放課後の図書室は、驚くほど静かだった。
本の並ぶ棚の間を歩くたび、床が小さくきしむ音がする。
緑 。
橙 。
緑 。
緑は少し照れたように笑った。
どうしてこんなに近いんだろう、と思うくらい距離が縮まっているのを、私は自覚していた。
資料を探す_という名目でここに来たけれど、彼が本気で探している気配はなかった。
橙 。
橙 。
緑 。
緑 。
橙 。
緑 。
その一言で、心臓が跳ねた。
静かな図書室にいることが、余計にその言葉を際立たせる。
橙 。
緑 。
緑 。
ずるい。そう思った。
そうやって、何気ないふうに言うその一言が、私を簡単にぐらつかせる。
橙 。
やっと絞り出した声は、小さくかすれていた。
緑は驚いたようにこちらを見て、それからまた、優しく笑った。
緑 。
橙 。
緑 。
かわいい。
その言葉に、頭が真っ白になる。
すぐに言い返したくて、でもなにも浮かばなくて、私は本棚の文字をじっと見つめるしかなかった。
好きって気持ちは、こうやって、どこまでも心をかき乱してくる。
冷静だった私を、どんどん遠くへ連れていく。
静かな図書室で、ふたりきり。
触れそうで、触れられないこの距離。
今すぐにでも、胸の奥を伝えてしまいたい衝動にかられながら、私は_何も言えなかった。
コメント
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緑彡に可愛いって言われて動揺してる橙彡可愛いw 「緑もかっこいいよ」って言えばいいのに