_ア_イ___モ_
鳩
真っ赤に燃え上がる炎に包まれ、呆然と立ち尽くす
足がすくみ、部屋の隅に逃げることさえままならない
周りには両親の着ていた服と頭蓋骨があり、まともに周りを見ることもできない
鳩
どうしようもなくなり、足元を見る
だがそこには、ナイフで腹部を刺され吐血した状態の一期一振が倒れていた
鳩
鳩
最期に手を握りたかったのか、手を伸ばしたまま動かなくなっている
鳩
こうしている間も炎は迫りくる
出口のない暗闇で、ただ焼かれて死ぬのを待つだけだ
鳩
鳩
鳩
助け…て…
鳩
全身を冷や汗が伝う
鳩
頬をつねってみると確かに痛みを感じる
隣を見ると一期一振が寝息をたてて寝ている
鳩
安心した鳩はもう一度眠りにつこうと寝転がったが、その時はっきりと声が聞こえた
ダエーワ・ビューゲロ・ジジッドル・ソーモ・バルチェリーガ・ダエーワ
鳩
鳩
椅子と椅子の隙間から声のする方を見る
そこには、呪文を唱える神父と天使がいた
鳩
遠くにいるせいで写真にうつっている人物が誰かまでは分からなかったが、黒く長い髪で黄色い目をしていた
鳩
鳩
鳩
鳩はできるだけ小さな音で一期一振を起こした
一期一振
鳩
鳩が切羽詰まるような表情と声で訴えかけると、一期一振は素早く上着を羽織り、荷物を持ち、鳩の手を引いた
一期一振
鳩
儀式に夢中になっていたせいか、神父も天使も2人が抜け出したことには気付いていないようだった
一期一振
鳩
教会からなるべく遠く、街の方へと駆けていく
髪や服の乱れなどはもう全く気にしなくなった
鳩
一期一振
一期一振
鳩
しばらく走り続けていると喋る余裕も無くなり、無言でひたすら森を駆け抜けた
時々後ろを振り返り、神父と天使が来ていないことを確認しつつ、ひたすら走った
走って
走って
無我夢中で走った
鳩
鳩
走って走って無我夢中で走って行き着いたのは、見慣れた雑木林だった
鳩
一期一振
鳩
鳩が嬉しそうに答えると、一期一振も嬉しそうに微笑んだ
一期一振
遠くには数本の街灯と街並みが見える
鳩は手を離しくるりと振り向くと、一つお辞儀をした
鳩
鳩
鳩がそう言うと、一期一振は鳩に尋ねた
一期一振
一期一振
鳩はバツが悪そうに下に目をやり、申し訳なさそうに言った
鳩
零れた涙を手ですくう
一期一振
一期一振
鳩は涙を堪え、さいごに笑顔を見せる
鳩
街へと鳩は駆け出した
拭ったはずの涙がまた零れ落ちている
が、もう止めず、一期一振は嬉しそうに駆け出す鳩の背中をただただ見るしかできなかった
本当、隙しかないですね
鳩
どうして背中を向けて走れるのですか?
鳩
視界が歪み、膝から崩れ落ちる
目の前に舞い落ちる紅の花弁は、信じたくないが確実に自らが出したものだろう
視界がさらに歪む
意識も朦朧としてきて、今にも手放してしまいそうだ
だが不思議といつもの優しい声は聞こえた
随分手間がかかりましたな…やっと捉えられました
これで主様に最高の食材が届けられる──
一期一振
最期に見つめてきたその眼は
まるで、獲物を捕らえた野生動物と化していた
ラビリンス≠シンフォニー END
コメント
4件
私は鳩が死なないルートにたどり着くまで永遠に時間を繰り返してもいい
人間不信になりそうです(泣)