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風がさらりと草をなでる
静かな丘の上
そこは街外れの古い訓練場だった
草に覆われた石畳の広場は、 今や使うものもおらず
風の音と鳥のさえずりがだけが響いていた
ミレイユは、小さな木剣を両手に握りしめていた
向いに立つのは、甲冑を外した セリル・ヴァレンティウス
その銀の髪が、日差しにきらめいてる
セリル
彼は、少しだけ眉をひそめた
セリル
セリル
それは忠告だった
だが、冷たさではない
ミレイユは、小さく頷いた
ミレイユ
ミレイユ
ミレイユ
ミレイユ
ミレイユ
セリルの瞳が、わずかに揺れた
過去の幻が、脳裏をかすめる
__あの時、守れなかった誰かの姿
セリル
セリル
セリル
セリルは手の中の木剣を構える
セリル
セリル
セリル
ミレイユは真似るが、ふらついてしまった
セリル
セリル
セリルの手が彼女の手首に触れる
ぴたりと寄せられた距離に、 ミレイユは少し頬を赤くした
ミレイユ
そのまま腕の角度を直され、 姿勢を正される
セリル
セリル
セリルの声は淡々としている
けれど、どこか優しい
そして、特訓が始まった
剣を受け流す動き、足運び、視線の置き方
簡単な反復だけでも、ミレイユの息はすぐに荒くなった
ミレイユ
ミレイユ
セリル
セリル
セリル
その冷静な声音に、 ミレイユは不思議と安心する
まるで、傍に氷の盾がいてくれるような 感覚だった
数日後
何度目かの訓練で、ミレイユの動きは明らかに成長していた
セリルは言葉にはしないが、その目はわずかに柔らかさを帯びていた
稽古が終わった後、 夕陽の中でミレイユが言った
ミレイユ
ミレイユ
セリル
セリル
ミレイユ
ミレイユの問いに、 セリルはふと空を見上げる
セリル
セリル
その言葉にミレイユの心臓が どくんと跳ねた
ミレイユ
セリルの横顔は、静かに沈む夕陽を受けて ひどく遠く見えた
訓練場から少し離れた 樹々の影に潜む小さな丘の上
黒いローブをまとったラズロ・オルフェウスが、そっと地面に腰を下ろしていた
彼の左右の瞳__ 片目は金、もう片方は青
が、剣を振るう少女の姿を 冷静に追っている
ラズロ
ラズロ
ラズロ
すぐ傍ら、風がざわめいた
ラズロは視線を上げる
そこには、静かに立つ サフィルの姿があった
水を思わせる銀青の髪が風にそよぎ、 彼の眼差しは遠くのミレイユに向いている
サフィル
サフィルがぽつりと呟いた
サフィル
サフィル
サフィル
ラズロは微笑を浮かべる
ラズロ
サフィル
サフィルは答えない
けれどその無言が、何よりも強く 彼の記憶の断片を肯定していた
かつて誰も守れず、石と化した魂
彼は、誰よりも非力であることの 無念を知っている
だからこそ、今のミレイユの姿に 心が軋む
サフィル
サフィル
サフィル
サフィル
サフィルの声は淡々としていたが、 その奥底に焦燥に似た痛みが宿っていた
ラズロがふと、いたずらっぽく笑う
ラズロ
ラズロ
サフィル
ラズロ
ラズロ
その問いに、サフィルの目が わずかに細められる
胸の奥に、まだ言葉にならない感情が わずかに芽吹いていた
それは不安か、戸惑いか、それとも__
サフィル
呟いたその声に、 ラズロは微かに首を傾げた
ラズロ
だが、それを言葉にすることはなかった
ただ、ミレイユが剣を振るう姿は、 確かに__
どこまでも真っ直ぐで、 誰の目にも美しかった
夜がそっと降りていた
草葉が夜露を抱き、 空には白い月が浮かんでいる
訓練場の隅、焚き火の傍らで ミレイユはひとり静かに木剣を抱えていた
腕は重く、足はふらつく
けれど、胸の奥は__不思議と澄んでいた
ミレイユ
その名を呼ぶと、木の影から姿が現れる
風にそよぐ長い髪、静かに揺れるマント
月光が彼を美しく照らしていた
ミレイユ
サフィル
サフィル
サフィルは焚き火のそばに腰を下ろす
その仕草すら静かで、 夜に溶けていくようだった
ミレイユ
ミレイユ
ミレイユ
ミレイユの頬に、熱が残っている
サフィルはそんな彼女を見つめながら ふっと目を細めた
サフィル
サフィル
ミレイユ
ミレイユ
ミレイユ
ミレイユ
焚き火の火が、ぱちりと音を立てた
サフィルの指先が、わずかに揺れる
サフィル
ミレイユ
その言葉にサフィルはわずかに目を伏せる
サフィル
サフィル
サフィル
ミレイユ
サフィル
サフィル
サフィル
サフィル
ミレイユの目が見開かれる
ミレイユ
思わず叫ぶように言って、ミレイユはサフィルの袖をぎゅっと掴んでいた
ミレイユ
ミレイユ
サフィルはしばし無言だった
だが次の瞬間、焚き火の赤が揺れる中で
彼の手が、そっとミレイユの頬に触れた
あたたかくて、けれどどこか哀しい指先
サフィル
サフィル
サフィル
ミレイユはこくりと頷いた
その目にはうっすらと涙が滲んでいた
__夜風が吹いた
焚き火が揺れる
二人の影が、そっと重なり合う
その距離はまだ、ほんのわずか
けれど確かに、 ふたりの心は歩み寄っていた