翌日
篠崎 美優
佐藤 桜
坂戸 麗奈
挨拶もそうそうに自分の席につく
もう星くんのことしか頭になかった
あと笑顔、優しい声、楽しかった思い出が
頭の中をぐるぐると回る
坂戸 麗奈
無意識のうちにため息をついてしまう
この日の授業はほとんど頭に入らなかった
…………
休み時間
光輝
私がトイレに行こうと席を立った時
気まづそうな顔をした光輝くんが
私の背後に立っていた
坂戸 麗奈
私はあの日の出来事が頭をよぎる
すぐに逃げようと走る体制をとる
光輝
光輝
坂戸 麗奈
私は警戒態勢を緩め
光輝くんと正面から向き合った
光輝
光輝
光輝
坂戸 麗奈
光輝
光輝
光輝
光輝
光輝
坂戸 麗奈
光輝
光輝
坂戸 麗奈
光輝
坂戸 麗奈
私は僅かな希望を胸に
教室を飛び出した
背後からは
「頑張れよ!」
と光輝くんが叫んでいる
私は顔だけを光輝くんの方へ向けると
ニカッと笑って見せた
…………
図書館
私は例の部屋に向かった
坂戸 麗奈
私は勢いよく扉を開けた
すると部屋の真ん中には
目を丸くした星くんが居た
清水 星
坂戸 麗奈
清水 星
星くんは少し怒っているようだ
坂戸 麗奈
清水 星
星くんは珍しく声を荒らげる
狭い部屋の中に星くんの声の余韻が漂う
私は少し驚いたが話を続けた
坂戸 麗奈
清水 星
清水 星
坂戸 麗奈
清水 星
坂戸 麗奈
坂戸 麗奈
清水 星
清水 星
坂戸 麗奈
清水 星
星くんは力なくその場に座り込み
頭を抱え込んだ
その額には少し汗が滲んでいる
清水 星
坂戸 麗奈
清水 星
坂戸 麗奈
清水 星
坂戸 麗奈
私は頭が混乱した
清水 星
清水 星
頭を殴られたような衝撃が走る
坂戸 麗奈
坂戸 麗奈
今思い返せば当てはまる点は沢山あった
いつも図書館にいたし
光輝くんに襲われそうになっていた時
助けに来てくれた時も息が酷く上がっていた
それに、初めて会った時に握った手も
やけに冷たかった記憶がある
清水 星
星くんは無理に笑っていた
いつもの優しい笑顔
だけど、何かが違う
笑顔の裏には悲しみが隠されていた
坂戸 麗奈
坂戸 麗奈
私はその場に立ち尽くすことしかできなかった
何も出来ない自分が悔しくて
憎くて、情けなくて…
全ての感情が溢れ出てくる
上手く言葉が発せない
清水 星
そう言って目をそらす星くん
坂戸 麗奈
その言葉にはずっしりとした重みがあった
坂戸 麗奈
自分から出た声は驚くほどか細かった
清水 星
トドメを刺され何も言えなくなった
坂戸 麗奈
頬に冷たいものが走る
私の目からはぽろぽろと涙がこぼれ落ちる
清水 星
清水 星
坂戸 麗奈
涙を止めようと目を擦る
だが止めようとすればするほど
涙がボロボロ落ちてくる
おそらく目の周りは真っ赤だっただろう
清水 星
星くんがため息をついた直後
私の体は星くんの腕の中にあった
坂戸 麗奈
清水 星
星くんは何も言わず
私を抱きしめている腕にぐっと力を込める
清水 星
坂戸 麗奈
星くんは意味ありげに呟く
清水 星
坂戸 麗奈
清水 星
そう言ってまた私を強く抱きしめる
暖かい腕が私を包み込む
「もう離れたくない」
直感的にそう思った
…………
どのくらいこうしていたか
星くんが私から離れた
清水 星
星くんが息を吐き出す
清水 星
坂戸 麗奈
清水 星
坂戸 麗奈
くるりと後ろを向き歩き出す
坂戸 麗奈
私は星くんの背中を追いかける
もう一生会えない気がしたから
全て伝えておこうと思ったんだ
坂戸 麗奈
清水 星
星くんが後ろを向いたまま返事をする
坂戸 麗奈
私はうるさいほどドクドクとなる
心臓をなだめるように一息つく
坂戸 麗奈
坂戸 麗奈
清水 星
振り返った星くんは泣いていた
坂戸 麗奈
清水 星
その時、窓から風が吹き込んできた
その風は生暖かく
どこか寂しさを匂わせた
坂戸 麗奈
私は星くんの返事に安心し
全身の強ばっていた筋肉が
開放された気がした
清水 星
坂戸 麗奈
星くんがひらひらと手を振る
私も星くんの背中を見送った
1年後
図書館
私はあの部屋に来ていた
中を覗き込んでも誰もいない
少しホコリっぽくなった部屋を見渡し
部屋の片隅に座り込む
坂戸 麗奈
坂戸 麗奈
坂戸 麗奈
あの日から星くんを見た人は誰もいなかった
学校の先生に聞いても
「何も知らない」
の一点張り
いつかの記憶を辿り
星くんの家に行ってみても
表札はなく、塀の外から中を覗き込んでも
家の中はガランとしており人がいる気配はない
近所の人いわく
誰にもそのことを告げず引っ越したそうだ
もう亡くなってしまった…
なんて噂もある
坂戸 麗奈
坂戸 麗奈
私はしばらくそこに座っていた
坂戸 麗奈
帰ろうと立ち上がった時
あの日と同じような風が窓から吹き込んできた
星くんが何かを伝えてくれたような気がした
坂戸 麗奈
私は前を向き歩き始めた
ゆっくりと、でも確実な1歩を
また絶対どこかで会おうね
星くん
…………
「逢魔時に散った恋」
[完]
コメント
1件
今回はあえてスッキリしない終わり方にしてみました!この後の展開は皆さんの想像にお任せします✨