっちゃ、
妖精
妖精
妖精
取り戻してあげるお♪
いやまあ、
確かに16歳の頃の自分に 戻りたいと思う事は…
妖精
ぷりりんぱww!
オッサンは玉子まみれのステッキを 私に振りかざした。
キラキラキラキラ…
…ぽむ!!
私
何よコレ?
私の体…
手足が赤ちゃんみたいに?
それにこれ、ベビー服?
妖精
妖精
戻してあげたお♡
妖精
オッサンは羽虫のように 宙を舞いどこぞへ消えた。
私
と、言ってるつもりが
私
私
としか声にならない。
その声を聞きつけこっちに やってきた母は
母さん
一瞬マッチ棒のように ピーンと直立したかと思うと
眼球を白目にひっくり返して そのまま真後ろに倒れた。
くま
私の背後から野性味たっぷりの 声がする…
振り向くと
窓を覆うほどの大きさの熊が 私をじっと見つめていた。
あら、熊さん
何でしょう?
その母性愛に満ちた瞳は?
違いますよ、
私はあなたの娘では ありません。
[数ヶ月後]
洞穴生活にもすっかり慣れました。
生のキツネやタヌキは さすがに食べれませんが
鮭やイクラは新鮮です。
ぱっと見ただけで
食べて良い草や花 ご馳走の果実や木の実が
判別出来るようになりました。
ただひとつ問題があるのです。
雪の舞いはじめた昨今
明らかにクマ子さん(仮)が 冬眠に入ったご様子なのです。
私は人間ですので冬眠という システムを所有しておりません。
少しクセのある熊乳ももう 何の問題もありません。
しかしさすがに熊乳だけで ひと冬過ごす自信が
私にはないのです。
…ああ、吹雪です。
クマ子さん(仮)は豪快に寝息を たてて冬眠中です。
占い師
占い師
『 めそ…
こんな事になるのなら
あの時、占い師の言葉を 最後まで聞いておけばよかった。
めそ…って何?
めそって何なんでしょ?
と、その時
謎の声
私の頭の中に直で語りかけながら 近づいてくるものがあります。
吹雪に霞んで良くは見えませんが 少し発光しています。
足元は少し浮いているように 見受けられます。
私
私
私はわけもわからず 叫んでおりました。
それが何であれ、私にはもう
彼(仮)に頼る以外の 選択肢はありませんから…