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春。 桜が舞う。 新しい制服。 新しい学校。
アレキサンドライトは校門の前に立っていた。 高度育成高校。 全国でも有名な名門校。 生徒の実力が全て評価される学校。
綾小路清隆
特に感想はない。
ただ。 与えられた場所へ進むだけ。 そう思っていた。 教室へ入る。
新しいクラス。 見知らぬ生徒たち。 騒がしい空間。 アレキサンドライトは一番後ろの席へ座った。 窓の外を見る。 その時。
ポケットの中で紙が触れた。 あの手紙だった。 誕生日の日に届いた手紙。 アメジストからだと思われる手紙。
『無理しすぎないで。』
その文字が頭をよぎる。
綾小路清隆
自分にはよく分からない言葉だった。 今まで無理をしたこともない。 頑張ったこともない。 全て簡単だったから。 だから。 その言葉だけが妙に引っかかる。
ガラッ。 教室の扉が開く。 担任が入ってきた。
茶柱先生
教室がざわつく。 だが。 アレキサンドライトは興味がなかった。
順位。 評価。
そんなものに価値を感じない。 先生の話が続く。 しかし。 周囲の生徒たちは不満そうだった。 怒る者。 焦る者。 悔しがる者。 様々な感情。 アレキサンドライトは静かに見つめる。 理解できない。 なぜそこまで感情を動かせるのか。 なぜそんな顔をするのか。
その時。 ふと。 アメジストの顔が浮かんだ。
優しく笑う顔。 兄弟たちの笑顔。
そして。 母の笑顔。
綾小路清隆
胸が少しだけ痛む。 理由は分からない。
でも。 今まで感じたことのない感覚だった。 窓の外では桜が舞っている。 新しい学校。 新しい生活。
そして。 アレキサンドライトにとって初めての――
「普通の青春」が始まろうとしていた。
コメント
1件
第27話、読み終えました。 「無理しすぎないで」というたった一言の手紙が、これまで何も無理せず、全てが簡単だったアレキサンドライトの胸に引っかかる——その対比が本当に印象的でした。周りの生徒たちが序列に一喜一憂する中で、彼だけがまったく別の次元にいる。でも、ふと浮かんだアメジストや母の笑顔に胸が痛む瞬間、彼にも確かに感情が芽生え始めているんだなと感じました。青春の始まり、という一文が静かに響きます。続きが楽しみです。