6 / 1 ( 月 )
騒がしい教室 、 朝のHRが 始まろうとしている 。
学級長の 号令で 礼をすると 、 先生が気持ちの悪いくらいの笑みを浮かべて笑う 。
先生のその 言葉で 、 教室が一瞬にして 決められた拍手と歓声に包まれる 。
本国はここ数十年 人口過多 。 決められた人間しか 恋人を作ってはいけないし 、
そんな人間の中でも 、 役所に届出を出して 受理されないと 結婚も許されない 。
そんな本国では 、 一年に一度 、 全国の学校から 「 恋愛者 」 を 1人 選定する
恋愛者 に 選ばれた 人間は非常に 選ばれし者とされ 、 今後の恋愛及び結婚を自由に認められる 。
恋愛者 は 必ず選ばれるわけではなく 、 優秀な人間がいなければ その年は 選定なしと言うこともある 。
つまりは 皆の憧れ 、 優等生の証なのだ 。
周りのクラスメイトが 、 「 すごいね 」 なんて 綺麗な眼差しで見つめてくるので 、
私は ありがとうと にこやかに笑って返した 。
少しして 昂った周りの 人達を先生が落ち着かせるようにすると 、 そう私に声をかける 。
私が頷いて 、 HRは 学級長の号令で 終了した
我先とでも言わんばかりに みんな 次々と席を立って 私の席の周りに集う 。
人混みをかき分けるようにして 、 教室を出た
一度 恋愛者になれば 、 この後の人生は安定と言っても過言では無い 、とよく言う
授業をサボっても 、 どれだけ不真面目であっても
必ず幸せな人生が送れるのだ 、 なぜなら 恋愛できるから 。
恋愛 = 幸せ みたいな 概念は 、 数百年前なら 馬鹿にされるかもしれない 。
歴史の授業でも そうならった 、 昔はこの国も 少子高齢化社会だったと 。
そんな国が たったの 数百年で こんな社会に変わるのだ 、
そんな 考え事をしながら 本校舎にある 職員室に 向かおうとして 足を早々に進める 。
下を向いていたわけでは無いが 、 曲がり角で誰かとぶつかる 。
そう気さくに声をかけられたが 、 残念ながら 顔も声も 記憶に覚えがない 。
ごめん 、 誰かな なんて 聞き直すと 、 あれ? 聞いてない? なんて 答えにならない返事が返ってくる 。
結局疑問には答えてくれないまま 、 どこかへ駆け出していってしまった 。
もう少しで 一校時が 始まりそうだからかもしれない 、 走っていた彼の背中を少し眺めたあと 、 足取りを戻した 。
職員室に入ると 、 校長とお客様が話すような 応接間に通される 。
何枚か 書類にサインをしたあと 、 先生が話し出す
私は 頷いた 。 義務教育に組み込まれていたのだから 、 真面目に授業を受けていれば 覚えている 。
そうか 、 と 先生が 安堵すると 、 確認するように話し出した 。
① 恋愛者は 任命された日からちょうど一ヶ月間 、 「 番 」 と 行動を共にする事 。 ② 「 番 」 は この社会に不適合と 判断された 人間である 。 ③ 「 番 」 は 恋愛者が 選定された日から一ヶ月後 、 恋愛者の手によって 処理される 。 ④ 処理の仕方は自由とする 。 ⑤ 「 番 」 は 恋愛者 に 何事も従う事 。
… 簡略的に纏めると こんなところである 。
しかも 、 今年は 番が 3人いるらしい 、 学校側からすれば 傍迷惑な話であろう 。
なので 、 番のうち誰か1人を 私が選んで殺せと言う事らしい 。
それ以外の2人は 、政府が秘密裏に殺害するとか 。
そうやって 先生が渡してきた紙一枚には 、 それぞれの顔と名前 、 簡単なProfileが 書いてあった 。
そこには 見覚えのない名前が1人 、 そして 見覚えがある名前が2人 。
片方は 確か 同学年にいた人の名前では無かっただろうか 、
そしてもう片方は … 何を隠そう 、 幼少から一緒に育った 幼馴染の名前だった 。
幼馴染だからと言って 周りより特別な感情があるわけではないが 、 少し驚いた。
そう言って 先生に送り出されたので 、 お言葉に甘えて 今日は早退することにした 。
一校時終了のチャイムが鳴ったところで 校門を出る 、 早退なんて不思議な気分だ 。
校舎を振り返って少し眺めていると 、 馴染みのある声で名前を呼ばれる 。
そう言って 目を閉じて笑う 。
きちんと上まで留められた学ランのボタンに 、 長すぎない黒い襟足 。
正に 優等生を体現したような 男だ
ブラックジョークというか 、 そんなもので誰も笑いはしないだろう 。
少なくとも 私からしたら笑えるものではない 、
そう言って 校舎玄関を指差す 、 背が低めの少年のような子と 、 … 先程の生徒か ?
こんな顔だったかな 、 と うろ覚えの同い年に とりあえず会釈しておく 。
どんな顔をして挨拶すればいいかわからなく 、とりあえず頭を下げる 。
なにしろ 、 自分が 一ヶ月後には 彼らを殺さなければいけないのだから 。
一方彼らは 、 一ヶ月後には 必ず死ぬというのに あまり危機感がないように見える 。
とりあえず 、 「 恋愛者 」 と 「 番 」 が 生活することになる寮に 向かうことにした 。
そう言って はしゃぐ後輩を横目に自分の部屋の場所を確認する 。
流石に 部屋は別だし 、 ロック付き 。 どこかの 金髪は 、 なんで一緒の部屋じゃないのかと駄々を捏ねていたが 。
一緒に行動するとはいえ 、 どこかに出かけなければ いいので
とりあえず 夜まで 自分の部屋で過ごすことにした 。
夜 6 時
自分の部屋に あった 書類にも 一通り目を通した 。
一応 交流を作れとの指示が書いてあったので 、 三人のうち誰かの部屋に 行こうと思う 。
誰の部屋に行こうか …
秘密 ◁ 憂愁 ◁ 月下 ◁
コメント
9件
今回も神作だね!!!! めちゃくちゃ良かったよ!!!! なるほど!!!そうなんだね!!! 決められた人間としか出来ない… この世界は面倒な世界だね… この雰囲気…最高に良い!!! この雰囲気を他の何かで例えるなら… 私が○ぬための乙女ゲームみたいな 語り口調メインで…良いんだよね…!!! 心が洗われるわぁ〜!!!(?) 誰が良いか…悩んで悩んで決めます!(?) 次回も楽しみに待ってるね!!!!
わっ……初っ端から既に良すぎる〜✨乙女ゲームやった事ないのにこんなのを見てしまったら普通の乙女ゲームじゃ物足りなくなりそ〜……!!凄い続きが楽しみっ!!