___事件はいつだって突然起きる。
去年に比べると一皮剥けたかもしれない俺は、塾で2コマ授業を受けた後3時間ほど自習室で勉強していた。
時刻は19時になろうとしていた。 欠伸(あくび)をしながら塾のエントランスロビーに出ると
外開きタイプのドアが勢い良く開いて男の人が雪崩れ込んで来た。
男の人は心臓が止まりそうになった俺と目があうと___ゴキブリに出くわしたみたいな顔をした。
俺も同じような顔をしながら とりあえず知り合いなので声をかける。
山崎 孝太
溝口 圭佑
山崎 孝太
……じゃあ俺はこれで
ちゃんと頭も下げて挨拶したのに男の人___先輩は肩を掴んで俺の歩みを阻止した。
溝口 圭佑
山崎 孝太
溝口 圭佑
溝口 圭佑
山崎 孝太
山崎 孝太
溝口 圭佑
山崎 孝太
溝口 圭佑
去年に比べると一皮剥けたかもしれない俺は無償で(強調)先輩に協力してあげることにした。
__とりあえず先輩と外に出る。(澪さんとが良かった…) 綺麗な夕焼けだなぁと思っていると
物陰から凄い勢いで誰かが飛び出した。
柴本 岳人
山崎 孝太
あまりにも突然の出来事だったのでもしかしたら変な声が出たかもしれない。 今日だけで10年は寿命縮んだ。
物陰から飛び出して来た人も俺の知ってる人だった。
柴本 岳人
さっきの悲鳴と言い相変わらず総受けアクセル全開だね
山崎 孝太
柴本さんはこんな所で何やってるんですか。肝試しの練習ですか
柴本 岳人
柴本さんは即答すると、俺の後ろに立つ先輩を指さした。
柴本 岳人
柴本 岳人
夕暮れの街に柴本さんの大声が響く。 俺はドン引きの表情で柴本さんを見ている先輩に尋ねた。
山崎 孝太
溝口 圭佑
山崎 孝太
溝口 圭佑
柴本 岳人
山崎 孝太
柴本 岳人
柴本 岳人
山崎 孝太
事件は、いつだって突然起きる…。
柴本 桃花
仕方なく、渋々と、しょうがないなーと思いながら柴本さんの家に行くと、既視感を覚える光景にあった。
柴本 桃花
柴本さんの妹さんは、後から入って来た先輩を見ると突然絶叫した。 …最近皆寿命縮めに来る。
先輩も「あ」みたいな顔をしている
山崎 孝太
柴本 桃花
妹さんは早口でそう言い募ると台所の方に消えて行った。
心なしか顔が赤いような気がしたけど…。
柴本さんが書いている小説の主人公は俺をモデルにして書いてるらしい。
故に前回もやった「イメージを固める会」という名のコスプレ大会は俺の負担が素晴らしく重い。
出されたお茶とお菓子で来(きた)るコスプレ大会の英気を養っていると
机の上に置いていたスマホがラインの着信を告げた。
澪さんかなと思って見てみたけど、無視していい人からだったのでラインを開けずに机に戻す。
その後もホーム画面に何件かラインの表示が出たけど、全部無視していい人からの無視していい内容なので無視していると、妹さんが遠慮がちに口を開いた。
柴本 桃花
山崎 孝太
柴本 桃花
あの、さっき表示見えちゃったんだけど
柴本 桃花
山崎 孝太
柴本 桃花
あ、私朋ちゃんとは1年の時から友だちで
柴本 桃花
山崎 孝太
話によく出て来るってお姉ちゃんは俺のナニを話してるんだろう…と首を傾げると、何やら戦慄している先輩が視界に入った。
溝口 圭佑
タブレットで今まで柴本さんが書いたBL小説を読んでいた先輩がタブレットを床に落としていた。
柴本 岳人
あそこにいる総受け君をモデルにした主人公とロールキャベツ君(=柚月君)をモデルにした女装した男の子との恋愛を描いた物なんだけど
柴本 岳人
溝口 圭佑
溝口 圭佑
リアクションも来た理由も酷すぎる。 しかし柴本さんはもっと酷かった。
柴本 岳人
柴本 岳人
「「そんなことないです」」
柴本 岳人
どこに不満があるの?澪さんを喜ばせたくないの?
「「喜ばせたいです」」
柴本 岳人
「「協力します」」
___そんなわけで気づいたらスーツ一式(主人公の基本衣装らしい)を持たされていた。
…澪さんを出すのは卑怯だ。断れない。
澪さんは最強すぎる。あと柴本さんはいつから澪さんを下の名前で…いや別に全然気にしてな
~bitter 3~
山崎 孝太
溝口 圭佑
ソファーの上で溝口君が朋ちゃんの弟さんを押し倒している。
山崎 孝太
溝口 圭佑
柴本 岳人
兄が物凄く興奮している。 __今日はびっくりすることばかりだ。
玄関で溝口君を見た時は卒倒するかと思ったし、前回も兄に付き合わされてた中学生は朋ちゃんの弟さんだった。
溝口君も学校にいる時とは全然違うぞんざいで乱暴な口調だけど……何か生き生きしてるというか楽しそう、な気がする。
そして時々 兄の口から、弟さんの口から、溝口君の口から出て来る女の人の名前。
名前に覚えはあった。話もした。 一度家に遊びに来てくれたあの関西弁の女の人だ。
その人は朋ちゃんの弟さんと付き合ってる感じで、たぶん溝口君もその事を知ってて、だけど…… ____今日だけで全部1本につながった。
気遣いが出来て、偉ぶらなくて、 女の私でも「凄いな」と思った
私よりも何倍も魅力的な人。 私に勝ち目は、ない。
いつだって現実は苦いんだ。 立ち直れなくなる前に私が身を引かないといけない。
好きの反対は無関心と言うけど、無関心になるのは難しいから せめてこの気持ちを維持させない為に
胸の痛みが無くなるように 嫌いになったふりをして。 __小休憩を与えられた溝口君を盗み見た。
溝口 圭佑
山崎 孝太
溝口 圭佑
山崎 孝太
「リョータくん最高ですよね」 「ショースケくん最高だよな」
山崎 孝太
溝口 圭佑
「ショースケくんの良さが分からないとか不憫な奴…」「リョータくんが主人公なのにその魅力に気づけないなんて可哀想…」 溝口君と弟さんが互いに憐れみの眼差しを向けていると
柴本 岳人
タブレットにメモ書きしていた兄が なんでもないような感じで私に話を振った。
溝口君と弟さんが同時に私を見る。言葉を発せずとも 2人の目は「どっち派だ」と尋ねていた。
柴本 桃花
もっと面白い返しが出来ないのか、と歯痒くなったけど2人とも納得したように頷いた。
山崎 孝太
山崎 孝太
溝口 圭佑
柴本 桃花
「「ですよね」」
きっと立ち直れなくなるから、この気持ちを捨てないといけないのに
嫌いになったふりをしないといけないのに
私、今すごく楽しい。
柴本 岳人
時刻は午後2時になろうとしていた。兄の創作を手伝ってあげた2人は塾があるため お暇(いとま)するらしい。
私は2人を見送りに玄関までついて行き改めて頭を下げた。
柴本 桃花
山崎 孝太
柴本 桃花
柴本 岳人
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口君が窓の外を見ながら眉をひそめた。 朋ちゃんの弟さんがどこか嬉しそうに折り畳み傘を取り出した。
山崎 孝太
降水確率20%ですよ50%以下は降らない認定するとかどっかの非リアな弟ですか
先 輩 傘 持 っ て 来 て な い んで す か
溝口 圭佑
山崎 孝太
弟さんの言葉が途切れたのは 私が1歩前に出て、溝口君に折り畳み傘を差し出したからだ。
柴本 桃花
溝口 圭佑
柴本 桃花
下を向いたまま懸命に言葉を引っ張り出した。 傘を持つ手が震えた。
山崎 孝太
柴本 岳人
隣で兄が騒いでる。 どれくらいの間、傘を持って固まっていただろう。あるいは そんなに時間は経っていないのかもしれない。
私の手から傘がなくなった。
溝口 圭佑
溝口 圭佑
柴本 桃花
__「お邪魔しました」と挨拶して弟さんが玄関のドアを開けた。溝口君も傘を持って踵を返す。
しかし すぐに「あ」と何かを思い出したように肩ごしに振り向いて、私を見た。
溝口 圭佑
柴本 桃花
その微笑は、嫌いになる努力を一瞬で無にした。
溝口君は会釈して開いたドアから出て行った。 口を押さえた。
どうしようもなく胸が痛かった。 駄目だ、私
あの人のこと 好きなんだ
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コメント
4件
孝太君が主人公でテンションめっちゃ上がっちゃったじゃないですか...孝太君と先輩が仲良くなってて嬉しいです♡笑 澪さんと孝太君のラブラブしてるシーンも書いてくださると...笑笑 次回も楽しみにしてます✨
初期に比べると孝太君のリアクションが大きくなってますね😌 そんな孝太君は現在Twitterで大変な目にあってます😌。意外といじられキャラかもしれないですね😌。 次回はのぞみさん・柚月君のお話です!!シーズン2が始まってからまだ1度も出ていないあの御方も登場します! 読んでくださりありがとうございました❗