逝
ヒマ……
逝
なんか、ねーの?
逝
ゲームとか、エロ本とかさ〜
紅紫
勝手に人の部屋に、押し入ってきて
紅紫
何言ってんだ?
逝
ベッドの下にエロ本とか
紅紫
……あるか
逝
ちっ、あったらおもしろそうなのに──
紅紫
おもしろがるな
紅紫
(あったらあったで──)
紅紫
(確実に修羅場になるよ)
逝
逝
あ、そうだ♪
スマホを取り出し、どこに連絡する
逝
──じゃあ、待ってるな♪
通話を切った
30分後
開けてー
紅紫
あの声は──
カチャ
右目が赤眼で、中性的な顔が目の前に立っている
紅紫
今日はカラスのお面、付けてないんだ?
?
いつも付けてるわけじゃないからね
穴の空いた箱とキャリーバッグを持っている
紅紫
その箱とキャリーバッグは……?
?
コレ?
?
罰ゲーム用のだよ
紅紫
──罰ゲーム?
逝
お〜来たか♪
逝
とりあえず、中へ入ってくれ
紅紫
一応、ボクの部屋なんだけど…………
逝
よーし
逝
今からババ抜きを始めるぞ♪
いつの間にか、トランプを手に持っている
紅紫
──急だな
逝
咫穏(シオン)ちゃんもやるだろ?
咫穏
咫穏
罰ゲーム用のを持ってきた時点で
咫穏
もしかしたらとは、思ってたけれども
逝
最下位のやつは罰ゲームな♪
紅紫
は? 罰ゲーム?
逝
罰ゲームは一抜けの言うことを
逝
ひとつだけ聞く
紅紫
(……やりたくねー)
しかし、紅紫の思いとは裏腹に、ババ抜きが開始されるのであった
数十分後
結果 一抜け:咫穏 二抜け:紅紫 最下位:逝
逝
……負けた
紅紫
(なんとか最下位に、ならずにすんだ…………)
箱を逝の前に置く
咫穏
紙を引いてね
逝
まあ、しょうがねーよな
箱の中の紙を引くと──
『ビンタ』
逝
ビンタ?
咫穏
──あー
咫穏
歯を食いしばってね
逝
へ?
ばしーん
逝
!?
咫穏は逝の頬を思いっきり叩いた
紅紫
いい音がした
逝
……思いっきり叩かれるなんて
逝
……思わなかった
逝
逝
次こそは──
紅紫
(最下位にならないように、しないと……)
そして、数十分後
結果 一抜け:咫穏 二抜け:逝 最下位:紅紫
紅紫
…………
逝
ぎゃははは! 腹いてー!
紅紫
……笑いすぎだろ!!
逝
……ぷっ。わりーわりー……
咫穏
罰ゲームだから仕方ないね
紅紫
……うぅ、こんなの…………
紅紫
あいつには、絶対に見せられない…………
逝
くく……、メイド姿の紅紫なんて、滅多にないからな〜
紅紫
撮ろうとすんな!!
逝
減るもんじゃねーし、べつにいいじゃん?
紅紫
よくねーよ!!
咫穏
メイド喫茶なら指名率高そう
逝
確かに♪ 紅紫目当てに客が来そうだよな〜
紅紫
……御役目で遅くなるって、言ってたし
紅紫
それまでなんとかしないと──
咫穏
あー、紅紫くん
咫穏
残念ながら、それは叶わないかも──
紅紫
え?
咫穏が視線を向けた先には、呆然と立っている慎哉がいた
慎哉
…………
紅紫
!?
紅紫
なんでいるの!?
紅紫
御役目は?!
慎哉
早めに終わった
慎哉
それよりも──
慎哉
まさか、メイド姿で出迎えてくれるとは
慎哉
思わなかった
紅紫
来るな!
紅紫
しかも、出迎える気なんてなかったよ!
紅紫
紅紫
(恥ずかしい……)
逝
おもしろくなってきたな
紅紫
にやにやすんな!!
咫穏
もう一度ババ抜きする?
紅紫
する!
逝
オレもやる〜
咫穏
あなたはどうします?
慎哉
一抜けの特権は?
逝
最下位のやつにひとつだけ
逝
言うことを聞かせる
慎哉
──やろう
紅紫
やるの!?
慎哉
(どうにかして、ベッドに──)
紅紫
(こいつ、絶対ろくなことしか考えてない……!)
数十分後
結果 一抜け:咫穏 二抜け:慎哉 三抜け:逝 最下位:紅紫
逝
さすがシオンちゃん、強いな
咫穏
生前“兄弟“たちと散々やってたからね
慎哉
……あと、もう少しだったのに
紅紫
…………
咫穏
じゃあ、紅紫くん
咫穏
箱の中の紙を引いてね
力なく手を箱の中に突っ込み、紙を引いた
紅紫
…………
咫穏
どれどれ……
咫穏
あ
紅紫
な、なに?
紙には────
『ネコ耳カチューシャをつける』
と書かれていた
今日一の悲鳴が部屋中に響いた