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夜明けのフーガ

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夜明けのフーガ

7 - 公爵からの推薦状

♥

150

2025年08月22日

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前回のあらすじ

再会を果たした瑠夏、その後ベイリーに連れられたのは公爵家当主の部屋だった

瑠夏

うっ…

目をそっと開く

そこは先程とはまた打って変わった部屋で、瑠夏の予想を裏切った

真っ白いシルクのように柔らかそうなソファ、所々宙に浮いている煌びやかな灯り、

そしてこの部屋全体を支配しているであろう、豪華絢爛なアンティーク調の執務机が存在感を悠々と醸し出していた

瑠夏

これは…

ミア・ベイリー

瑠夏

ベイリーの言葉にはっとし、前に目を向ける

視線を向けた先には公爵らしき人物が、後ろ姿ではあるものの、確かにそこに鎮座していた

ミア・ベイリー

公爵閣下、お会い出来ること誠に嬉しく存じ上げます

そう言って頭を下げるベイリーに続き、瑠夏も少したどたどしく頭をさげた

??

…構わん、表を上げよ

ミア・ベイリー

かしこまりました

頭を上げると、公爵と呼ばれていた人物の顔が視界に入った

白い髪に白い目、そして服も白を基調とした装いで、豪華というより美しいという言葉の方が似合うだろうと思った

公爵

早速だが、貴殿が来た理由としてどの様な理由があるか、聞かせて貰おう

ミア・ベイリー

率直に言ってしまえば、公爵様直々の推薦を貰いたく

公爵

それは隣の彼にか?

ミア・ベイリー

……えぇ

公爵

なるほどな

空気が重苦しい

思わず逃げだしてしまいたくなる足を、瑠夏は気持ちを込めなんとか堪える

瑠夏

(帰りてぇ…面倒になる前に帰りてぇ…)

瑠夏

(…いや、管理局に入るためだ。終わったらあいつら連れて速攻帰ろう)

公爵

正直に言わせて貰えば、答えはノーだ

ミア・ベイリー

…それは、会って間もない彼だからですか?

公爵

それもある。だが、貴殿が連れてきた彼だ

公爵

そこまで手を尽くしているのなら、疑うことはない

ミア・ベイリー

では…やはり

公爵

貴殿も知っているだろう?

彼は獣だ

瑠夏

……は?

公爵

推薦を与えるに相応しい者ならいざ知らず…

公爵

獣である彼に、それは必要か?

俺の記憶の中では、皆が自分を認めそして普通の奴と同じく接してくれた記憶しかない

「瑠夏は凄い」だの、「聴覚が優れているのが羨ましい」だの、文句を言いつつ何だかんだ暖かくなる様な言葉を、あいつらは何度も掛けてくれた

それを…こいつの一言で全てが打ち破られた

まるで俺の生き様を否定された、そんな気がすると同時に目眩がした

瑠夏

(獣だけで、それだけで、全て否定すんのかよ)

腹の底がじわじわと熱く重苦しく、今すぐ声を出して叫びたい

けれど思ったようにいかず、体は硬直したままで、芯から冷えきっていた

そんな瑠夏を横目に、ベイリーは前を見据え淡々と公爵と会話を続ける

ミア・ベイリー

…お言葉ですが公爵様、彼は彼の御方の腹心です

ミア・ベイリー

あまり手をかけ過ぎるのも些かご戯が過ぎるのでは?

公爵

それは脅しと捉えていいのか?

ミア・ベイリー

そう思って頂いても宜しいですが…自分は事実のみお伝えしているので

公爵

…1度調べさせて貰おう

そう言って座っていた椅子から立ち上がると、公爵は瑠夏とベイリーの間を通り抜け、そのまま扉まで向かう

扉の前につくと足を止め、こちらを振り返らず声だけ瑠夏達に寄越した

公爵

後は好きにしてくれて構わない、が……

公爵

もし不測の事態があれば…貴殿にも何かしらの不都合が生じると思っていただこう

ミア・ベイリー

えぇ、重々把握しておりますとも

ミア・ベイリー

公爵様こそ、ご自身の言動が公爵家一つ一つを構成していると、

ミア・ベイリー

今後ともにお忘れなきよう

公爵

余計な世話だ

そう言い残し、公爵は部屋を後にした

残された瑠夏とベイリーは、ただ沈黙の続く部屋の中、ぽつりと立ち尽くしているままでいた

ミア・ベイリー

さて…瑠夏、大丈…夫ではないね

瑠夏

当たり前だろ

瑠夏

俺は獣だから推薦を渡せないだぁ?獣ごときがしゃしゃり出るなだぁ?

瑠夏

んなの、種族差別だろッ

瑠夏

お前ら人間の方が偉いのか!?人間以外は卑種なのか!?違えだろ

瑠夏

そんな世界があんなら、クソ喰らえってんだッ…

やっと吐き出せた言葉に、胸がスっと軽くなるのを感じる

ベイリーもその様子を見て、どこか物思いげに瑠夏を見た

ミア・ベイリー

気を悪くさせたなら悪かったよ

ミア・ベイリー

でも、彼も彼なりの意志があるんだ

瑠夏

意志?人を蔑む事の?

ミア・ベイリー

そうとも取れてしまうけれど…

ミア・ベイリー

とりあえずそこに座って。少し話をしよう

そう言ってベイリーに促されるまま、瑠夏はシルクの様な真っ白いソファに腰掛ける

案の定座り心地は絶品で、このままもたれかかって寝てしまえたらと思う程、心地よかった

こんな状況でなければだが…

瑠夏

んで?話を聞かせて貰おうか

ミア・ベイリー

…昔、20年程前ここに1人の娘が生まれた

ミア・ベイリー

中々子が成せなかった公爵両夫妻はとても大喜びで、使用人達もとても嬉しそうだったらしい

ミア・ベイリー

皆が待ち望んだ、待望の第一子…でも、その子は黒髪黒目

ミア・ベイリー

そこからここはどんどん狂っていったんだ

瑠夏

黒髪黒目…何故そっから狂い始めた?

ミア・ベイリー

瑠夏は知らなかったっけ?

ミア・ベイリー

ここは天使の国、天界…故に黒は不吉の象徴だ

瑠夏

だから公爵もあのロボット見てぇなやつも白髪白目…

瑠夏

ん?だが、お前は緑に黄色メッシュだろ?

ミア・ベイリー

へ?…あぁ、自分はちょっと特殊な事情があるからね

そう言ったベイリーの顔はどこか憂いがある、歪な顔だった

だがすぐさま顔を引き締め、話を元に戻そうとする

ミア・ベイリー

で、話を戻すんだけれど、彼ら…公爵両夫妻は自分の娘を一目みて、その後は娘を乳母に任せきりに

ミア・ベイリー

娘の一切の外出を禁じ教育係は付けたものの、それは優秀な後継を育て上げるための手段に他ならなかった

ミア・ベイリー

それからそのまま娘を放置、会話は報告書のみ…

ミア・ベイリー

そんな事が続いたからか、娘はとうとう自由を欲してしまった

ミア・ベイリー

娘は公爵家を出ることにし、その時自身の身代わりを務める身代わり人形を置いていった

ミア・ベイリー

が、その身代わり人形は自我を持ち、そのまま人形が公爵令嬢となった

ミア・ベイリー

夫妻の愛情を一身に受けた、本物の娘のようにね

ミア・ベイリー

本物の娘は、公爵家に戻ろうとはせず、そのまま城に役職を持ち、そのまま平凡に暮らしていく事になる

ミア・ベイリー

はずだった…が、その娘が城内で事件を起こし、一気に地獄へと突き落とされた

瑠夏

事件?

ミア・ベイリー

うん。横領罪や傷害罪といった、天界では重罪とされるものだった

ミア・ベイリー

娘は罪を否定した。けど聞きいれなかったため、自身の言葉をバッサリ切った天界を恨むように

瑠夏

それは、そいつが黒目黒髪だから…か?

ミア・ベイリー

そう。そのぐらい、黒目黒髪というものはここでは許されないものなんだ

瑠夏

……

ミア・ベイリー

娘はそのまま城の地下牢に幽閉され、日を浴びることはないと誰もが思っていた

ミア・ベイリー

けれど、1年後、国を恨んだ娘はデモを起こした

ミア・ベイリー

首謀者は娘、そこに天使以外の獣や堕天使、ヴァンパイアが連なって軍を結成

ミア・ベイリー

昔は差別はあったものの、天使以外の種族も城に居たんだけれど……

ミア・ベイリー

デモに参加し、城内から崩される脅威が過去にあった事から、今は居ない

瑠夏

(ヴァンパイアも……)

ふと瑠夏の脳裏に奈伊亜の姿が思い浮かんだが、首を振り話に集中した

瑠夏

そのデモに参加していた奴らがその娘を解放したのか

ミア・ベイリー

そう。だから城内外両方から、じわじわと天界のトップ達は追い詰められていった

ミア・ベイリー

けれどそのとき、この公爵家の身代わり令嬢が立ち上がり、軍を指揮し

ミア・ベイリー

結果的に天界トップに軍杯が上がり、娘は追い詰められ、永久の塔に大罪人の烙印を付けられ、幽閉された

ミア・ベイリー

身代わり令嬢は英雄として、この国の象徴になり、実権を握ることになった

瑠夏

…なぁ、思った事言っていいか?

ミア・ベイリー

ん?いいけど…

瑠夏

その娘、どうして死刑になってねぇんだ?

横領やら傷害やらは(本当の話だったら)幽閉はまだ分かる

だが、国を挙げての内乱だ。首謀者である娘を見せしめに、断首ぐらいはするものだと思うのだが…

ミア・ベイリー

あぁ…それは天界トップ達の面子を守るためだね

瑠夏

面子?

ミア・ベイリー

人間は天使や神を、慈悲深く慈愛に満ちた尊いものとして祭り挙げていると思うのだけど…

ミア・ベイリー

自分達にとっては、それがここのトップなわけ

瑠夏

つまり、死刑なんかにしちまえば、民衆からのイメージダウンは避けられねぇ

瑠夏

自分達の保身優先、そういうことか?

ミア・ベイリー

ざっくりいうと、そういうこと

瑠夏

腐ってんな…本当に天使かよ

おそらく、天界が危機に陥ったとしてもこの国のトップ達は自身の保身に走るんだろう

だって、普通そう言った国を脅かすものから国を守る役割が、責任が、上に立つものとしてなさねばならない

けれど話を聞けば、この国のトップは自分の面子…プライドを守るために国を犠牲にしたも同然

人の…天使ももしかしたらあるやもしれないが、憎悪ほど恐ろしいものはない。だからもっと厳しい目で精査しなければいけなかった

甘過ぎる。楓ですら物事をもっとよく考えわきまえることが出来るはずだ

それが出来ず、自己保身に走る奴は上に立つ者としてして居てはいけないし、もっともそういった者が権力を握ってはいけない

瑠夏が思わずため息を吐くと、ベイリーがなんとも言えぬ顔でこちらを見る

ミア・ベイリー

…まぁ、そう言われても仕方ないとは思う

ミア・ベイリー

自分もそう思うから…

瑠夏

仮にもお前、官吏だろ?

瑠夏

言って大丈夫なのかよ

ミア・ベイリー

多分?

瑠夏

おい

ベイリーは少し笑みを浮かべると、あっと思い出したように話を続ける

ミア・ベイリー

そういえばまだ本題に入ってなかったね

瑠夏

…あぁ、眼鏡サディs…公爵の意志だっけっか?

ミア・ベイリー

やっぱ結構根に持ってるね

瑠夏

逆に持たないとでも?

ミア・ベイリー

…悪かったよ

瑠夏

はぁ、で?あいつがなんだって?

ミア・ベイリー

さっき公爵の娘の話をしたよね?

ミア・ベイリー

その娘がデモの主犯格として捕らえられた時、実は公爵が最初に立ち会ったんだ

瑠夏

ほぅ?

ミア・ベイリー

詳しくは分からないけど…公爵はその後から、確実に多種族に対してより排他的になった

ミア・ベイリー

聞いた話では、公爵に対する娘からの全面的な非難の声

ミア・ベイリー

中でも娘が多種族との会話内容が応えたらしいけど…

瑠夏

真相は闇の中か…

ミア・ベイリー

でも、公爵は娘がデモを起こさなければこんなに当たりがキツくはならなかった

ミア・ベイリー

もっと言えば、娘が他種族を巻き込んでまで天使に楯突いたせいで、信頼性が欠けらもなく消えた

ミア・ベイリー

これを踏まえて、考えると…

瑠夏

元凶は娘で、俺みてぇな天使以外の奴らは当て付けか?

ミア・ベイリー

でも、他種族も娘を祭り上げる勢いでデモに加わっていったから…

ミア・ベイリー

公爵は自分達天使族に楯突いた他種族を嫌厭している…今でもね

瑠夏

…その溝だけが残り続け出るっつーことか

ミア・ベイリー

そういうこと。でも、瑠夏みたいにいい人も居るし

ミア・ベイリー

公爵にはそろそろ目を背けないで欲しいんだよね

瑠夏

…そうか

瑠夏

(だが、こんだけ拗れるに拗れちまったもん、そう簡単には戻らねぇ…)

瑠夏

(下手すりゃもっと悪化する事だってあるかもしれねぇ…が)

瑠夏

なら、尚更認めてもらえるよう頑張らねぇとな

瑠夏

(そんでもって、一発鉄拳を見舞わせてやる)

ミア・ベイリー

…うん、そうだね

そういったベイリーの目は、どこか眩しいものを見たかの様に細く、そしてキラキラしていた

と、その時部屋の扉がガチャッと開く音が聞こえ、咄嗟にそちらを振り返る

そこには公爵と、それからこの屋敷の執事であろう人物が扉の前に佇んでいた

ベイリーはスッと立ち上がり頭を下げる

公爵

先程のまま、楽に座ってくれて構わない

ミア・ベイリー

ではお言葉に甘えて、失礼します

瑠夏

…失礼ながら、公爵閣下発言をしても?

公爵

あぁ、許可する

瑠夏

…どうしてここへ戻って来たんですか?

瑠夏

それに執事まで連れて

公爵

やる事がある、それ以上に何かあるか?

そう淡々と機械的に話す公爵に、瑠夏のフラストレーションが溜まっていくのが分かる

こめかみ付近から青筋がピキッと立つ音がすると同時に、手からギリギリッと拳を握る音が聞こえた

ベイリーは瑠夏から発せられる威圧をどうにかしようと、公爵に問いかけた

ミア・ベイリー

やる事とは一体どの様な?

公爵

貴殿が1番理解しているだろう

ミア・ベイリー

…と、いいますと

公爵は少し不本意そうな表情を浮かべ、瑠夏の方を見る

公爵

そこの彼…瑠夏と言ったか?

瑠夏

そうですね

公爵

…瑠夏殿へ城の推薦書を渡すことにした

瑠夏

…!どうして…

公爵

先程の調査の結果が出たのでな

公爵

結果、君はあの子…彼の方の腹心だと言うことが証明された

公爵

獣が腹心なのは些か不安を通り越し、憎悪すらあるが…いた仕方ない

瑠夏

(おいおい、好き勝手言ってくれてんな)

というか、自分の家族にそんな奴は居ない、と瑠夏は噛み付く様に公爵をじっと見る

公爵

…ベイリー殿、彼を部屋から出してやれ。空気が合わなそうだ

ミア・ベイリー

…分かりました、書類は後ほど引き取りに参ります

公爵

いや、使用人に渡すよう、こちらから促す

公爵

貴殿はその間、ペットと散歩でもするといい

瑠夏

おい!誰が…

ミア・ベイリー

ガシッ))…では、自分達は失礼させていただきます

公爵

ああ

そう言って俺らは(俺はベイリーに無理矢理だが)部屋を後にした

後に、公爵家使用人から瑠夏への推薦状が届いたが、公爵の毒舌が添えられており、瑠夏の青筋は三本まで増えたそう

つづく

この作品はいかがでしたか?

150

コメント

6

ユーザー

瑠夏は獣扱いだったんだね🥲 それにしてもペット呼びはダメです笑 二足歩行で話して歩いてるよ?

ユーザー

やばい言葉が、言葉が難しい。ほんとにベイリーさん何者なんですか…。

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