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滲む涙のせいで、まともに歩けやしない。
キム・ヘリン
コロナのせいで、溜息さえも行き場を失くし、マスクの中でもやもやと彷徨い、黒い気体と化して私の中に溜まっていく。むせ返るほど苦しくなる。
涙なんて流したくなくて、溢れそうになる雫を落とさないよう私は空を見る。そこには息を飲むほどの星空なんてどこにも無くて、私の心のように、ソウルの上空は黒く荒んでいた。
都会の汚れた光のせいで、星は一つも見えない。
綺麗なはずの満月も、いつもの「オがいなきゃ地球は生きていけないんだ」みたいないつもの自信はどこへやら、中途半端にぼんやりと光っていた。
それでも世界は、マスクの中に溜まった溜息なんて、私に今日どんな不幸が訪れたかなんて、そんなことには目も暮れず、物凄い速さで回り、進んでいく。
いつも、私は置いてけぼりだ。
でももうそんなの慣れた。
私が立ち止まってても、世の中はたかが70億分の1のために待ってなんかくれやしない。進むしか道はないのだ。
おかげで私は、いろんな物を過去に忘れて、失くしてしまった気がする。
心が、崩れていく音がした。