第二葉の写真の顔は、これまたびっくりするくらいひどく変貌していた。
学生の姿である。
高等学校時代の写真か、大学時代の写真か、はっきりしないけれども、とにかく、おそろしく美貌の学生である。 しかし、これもまた、不思議にも、
生きている人間の感じはしなかった。
学生服を着て、胸のポケットから白いハンケチを覗かせ、籐椅子に腰かけて足を組み、そうして、やはり、
※ハンケチ ・・ ハンカチ
笑っている。
今度の笑顔は、皺くちゃの猿の笑いでなく、かなり巧みな微笑になっているが、しかし、人間の笑いと、どこやら違う。
血の重さ、とでも言おうか、生命の渋さ、とでも言おうか、そのような充実感は少しも無く、それこそ、鳥のようでなく、羽毛のように軽く、ただ白紙1枚、そうして、笑っている。
つまり、一から十まで造り物の感じなのである。
キザと言っても足りない。軽薄と言っても足りない。
ニヤケと言っても足りない。おしゃれと言っても、もちろん足りない。
しかも、よく見ていると、やはりこの美貌の学生にも、どこか怪談じみた気味悪いものが感ぜられて来るのである。
私はこれまで、こんな不思議な美貌の青年を見た事が、いちども無かった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!