優人
何か書くものちょうだい」
「あ、はい。これ使ってください」
「ありがと。えーっと……」
俺から受け取ったペンでサラサラッと文字を書くと、それを俺に渡してきた。
「これを冒険者ギルドの受付に出せば、私のサインが入った紹介状を書いてくれるわよ」
「……ありがとうございます!」
俺は頭を下げてお礼を言う。
これでやっとスタートラインに立つことができたぞ!
「じゃあ私はもう行くわね。頑張ってね」
そう言って踵を返す女性だったが、ふと思い出したかのように足を止め、こちらを振り向いた。
「ああそうだ。私の名前はミーシャっていうの。あなた名前は?」
「俺はリクです」
「そう、リク君ね。覚えておくわ。それじゃあまた会いましょう」
そして今度こそ本当に去って行った。
なんというか……不思議な人だったなぁ……。
でもおかげで助かったし、良い人だというのは間違いない。
「さて、それじゃあ早速冒険者ギルドに行ってみるかな」
紹介状の紙を大切にしまい込み、俺は冒険者ギルドへと向かった。………………
冒険者ギルドに入ると、中にいた人たちの視線が集まった。
しかしそれも一瞬のこと。すぐに興味を失ったのか元の雑多な雰囲気に戻る。……まぁ、いきなり高ランクの冒険者に喧嘩を売るようなバカはいないだろう。
「すみません、この手紙を出しに来たんですけど……」
カウンターにいた女性の方に話しかける。
「はい。ではここに名前と職業をお書きください」
渡された用紙に必要事項を書き込む。
「はい結構です。それでは拝見します……えっ!?」
ん?どうしたんだろう? 女性は目を見開いて固まっている。……もしかして字が汚くて読めなかったとか?
