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ザワザワ……
初めての学校はあっという間に終わった。 つい数日前まで続いていた地獄の様な日々が嘘のようだ。
教科書やノートを折れないようにリュックにしまう。
天乃
らっだぁ
天乃
一緒に帰る…?その行為の意味がわからない、と一瞬思ったが、少しでも天乃と一緒にいれるなら良いか、と思った。
それに、特に断る理由もない。
らっだぁ
天乃
教科書やノート、プリントをガサツに突っ込む天乃を待つ。 入れ方雑すぎだろ……
らっだぁ
天乃
忘れ物がないか最終確認してから、リュックを背負って学校を出る。
天乃
部活…俺が学校に行って人間について知りたい、という願いを叶える為に動いてくれた誰かさんが 「 学校に行くなら絶対部活は入れ!おもろいから! 」 って言ってたな…
でも、何方にしろ今は 両親 の言う事を聞かねばならないので、2人がどういうかによって部活に入れるか入れないかが決まる。
まぁどちらにしろ入りたい物は決まっていないしな。
らっだぁ
天乃
少しニヤニヤしながらそう聞いてくる。 天乃の身体を観察するに、手には何かを握り続けていたようなマメ、腕や下半身の筋肉が発達している。そして、歩き方に少し癖がある。
らっだぁ
天乃
不思議そうに眉を八の字にして寄せ、こちらを見てくる。
らっだぁ
天乃
らっだぁ
こんなの誰にだってできるだろw 天乃の反応が面白い。
らっだぁ
天乃が急に黙りこみ、俯いている。 どうしたのだろうか。
天乃
そのまま顔を隠すようにして反対側を見てしまった。 隠されると余計に気になる。
らっだぁ
天乃の顔を見る為に手で顔を寄せる。
絶妙なバランスで組み立てられた目鼻、不満そうに歪ませた口元と眉。 そして、山吹色の綺麗な瞳。 吸い寄せられそうだ。
天乃
先程から顔が赤い。人間は体調が悪くて熱を出すと顔が赤くなることがあるらしい。 体調不良だろうか…?
らっだぁ
らっだぁ
天乃の額に手を当てて体温を計る。 平熱だと思うが、結局の所は本人にしか分からない。
天乃
本人がそう言っているのだからそうなのだろう。 先程までとは様子が違うのは確かなのに、ニンゲンは本当に不思議だ。
らっだぁ
らっだぁ
天乃
若干キレながらそう言われる。 分からないが何か俺がしてしまったのかもしれないので、とりあえず謝る。
らっだぁ
数十秒間の沈黙が続く。 やはり怒らせてしまったのかな…
天乃
人間について、か… 人体の構造についてなら実際に解剖したことがあるからだけど、言えないし、多分そういう意味じゃないよな…?
らっだぁ
天乃
天乃
大袈裟かとも思える反応だったが、それでも良かった。
誰かに認めて貰えたのなんて何時ぶりだろうか…? いや、そもそもあったのだろうか…?
メガネの彼ですら、1番の理解者でありながらも褒めてはくれなかった。 まぁ彼は記憶力もいいしそれが当然なのだろう。
でも、俺は違った。
何をしてもニンゲンの様にいかないから、隠れてずっと、ずっと自分で勉強していた。
頑張った、の一言で今までの全てが報われた気がした。
らっだぁ
らっだぁ
目から水分が漏れ出す。 辛くもないのに、零れるそれが涙だと直ぐには気づけなかった。
天乃
慌てた様子でそう天乃は言った。
らっだぁ
話したくても息がつっかえて上手く話せない。
天乃
そう言って俺の頭を撫でるその手に安心感を覚えた。
天乃
天乃
天乃に手を引かれて公園にやってきた。 ベンチに座って呼吸を整えて冷静になったが、急に泣き出してただの変なやつじゃん俺……
らっだぁ
天乃
微笑む彼は木漏れ日よりも暖かく、眩しかった。
天乃
ニンゲンについてはまだまだ分からない事だらけだし、教えてくれる相手にはあまり会えないので丁度いい。
らっだぁ
それに、天乃に教えて貰えるという事は沢山一緒にいれるのでは? …いや、何考えてんだ…
天乃
天乃は笑っているが俺にとっては重要な事だ。
らっだぁ
笑われて不満だったので、少し強めにそう言うと天乃は声を上げて笑った。
天乃
らっだぁ
天乃の笑いにつられて口角が上がる。
らっだぁ
でも、天乃がしてくれることに対して何も対価を払えない。 単純に申し訳ない。
天乃
天乃は笑いながら俺の心配を一蹴する。
らっだぁ
俺がそう言うと、天乃は少し考えてから、すこし悪戯そうな顔をして口を開いた。
天乃
天乃
俺なんかのことを教えるだけで対価になるのだろうか?
らっだぁ
天乃
嬉しそうにしながら天乃は言った。 何故そんなくだらないことを求めたのか…?
らっだぁ
天乃
よろしく、で正解なのか分からなかったが、天乃もよろしく、と返してくれた。
天乃
元気に勢いよくリュックを背負った天乃の後ろをついて行く。
らっだぁ
分かれ道に差し掛かったところで天乃にそう告げる。
天乃
元気に別れを言う天乃に、名残惜しくも別れの言葉を返す。
らっだぁ
らっだぁ
静かな家の中に扉を閉める音が響く。
靴を脱ぎ、リビングに入るとお茶を飲んでいる母がいた。
母
母
らっだぁ
行きたくない、とはとても言えずに、言われるがままに準備する。
2階にある自室へ荷物を置いて1階へ降りる。
母
らっだぁ
母
らっだぁ
特に何も喋らない車内で、窓の外を眺める。
俺は猿山研究所でつくられた、生物兵器だ。
猿山研究所は表向きには市販薬の研究や、解毒剤の開発をしている。
だが、猿山研究所の本当の姿は、より強い生物兵器をつくり、兵器を利用して殺人などの依頼をこなす狂った施設だ。
俺はこの世のありとあらゆる毒や生物の遺伝子を詰め込んでつくられた。
苗字の猿山は研究所の名から、らだおは俺の名前を略したものから更に略されたものだ。
俺の本当の名はRA-11型実験体517。 RAはコードネームの略称だ。
RAPID ACID、これが俺のコードネームだ。 俺を作った彼はこれを略してどういう訳からっだぁと呼んでいる。 略し方キモすぎだろ…とは思うが、案外この呼ばれ方は気に入っている。
そうだ、部活の事聞かないと…
らっだぁ
母
らっだぁ
そんな大層な理由は無いが、納得させるために嘘をつく。
母
母
らっだぁ
母
やった、と喜んだのもつかの間、研究所につき現実に戻される。
母
らっだぁ
研究所の入り組んだ同じような道を進み、研究室へ向かう。 俺は実験体の中でも特別に施設内の移動を許可されているだけで、本来は部屋から出ることも出来ない。
目的の部屋の扉の前へついたので、コンコンコン、とノックをして名前を言う。
らっだぁ
????
引き戸を開け中に入ると、そこには見慣れた人物がいた。
深緑の髪、深紅の瞳、花の咲いた尻尾。
らっだぁ
ぐちつぼ
2週間ぶりに会えて嬉しい。 他の研究員にここまで甘やかしているのをバレるとマズいらしいので、そんなに会えないのだ。
らっだぁ
ぐちつぼ
らっだぁ
ぐちつぼ
ぐちつぼ
らっだぁ
部屋にあるベッドに腰をかけ、ぐちつぼの質問に答えながら当たりを見渡す。
ぐちつぼ
らっだぁ
らっだぁ
ぐちつぼ
机には俺に関する実験の資料や、彼自身のものがあった。 「 擬似的人間生活による感情の発達 」 「 食生活の変化による被検体の身体的変化 」 「 思考を読める生物の限界 」 「 尻尾による全身への影響 」 題名を見るだけでだいたい察しがつく。
ぐちつぼ
らっだぁ
両手と尻尾を使い、器用に注射の準備をする。 彼のあの尻尾は自分で人体実験をした際に出来たらしい。狂ってやがる。
ぐちつぼ
らっだぁ
体内に液体が入ってくるのがわかる。針の痛みをその気持ち悪さが上回る。 そして、それは自分と混ざっていく。
ぐちつぼ
尻尾を使い次の注射器を取り、残る2本も打っていく。
ぐちつぼ
らっだぁ
紙コップに入れられた液体を飲む。
ぐちつぼ
らっだぁ
そう言いかけ、突然訪れた強烈な吐き気と悪寒に耐えきれず嗚咽する。
らっだぁ
ぐちつぼ
身体と混ざりきらず、気持ち悪くて吐いてしまった。 だが、それでも気持ち悪さは収まらず、ぐちつぼに背中をさすられながら溶けてしまった。
ぐちつぼ
ぐちつぼ
そう言いながらぐちつぼは屈み、花の咲いた尻尾で俺に触れてくる。
ぐちつぼは自分が触れている相手が何を言いたいか察することが出来る。 尻尾で無ければいけない訳では無いが、よく溶けて喋れない時は尻尾で触ってくる。
らっだぁ
ぐちつぼ
らっだぁ
ぐちつぼ
らっだぁ
少し時間が経ったので、少しは形になれるようになってきた。 丸っこい形になり、最低限動けるように足をはやす。
ぐちつぼ
らっだぁ
ぐちつぼ
らっだぁ
ぐちつぼ
らっだぁ
数秒の間を空け、ぐちつぼが口を開く。
ぐちつぼ
らっだぁ
らっだぁ
ぐちつぼ
そのまま数分他愛ない会話?をした。 傍から見たらぐちつぼは変な生き物に1人で話しかけているように見えるのかと思うと笑いが込上げる。
らっだぁ
ぐちつぼ
ぐちつぼが離れたので、ニンゲンの形になる。 特に意識せずとも自然にニンゲンの形になれるし、勝手に容姿も成長して行くから我ながら不思議だ。
ぐちつぼ
らっだぁ
服を取る為屈もうとしたその時、ぐちつぼが背後から急に首筋から腰にかけて背骨を伝うようになぞって来たので、思わず変な声が出る。
ぐちつぼ
らっだぁ
ぐちつぼ
ぐちつぼ
ぐちつぼとしても、俺の両親役に使えるのがあの二人しかいないからあまり強く言えないし、俺が言うともっと酷くなるからやめて、と言ってるから直接言えなくてイライラしているのだろう。
らっだぁ
ぐちつぼ
しまった、触れられていたが為に考えていることが筒抜けだった。
らっだぁ
ぐちつぼ
らっだぁ
ぐちつぼ
手を離されて、やっと服を着ることが出来た。
それからまた数分先程の薬の影響が出ないか様子見していると、帰る時間になった。
ぐちつぼ
らっだぁ
研究所は嫌いだが、ぐちつぼは嫌いじゃない。むしろこの世で唯一頼れる人物だ。
ぐちつぼ
らっだぁ
自分より数センチ背が高いぐちつぼの目を見て、そう聞く。
ぐちつぼ
らっだぁ
ぐちつぼ
らっだぁ
らっだぁ
ぐちつぼに抱きつき、ぐちつぼを堪能する。
らっだぁ
ぐちつぼ
そして小走りに部屋を後にした。
あれから徒歩で家に帰り、風呂も入ってご飯も食べた。 出された夕食は相変わらず味がしなくて、早く無くなれ、と思いながら咀嚼した。
それから自室へ戻り、今に至る。
らっだぁ
とりあえず今日もらった教科書全部何周か読むか…
らっだぁ
そして5時間後…
らっだぁ
粗方覚えたが、まだ暗記までは出来ていない。
らっだぁ
せめて明日の授業の範囲は暗記したい…
らっだぁ