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第1話 再会
及川徹
及川徹
及川徹
高校生最後の日。
彼氏の及川徹にそう言われた。
別れよう、そういう及川の表情は、少し寂しそうに見えた。
〇〇
そう私が言うと、及川は踵を返して去ってしまった。
初夏の昼下がり、ひっそりと佇むあなたのケーキ屋「Hope」のドアベルが軽快な音を立てた。
ショーケースの奥で作業をしていたあなたは、いつものように「いらっしゃいませ」と顔を上げた。
そこに立っていたのは、見慣れた、しかし大人びた顔。
一瞬、心臓が跳ねたのは気のせいだろうか。
バレーの練習着姿で汗を光らせているのは、まさしく及川徹だった。
及川徹
及川はあなたに気づき、目を見開いた。
その視線に、あなたの心は微かに揺れる。
もう何年も前のこと。
すっかり忘れかけていたはずの彼の存在が、鮮やかに蘇る。
〇〇
不意に出た敬語に、及川はフッと笑った。
及川徹
相変わらずの明るい声。
でも、どこか戸惑っているような、そんな気配も感じられた。
レジに出て、注文を聞く。
及川は少し考え込むようにショーケースを眺め、ティラミスとショートケーキを1つずつ頼んだ。
及川徹
彼の問いかけに、あなたは少し身構えた。
もう彼には関係のないこと。
平静を装って答える。
〇〇
及川はティラミスを受け取りながら、にかっと笑った。
その笑顔の奥に、かつてと同じ無邪気さが見え隠れする。
及川徹
及川徹
及川徹
その言葉に、あなたの心は不思議と何も感じなかった。
そうか、彼女がいるんだ。
当たり前の事だと、どこから冷静な自分が居た。
〇〇
〇〇
精一杯の笑顔でそう言うと、及川は少しだけ表情を曇らせたように見えた。
及川徹
及川徹
彼はそのまま店の隅の席へと向かった。
ショーケースに戻り、手を動かしながらも、彼の姿が視界の端に入る。
スマートフォンを取り出して誰かと電話しているようだった。