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オランダ
気がつけば、陽は西茜。 江戸と過ごしていると、時の流れはあっという間だ。
この穏やかな時間の中にいると、ヨーロッパでのうんざりするような駆け引きや騒動も忘れられる。
暴れまくるイギリスにフランス。 虎視眈々と南下を狙うロシア………。
その話は置いておこう。 思い出すと、せっかく軽くなった頭がまた重くなる。
いつもなら、この夕暮れ時を見計らって、 「じゃあね」と言って帰路につくのだが。
今日は、なんだか。
オランダ
江戸
オランダ
静かだ。僕も、江戸も、何も喋らない。
何か喋ろうかなぁと思いつつ、喉奥でスタンバイしているのは、やはり別れの言葉だ。
…かえりたく、ないな。
まだ、離れたくない。
江戸
突然発せられた言葉の、あまりにも突然すぎる言葉に、 思わず江戸の方を見た。
オランダ
和蘭陀といると、 時間の流れが、陽が傾くのが、早く感じる。
楽しい時間の流れは早いもので、もう、別れの時だ。
障子の差し込む光は、切ないほどの茜色。
1日の終わりが、こんなにも名残惜しいと思ったことはない。
暇を持て余している自分に対し、和蘭陀には恐らく、 明日も貿易相手との約束があるのだろう。
思わず、畳に目線が落ちる。
嗚呼。貴方は、もう帰るのか。
江戸
静寂。
オランダ
静寂。
その静寂を破ったのは、意外にも江戸自身だった。
江戸
だが、すぐに首を横に振る。
江戸
江戸
オランダ
江戸
「お泊まりだね!」と屈託なく笑う和蘭陀についていけず、 慌てて顔を上げ、確認の為に再度訪ねる。
江戸
オランダ
オランダ
「開けてある!」とからから笑う和蘭陀。
江戸はそれをみて、自分の胸の奥がじんわりと満たされていくのがわかった。
もう、日は落ちかけ、闇はすぐそこまで来ているけれど。
ああ。今日は、1人じゃない。
しばらくの談笑の後。
江戸
オランダ
立ち上がり、台所に向かう。 すると、和蘭陀も当然のように横に並んだ。
その距離感が、もどかしくもあり、こそばゆい。
2人で釜戸に火を入れ、湯が沸く音を聞きながら、他愛のない話をする。
オランダ
江戸
いけない、何だか上の空になっている。
江戸にとって、誰かと生活の営みを共にするということは、 目の前の湯よりも暖かく、心地のよいものだった。
孤独に捕われていたはずの心が、今は静かに満たされている。
ーーそれぞれ湯浴みを終え、江戸の自室に2枚、 布団を並べ寝ることになった。
障子の向こうは完全に闇に覆われていたが、 行燈の優しい光が室内を包み込んでいた。
自分のぬくもりの横に、他国の暖かさがあるのがなんだか慣れない。
そわそわする。
オランダ
江戸
オランダ
むくりと体を起こすと、近くに寄ってきた和蘭陀が肌を合わせてきた。
少し、冷えたのだろうか。
オランダ
江戸
オランダ
和蘭陀が、今尚江戸の目元を覆う黒い布にそっと目を向けた。
何も言わない。 ただ、その瑠璃のような瞳が、問いかけるように江戸を見ている。
静かに息を呑んだ。
今夜は、1人じゃない。 この温もりを拒む理由など、もうどこにもない。
江戸
小さく名前を呼び返すと、和蘭陀は何も言わず、 ただ優しく微笑んだ。
その太陽のような笑顔に当てられ、江戸も小さく笑みをつくる。
その瞬間。
とす
起き上がっていたはずの江戸の上半身は、 布団に横になっていた。
江戸
顔に、和蘭陀の影が落ちる。
江戸
目を白黒させていると、
オランダ
笑いながら揶揄れた。
そっちからやっておいて… と、反義の意も込め、上にいる彼を下からじとぉっと見据える。
オランダ
と言いながら頬を掻いていたその手が、 此方に伸びてくる。
目元の布に、優しく触れられる。
結び目が解かれた。
先程までとはまた違う世界。
一番に見えたのは、 行燈にやさしく照らされた、 やさしい彼の顔。
もう、迷いはない。
目隠しを外すのも、
ご飯を一緒に食べるのも、
ーーそして、
これからすることも。
蘭ならいい。
いや、違うな。
江戸
江戸が、オランダの首に腕を回す。
オランダ
距離が縮まる。
あたたかな暗闇の中、お互いだけがよく見える。
オランダ
江戸
捉われて、
障子に淡く照らされる2人の影が、重なった。
満たされて。
続く…!
つばき
つばき
つばき
つばき
つばき
つばき
つばき
つばき
つばき
つばき
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つばき
つばき
つばき
つばき
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つばき
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つばき
つばき
つばき
つばき