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夫婦が死んだ

睡眠薬をワインに入れて飲んだ

心中だった

彼らには息子が一人いたが

その息子もきっと死ぬのだろう

…きっと死ぬ、は間違いか

必ず死ぬ、が正しい

だって私が殺すのだから。

将之

もう駄目だ

将之

両親が心中なんて、そんな…!

聡美

落ち着いて将之、

将之

落ち着いてられっかよ…!

将之

父さんも母さんも俺を残して死んだんだ

将之

まだ、大学だって卒業してない

将之

就職して、ふたりを楽にしてあげたかったのに…

将之

これからどうしたらいいんだよ!

聡美

将之…

将之

なあ、聡美

将之

お前もそうなのか?

聡美

え…?

将之

お前もどこかに行ってしまうのか?

聡美

聡美

何言ってるの…

聡美

そんなわけないじゃない!

将之

でも、

聡美

将之、私はね

聡美

あなたを残していなくなるなんてしない

聡美

ずっとそばにいる!

将之

…聡美

聡美

…本当は、おじさんとおばさんが生きてる時に言いたかったけど

聡美

私は将之のこと、好きよ

将之

……!

将之

本当、か

聡美

本当

将之

っ、

将之

俺もだ

将之

俺も、聡美が好きだった

聡美

…嬉しい

将之

式はどこで挙げようか?

聡美

ちょっと、早くない?

聡美

もう少し経ってからにしようよ

聡美

妹にも言わなきゃ

将之

そうだな…

将之

マリちゃんは元気か?

聡美

もちろん

聡美

麻里子、泣かなかったの

聡美

『もうそんな歳じゃないから』だって

聡美

…強がっちゃってさ

聡美

まだ子どものくせに

将之

あの子も父さんと母さんに懐いてたからな

聡美

そうだったよね…

聡美

ねぇ、将之

将之

ん?

聡美

幸せになろうね

将之

…ああ

将之

ありがとう、聡美

そして青年が死んだ

恋人が不在の間に、ビールに睡眠薬を入れて飲んだ

自殺だった

彼は結局両親の後を追ったのだ

そして彼もまた、残す側になった

こうなると恋人も死ぬかもしれない

殺すかどうかはまだ迷っている

結末はどうしようか。

麻里子

…お姉ちゃん

聡美

………

聡美

何?

麻里子

…あのさ

麻里子

私、なんか変だなって思ってるの

麻里子

将之さん、ビールに薬を入れたんだよね

聡美

そうよ

麻里子

でさ、

麻里子

康二おじさんと恵子おばさんは…

麻里子

ワインに薬を入れたんだよね

聡美

そう

聡美

…それがどうかした?

麻里子

別に大したことじゃないかもしれないけど…

麻里子

麻里子

3人とも、そんなにお酒飲む人だったっけ?

聡美

…………

麻里子

うろ覚えだけど…

麻里子

将之さんの家、料理用のお酒くらいしかなかったじゃん

麻里子

お祭りの時も、おじさんもおばさんも飲んでなかったし

麻里子

将之さんも20歳になっても飲まなかったよ

聡美

……だからなんなの

麻里子

ねぇ、おかしいよ

麻里子

なんでわざわざお酒に睡眠薬を入れたの?

麻里子

別に、水でも良かったじゃん

聡美

麻里子

麻里子

ひょっとして、3人は自殺じゃなくて…

聡美

麻里子!!

麻里子

っ、

聡美

いい加減にしなさい

聡美

あんた、もう高校生でしょ

聡美

ふざけたこと言わないでよ!

麻里子

…ごめんなさい

麻里子

でもさ、お姉ちゃん

麻里子

なんか、嫌だよ…こういうの

聡美

………

麻里子

お姉ちゃんだってそうでしょ

麻里子

将之さんと結婚する予定だったんだよね?

麻里子

でも、こんなことがあって

麻里子

お姉ちゃん、嫌でしょ?

聡美

………っ、

麻里子

ねぇ、確かめようよ

麻里子

3人は本当に自殺だったのか

聡美

…麻里子

聡美

あんた、本当に…

麻里子

子どもだって?

聡美

…ふふ

麻里子

お姉ちゃん、あのね

麻里子

出来ることから始めようよ

聡美

そうだね…

聡美

頑張ろっか

麻里子

うんっ

聡美

…さてと、ごはん食べよ

聡美

父さんも母さんも、忙しくしてるから

聡美

本当は私も手伝いたいけど

麻里子

うん

麻里子

お姉ちゃん、ありがと…っ

聡美

…もう、今更泣いちゃって

聡美

やっぱり強がってたんでしょ、子どもだなぁ

麻里子

うっさい

麻里子

お姉ちゃんこそわんわん泣いてたじゃん、大人のくせに

聡美

当たり前よ、大切な人だし

聡美

ほら、お皿出すの手伝って

麻里子

はーい

結局、殺すのはやめた

なんとなくこの姉妹に情が湧いてしまったのと、

仕事仲間から「殺さないでくれ」と言われてしまった

彼に見せるのは酷だったかもしれない

これから姉妹はどうなるのだろうか

次は誰を殺そう?

8ヶ月後

原田

市川先生、出版おめでとうございます!

美登里

ありがとう原田さん

原田

11作目ですが…

原田

今回は初のミステリーでしたね

原田

やっぱり大変でした?

美登里

そりゃあね

美登里

でも、原田さんのような編集者がいたからよ

美登里

本を出版できたのは

美登里

本当にありがとう

原田

えぇ〜もう、先生ったら

原田

ささ、飲みましょう!

原田

今日は奢りです

美登里

あら、いいの?

原田

はい、経費で落としますんで!

美登里

相変わらずね…

1時間後

美登里

原田さん、大丈夫?

原田

んーっ

原田

だいじょーぶですよぉ?

原田

ほらほら、文字も読めますしぃ

美登里

ならいいけど

美登里

ほどほどにね?

原田

はーい

原田

先生、お酒強いんでふねぇ

美登里

まあね

原田

あ、お酒といえばー

原田

将之くんですよね、あと康二さんと恵子さんが

原田

お酒飲めないのにーって

美登里

あ、そうそう

美登里

出版社の人はもう読んでるものね

美登里

そう、あそこで麻里子は異変に気付くのよ

美登里

そこで、姉の聡美と一緒に犯人を探すことになるんだけど…

原田

まだ上巻ですよね

原田

下巻で犯人わかるのかぁ

美登里

まだ言えないわよ、書いてないし

原田

わかってますぅ

原田

それにしても私、姉妹のどっちか殺されると思ってましたよ

美登里

ああ、それはね

美登里

頼まれたのよ、知り合いの小説家に

美登里

それと、情も湧いちゃって

原田

なるほど!

原田

続きが楽しみです

美登里

また原稿ができたらね

原田

はいっ!

更に1時間後

原田

んん……

美登里

うーん

美登里

誰を殺そうかなぁ…

原田

うう?

原田

せんせー、今…

美登里

んー、ふふ

原田

ころす?

原田

ころすって

原田

……え”っ!?

原田

先生、人殺したんですか!?

美登里

違う違う

美登里

次に書く下巻の話

原田

あ、ああ

原田

酔いが醒めました…

美登里

あはは、面白ーいっ

原田

先生も酔ってますね…?

原田

でもあの、殺すっていうのは

美登里

ああ、それね

美登里

ほら、私たち小説家って文章を書くでしょ

原田

はい

美登里

今回はミステリーで、人が死ぬじゃない?

美登里

でね、私は

美登里

原稿用紙に直接書いてるから

原田

あー

原田

先生、今時珍しいタイプですもんね

美登里

そうね、それで…

美登里

原田さん、聞いたことあるかしら

美登里

《ペンは剣よりも強し》

原田

あー!

原田

たしか、誰かの名言でしたっけ?

美登里

そう

美登里

簡単に言うと、直接的な暴力より言葉の方が、人に影響を与える

美登里

ってとこかしら

原田

へー…

原田

それが何故、殺すなんてことに?

美登里

小説って、作家次第で結末が変わるのよ

美登里

どのキャラクターが死ぬか生きるか

美登里

それは作家が決めること

美登里

言ってしまえば、作家はいつでも命を握っているの

美登里

殺される運命を作れるってこと

美登里

ペンは剣よりも強し、ね

原田

あー…

原田

なんかわかりました

原田

言葉、つまり文章を書くことが殺人になるんですね

原田

作家はペンを凶器としてキャラクターを殺していく…

美登里

そんな感じね

原田

言葉のナイフとか言いますもんね

原田

いやー…さすが先生

美登里

褒めないでよ

美登里

さぁ、もうお開きにしましょ

原田

はいっ

りりん @rrrin35 市川美登里先生の新刊買った! 何気にミステリー初では?

マッチー @_may12dw なんか面白そうな小説あったー 上巻だから下巻出るのかな? これから読むぞっ

カニカマ @ku_love 『アルコールディア』読了。 市川美登里は今作で2回目だけど、安定した面白さだった。 微笑ましいシーンと絶望的なシーンの落差がやばい、引き込まれる。

川井すみ@新刊委託中 @_oshIsuki 市川先生の小説読んだ 聡美さん→大人っぽくて涙脆い 麻里子ちゃん→幼くてしっかり者 最高では??

そらくる @skyhigh0239 アルディアの犯人誰だ…? 個人的に将之の大学の後輩かなー 姉妹は絶対違うだろうし。

机に向かい原稿用紙を見る

美登里

んーっ

美登里

さてと…書くか

ペンを持ち、頬杖をついた

美登里

聡美と麻里子は外してある

美登里

前田くんにも言われちゃったしね

作家仲間で友人の前田くんに、最初の数枚だけ読んでもらったのだ

まさか彼が、この姉妹を殺さないでなんて言うとは思わなかったけど

美登里

ふたりは気付くかしらねぇ

犯人のターゲットは、夫婦と青年だけとは限らない

次に殺されるのは__

美登里

この子

美登里

次はこの子が殺されるのよね

ペンは剣よりも強し

使い方によってナイフにもなる

美登里

犯人はあの人

美登里

だけど…

美登里

私も似たようなものだわ。

そして私は、ひとりの人物にナイフを向けた。

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