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8月26日。

それは「神に感謝!」と叫びたくなるほど特別な日。 すなわち柚月君のお誕生日である。

柚月君の彼女である私は誕生日プレゼントに手料理を披露するという、とても前向きで素敵で称賛されるべき計画を練っているんだけど…

相原 澪

なぁほんまに私も付き合わなあかん?私まだ死にたくないんやけど

食材を買うのに連れて来た澪の顔は暗い。

山川 のぞみ

安心して!ハンバーグはもうゲル状になったりしないから。柚月君の誕生日には絶対無害なハンバーグを作ってみせるから

山川 のぞみ

でも作れる料理のレパートリーがハンバーグだけって寂しすぎるじゃん。だから夏休みは料理の練習するの

相原 澪

真面目な顔して言ってるけどテロ予告にしか聞こえへんで。そんで手に持ってる生クリームは何に使うの?

山川 のぞみ

コロッケ

相原 澪

なぁほんまに私付き合わなあかん?私まだ死にたくないんやけど

澪が暗い顔をより一層暗くしていると 思いっ切り馬鹿にしたような冷たい声が降って来た。

鳴沢 真由子

貴方の住む星ではコロッケに生クリームを使うのね

山川 のぞみ

で、出たあああああああぁぁぁぁっ

鳴沢 真由子

あなたの住む星では奇声を上げるのが挨拶なのね。変わってるわね

山川 のぞみ

そう言うラスボスの住む星は嫌味を言うのが挨拶なんですね。変わってますね

鳴沢 真由子

誰がラスボスよ

相原 澪

あのーー

バチバチと火花を散らしながらも互いに冷たい眼差しを送っていると、澪が遠慮がちに口を開いた。

相原 澪

もしかして、あの、この人が……?

山川 のぞみ

そう。ラスボス

相原 澪

はぁーー……確かにちょっと柚月君の面影があるな…

鳴沢 真由子

ちょっと、その単語で通じるのおかしいでしょう

ラスボス__柚月君のお母さん__が更に温度の低い目で私を睨む。 __澪が小さく咳払いして1歩前に出た。

相原 澪

あの、話は変わるんですけど…あ、私 相原澪です。のぞみとは中学からの友だちです

相原 澪

柚月君のお母さんは、ハンバーグの材料でスライムが出来たことありますか?

鳴沢 真由子

あるわけないじゃない。この星に住んでるニンゲンがこの星に生息してる生物でこの星に浸透してる作り方で作ったらスライムなんて出来ないのよ

相原 澪

それが…私の中学からの友だちの のぞみは…スライムを作っちゃうんです…

鳴沢 真由子

それは貴方のお友達が別の星から移住して来た可能性を疑う必要があるわ

山川 のぞみ

〇×△□*♯※~~!!

相原 澪

あ''ーーーーーあんな所に柚子とセーラー●ーンがっ!
……そこで相談なんですけど

…………と、私が別のことに気を取られてる間に話は恐ろしい方向に進んでいた。 (柚子とセーラー●ーンの姿は無かった)

相原 澪

柚月君のお母さんが人の心を持ってて良かったです

鳴沢 真由子

あんな宇宙人の創作料理で柚月が病院送りにされたら堪らないからね。貴方 なかなか口が達者ね

私は澪と和気あいあいとしたお料理レッスンに励もうとしていたのに なんとラスボスの指導を受けることになってしまった。

当然私は抗議したけど 「花嫁修業や」「柚月君に会えるかもやで」等々甘い言葉を囁かれ、気づけば首を縦に振っていた。

相原 澪

ライオンは自分の子どもを強くする為に谷から突き落とすんや。この花嫁修業は絶対のぞみを強くする

山川 のぞみ

うん。私 柚月君に会って来る

私が熱く闘志を燃やしているとラスボスがボソリと呟いた。

鳴沢 真由子

…私なら致命傷を与えるか息の根を止めてから突き落とすけどね

鳴沢 真由子

柚月は高校見学に行ったから夕方まで帰って来ないわよ

山川 のぞみ

知ってますラインで聞きました絶対わざとこの日指定したでしょ本当性格悪いですね今日は宜しくお願いします

山川 のぞみ

あ、それとつまらない物ですが…

鳴沢 真由子

貴方も礼儀を心得てるのね。少し見直したわ

山川 のぞみ

柚月君の好きな「Mrs.ドーナツ」です

鳴沢 真由子

…今日教えるの私よ?

山川 のぞみ

ちゃんとラスボスの好きな生クリームが入ったやつもありますよー

鳴沢 真由子

…………貴方時々そういうことするわね…誰がラスボスよ

鳴沢 真由子

聞くところによると貴方カップラーメンとインスタント味噌汁は極めたらしいじゃない

山川 のぞみ

そうなんですよ!火加減、混ぜるタイミングなどなど完璧に把握してます!凄くないですか!?

鳴沢 真由子

凄いと思うわ。
そんな自慢出来ることでも無いのに胸を張れるのね凄いじゃない

鳴沢 真由子

つまり貴方みたいなニンゲンもどきでもお湯を沸かすことは出来るのね

鳴沢 真由子

ならまずは「茹でる」作業を覚えるべきよ。いきなり「焼く」だの「揚げる」だのするから おぞましいモノが出来るのよ

鳴沢 真由子

いい?茹でるのよ。茹、で、る。英語で言うとボイルよ。
火を使うのよ分かる?

山川 のぞみ

ワタシ、茹デル、分カル…
____って違う!「茹でる」くらい分かりますよ!ラスボスは私を何歳だと思ってるんですか!あとボロクソ言いますね!

山川 のぞみ

お湯を沸かすのとほぼほぼ同じ行為じゃないですか失礼な

鳴沢 真由子

分かってるならその手に持ってる生クリームを離しなさい

ラスボスの弟さんが大量のじゃがいもを送って来たと言うので、今回は じゃがいもを使うことになった。

今回は(柚月君は結構好きらしい)ポテトサラダを作ると言うことだった。

ラスボス曰く、ちゃんとした手順を踏んだら失敗のしようが無い簡単な料理。らしい。

一応ラスボスも「これがまな板であれが包丁」と丁寧に教えてくれる。それぐらい分かるわ! …いやもう本当舐めないで頂きたい。

鳴沢 真由子

どうしてピータンみたいな味になるのかしら

山川 のぞみ

うぅっ……なんで…

私の料理の出来なさ加減、舐めないで頂きたい。 それはそれは見事な駄作が出来た。

山川 のぞみ

やっぱり私に料理センスなんて無いんだ…違う星から移住して来たんだ……

見た目スライム、味ピータンな「ポテトサラダ」に早くも心が折れていると、意外にもラスボスが肯定的な言葉を述べた。

鳴沢 真由子

諦めるのはまだ早いわ

山川 のぞみ

ボス…

鳴沢 真由子

誰がボスよ。
ハンバーグも最初はこうだったんでしょう?練習あるのみよ

鳴沢 真由子

こうなったら最後まで付き合わうわ。と言うか付き合わせる。出来るまで帰さないわ

鳴沢 真由子

殺れば出来る

山川 のぞみ

…すごく殺る気を感じる

※漢字変換のミスではございません。

殺る気溢れるラスボスの指導は、ハードだった。

じゃがいもの皮の剥き方から否定され、ついでに私が地球に生息している生命体であることも否定された。

ラスボスは私に指導しながら夕食も同時に作っていく手際の良さだったので何も反論出来ない。

あと、出来上がったスライムとか発光するヤツを「不味い」「兵器だ」と評するわりには顔色1つ変えないのが本当に恐ろしい。

殺る気溢れる指導だったが、私に外傷は無く、首も繋がってる。 とにもかくにもテイク30___

山川 のぞみ

出来た…出来たああああああああ!
誰がどう見てもノーマルなポテサラ出来たあああ!

鳴沢 真由子

無害なポテトサラダ作るのに3時間近くかかるのね…

山川 のぞみ

うっ…うっっ……あ、ありがとうございます……テイク30は初めてです。史上最短記録です

鳴沢 真由子

これで最短なのね…貴方のお友だち大変ね……

私は目に浮かぶ熱い水滴を拭うとラスボスに向き直った。

山川 のぞみ

ボス

鳴沢 真由子

誰がボスよ

山川 のぞみ

もう1品作っていいですか

玄関の方でドアが開く音がした。

続いてパタパタパタ、という足音。 私たちがいる台所に通じるドアが勢い良く開いた。

鳴沢 柚月

のぞみさん まだいる?

山川 のぞみ

柚月く

鳴沢 真由子

いるから着替えて来なさい

柚月君は私と目があうと満面の笑みを浮かべた。そして弾むような足取りで2階に上がって行く。 カワイスギル。

私が先程とは違う感動の涙を目に浮かべていると__ 後ろに誰か立つ気配がした。

柚月の彼女というのは君のことかな?

山川 のぞみ

え?あ、はい…

男の人___たぶん柚月君のお父さん__は上から下まで値踏みするように私を眺めると、大袈裟に首を振ってため息を吐いた。

あんまり感心しないなぁ。君 蒼陽高校卒業してる?してないよね。受験出来る頭も無いでしょ

あまり うちの柚月に近づかないで欲しいなぁ。2年の学年末テストで英語だけ惨澹たる点数だったのも絶対君が関係あるよね

山川 のぞみ

あ、あの…

早口でまくし立てるお父さんに呆気に取られていると__ラスボスが興味無さそうに口を開いた。

鳴沢 真由子

……そういうの面倒臭いから余所でやってくれる?

鳴沢 真由子

それと貴方丁度良かったわ。この頭悪そうな大学生が 砂糖とみりん大量に使って切らしたから買って来て

はぁ?どうしてボクが

鳴沢 真由子

貴方が残りの夕食の支度をやってくれるなら私が買いに行くけど

……だいたいポテトサラダにどうして砂糖とみりんが要るんだ!

鳴沢 真由子

いいから。そういうのいいから

ラスボスはお父さんを引きずるようにして台所を出て行った。 ___入れ違いに着替えを済ませた柚月君が入って来る。

柚月君はサランラップがかけられたポテトサラダを見て目を輝かせた。

鳴沢 柚月

すごい!これのぞみさんが作ったの?

山川 のぞみ

ん、まぁね。美味しい…かどうか分からないけど食べられる味にはなったと思うよ

鳴沢 柚月

ありがとう。結構ポテトサラダ好きだから嬉しい

山川 のぞみ

うっ、涙で…涙で前がよく見えない………っと、そろそろかな

私はフライパンの上の「もう1品」をお皿に移した。その上にケチャップを混ぜたソースをかける。

箸で1口サイズの大きさを切り出すと、息を吹き掛けて冷ます。

山川 のぞみ

柚月君

鳴沢 柚月

なに___

嬉しそうにポテトサラダを眺めていた柚月君がこちらに顔を向ける。 私はその形のいい口に そっと「もう1品」を入れた。

山川 のぞみ

上手く出来たでしょハンバーグ。まだちょっと形は歪(いびつ)だけど…

鳴沢 柚月

うん。レトルトのやつより美味しい

柚月君は幸せそうに微笑むと、柚月君の為だけに作ったハンバーグが乗ったお皿を自分の方に引き寄せた。

鳴沢 柚月

全部食べていい?

山川 のぞみ

うん

柚月君は嬉しそうに食事を始めた。

レトルトのハンバーグを手作りと偽って出したあの日の借りはこれで返せたはず…

山川 のぞみ

__柚月君頬っぺたにソース付いてるよ

頬に付いたソースを人差し指で拭うと、 不意に柚月君が箸を置いた。

柚月君はソースを拭った人差し指を掴むと 舌でソースを舐めた。

柚月君は人差し指を掴んだまま上目遣いで私を見て、いたずらっぽい笑みを浮かべた。

鳴沢 柚月

このハンバーグは「全部」僕が食べるから

山川 のぞみ

もぉ……

顔が熱くなるのを感じた。

__柚月君の頬が少し紅く染まっているのは夕陽が差し込むからだけではないはずだ。

~bitter 4~

山崎 朋美

どどどうしたの桃ちゃん!

部活帰り。

この前の兄の一件を話し終えると、朋ちゃんが ポカンと口を開けた。

山崎 朋美

漫画の話で盛り上がったばかりか傘を貸した!?頑張ったね桃ちゃん!頑張ったねえええ!

山崎 朋美

これはもうワンチャン行けるかもだよ桃ちゃん!

柴本 桃花

な、なにを……?

山崎 朋美

決まってんでしょー?
こ、く、は、く❤

柴本 桃花

なっっ

朋ちゃんが肩に手を置いて耳打ちした。 瞬時に私の頬が染まる。

柴本 桃花

む、む、む、無理だよ

山崎 朋美

大丈夫!頑張った桃ちゃんなら行ける!

柴本 桃花

ほ、本当に無理……溝口君には、その…す、好きな人がいて

山崎 朋美

でもその人は中学生と付き合ってるんでしょ?

山崎 朋美

マジで疑問に思うんだけど、あの溝口君をアウトオブ眼中にさせる中学生何者なの?

柴本 桃花

うん………さすが朋ちゃんの弟さんだね

山崎 朋美

うん?
なんでそこでアホガキが出て来るの?

柴本 桃花

え?
………聞いてないの?

山崎 朋美

え?

山崎 朋美

……え?嘘え?
中学生って……え?アホガキ…え?孝太が…溝口君をアウトオブ眼中………え?

柴本 桃花

うん。本人に聞いたから間違いないよ

山崎 朋美

マジか……
えー…あいつ彼女いるんだ
えー……………

山崎 朋美

…………まぁ、でも、うん

朋ちゃんはしばらく瞬きを繰り返していたけど、不意にどこか納得したような顔になった。

山崎 朋美

孝太はさ、バカだしうるさいし生意気なクソガキだけど……彼女さんを傷つけたりするようなやつじゃないからさ

山崎 朋美

溝口君には申し訳ないけど、彼女さんが「なびく」ことは無いんじゃないかな

山崎 朋美

だから桃ちゃんにもチャンスはある!

朋ちゃんがポン、と肩を叩いた。

柴本 桃花

そう…かな?

山崎 朋美

そう!

脳裏に、漫画の話で盛り上がった時のことが浮かぶ。 あの時は楽しかった。

もう一度、あんな風に話してみたいと思った。 ちょっとだけ

ほんのちょっとだけ

夢を見てもいいかな?

深夜1時すぎ。

鳴沢 真由子

何してるの

鳴沢真由子は 台所を うろうろしている柚月に声をかけた。

鳴沢 柚月

あ、えっと……

鳴沢 柚月

…勉強してたらお腹減って……でも勝手に食べたら…前のお父さんみたいに怒られるかなって…

鳴沢 真由子

私をアイツと一緒にしないで

真由子は面倒臭そうにため息を吐くと台所に入り冷蔵庫を開けた。

鳴沢 真由子

夕食で散々ポテトサラダ食べたじゃない

鳴沢 柚月

うん。すごく美味しかった。集中して勉強出来た

鳴沢 真由子

結局ノロケを言いたいだけね

鳴沢 柚月

本当だもん

真由子は冷蔵庫から今日の余った白ご飯を取り出すと電子レンジに入れた。

鳴沢 真由子

___あんた志望校どうするの

鳴沢 柚月

え?

鳴沢 真由子

真剣に進路を考えたいとか言ってたじゃない。高校見学も行ったんでしょ

鳴沢 柚月

あ………うん。
…蒼陽高校にする

鳴沢 柚月

僕にもやりたいことが出来て、蒼陽高校ならそれが出来るかなって…

鳴沢 柚月

お父さんを喜ばせる為じゃなくて、自分のやりたいことの為に蒼陽高校 受験する

加熱終了を告げる電子音が鳴った。 湯気を立てる白ご飯を取り出す。

鳴沢 真由子

夜食は作ってあげるから しっかり勉強しなさい。あの暇な大学生と違ってあんたはまだ中学生なんだから

鳴沢 真由子

……余ったら塾に持って行くとかして処理しなさい

鳴沢 柚月

ありがとう……お母さん

鳴沢 真由子

参考までに聞くけど あんたのやりたいことって何なの

鳴沢 柚月

僕_________

夜の闇に染まった家の中で、台所だけ灯りがともっている。

小さな灯りの中で 柚月の決意に満ちた声はしばらく途切れることはなかった。

女子大生と男子中学生が交際している話 シーズン2

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コメント

5

ユーザー

わあ…!柚月くんも自分のやりたいことが……!!! これ今回のラスボスポジは父親っすね…許せん がんばれのぞみさんと柚月くん!!!

ユーザー

柚月くんとのぞみさんのラブラブシーン最高です♡ わたし的に、孝太君のお姉さんも好きです笑 溝口くんも新しい恋に進めることを願っておきます笑 (あの二人の邪魔されちゃ困るので)次回も楽しみにしてます✨

ユーザー

のぞみ「聞いて聞いて!私と柚月君がTELLERに登場してからもうすぐ2年だよ」 柚月「こんなに長く続いたのも読んでくれる皆様のおかげです」 のぞみ「たぶん次回は作者が騒いでるんじゃないかな」 柚月「初めて僕たちがTELLERに出た時は連載化すると思ってなかったからね」 ラスボス「ちょっと、私も同時期に出たでしょう」 読んでくださりありがとうございました❗

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