苦い。
俺の人生は途方もなく苦い。
塩辛い何かが、時々現れるだけで
甘酸っぱい何かは起こらない。
ただただ、苦い。
物心ついた時には親はいなかった。
ずっと施設で暮らしてきて
働ける歳になると追い出された。
国の援助でなんとか生きていけと、
遠回しに言われたようだった。
高校に入学したものの
そこは特殊な学校で
生徒のほとんどが俺と同じように
バイトで生計を立てながら 暮らしている。
朝から昼にかけて働いて
夜間は学校に通う。
そんな環境の俺に
甘酸っぱい何かが起こるわけもなく
少しの塩辛さと
多くの苦みが
俺の人生を創り上げていた。
夕帯に入ると
高校生が店にやってくる。
甘酸っぱい青春を 謳歌しているやつらだ。
でも、そいつらは自分が 恵まれていることを知らない。
「自分の親は〜でさ」
「大学とか無理なんだけど」
聞こえてくるのはそんな言葉ばかりで
親もいなければ
夢も希望もない俺にとっては
イライラさせる言葉の矢でしかない。
別に、そいつらが 悪いなんて思わない。
俺もその立場だったら、 同じようなことを言っていただろう。
だから、きっと これは俺のエゴでしかない。
それがわかっているからこそ、 苦しいのだ。
朝が来て、陽が落ちる。
たったそれだけの日々を
俺はこれから 幾度となく過ごしていく。
この
苦い苦い旅路が
いつか甘酸っぱく
美しく熟すことを願って。
『苦い』
コメント
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下書きに埋まってた没作^ ^