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魔法使いは何を唱う？－紫苑の叛逆者－

第13話 - 帰還

2024年01月31日

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かえで🍁✒️

真瀬

彼女は元々、この島の小中学に通う、至って普通の子供でした。

真瀬

確かに生まれた家は少々特殊ではありましたが、それでも伸び伸びと育っていって……

車を運転しながら、器用に話を始める真瀬さん

真瀬

私はそんな彼女の、いとこの兄という立場にあたります。

真瀬

同じ島の同じ家で育ち、そして時には、将来この家の総代になる彼女に仕える術を学びながら……。

真瀬

そうして月日が経ち、あまりにも早く、その時は訪れました。

真瀬

今年の7月1日。あの子……あの方は、歴代最も若くして、総代になられた。

真瀬

しかし、その為に彼女が手放したものは、数え切れないほど多かったのです。

真瀬

普通の高校生としての生活や、今まで培ってきた人間関係。……そして何より、外の世界への憧れと“夢”を

百瀬

…………

真瀬

今でこそ落ち着いているように見えますが、当初は家を逃げ出すこともしばしばありました。

真瀬

……伸び伸びと自由に生きていた子が、突然人生を縛り付けられてしまったのですから、足掻くのは当然です。

真瀬

それでもどうにか納得させて、ようやく落ち着いてくださいました

……ずっと、あの子はどこか大人びていると思ってた

だけどもしかしたら、それは見た目の話なだけで……

本当はもっと、子供らしい無邪気で元気な子なのかもしれない

真瀬

そんな経緯があって、時折外からお客人が来ると、つい素を出して、少々自由奔放になってしまう節があるのです

百瀬

……でも、ずっと自分を取り繕ってんのも大変っすよね。まだ16ともなれば、尚更……

真瀬

はい。……なのでそこは、私も少しばかり目を瞑らせていただいております

百瀬

優しいんすね、真瀬さん

真瀬

そうでしょうか？

百瀬

そりゃあ、うちのいとこの姉に比べたら全然。

百瀬

言葉遣いもこんなに綺麗じゃないし、多分あの人礼儀とか知らないっすよ？

いつもの調子で、冗談混じりに言う

真瀬

ははっ、それでもここまで来られたのは、その方の力が大きいのでは？

百瀬

あぁ……それは確かにそうっすね。それはマジで感謝してます

本部の場所を教えてくれたことも、行きに車を出してくれたことも、それは全部感謝してる

そのおかげで、こうしてここまで辿り着けたんだから

真瀬

……素敵な方ですよ、七瀬さんは

百瀬

そうっすかねぇ……って、え？

あれ、七瀬姉さんの名前知ってたんだ

百瀬

（まぁ、たまに本部に来ることあるって言ってたし、面識あったんかな……）

だけど……これは、少し違うような

百瀬

……あ〜……まぁじゃあ、そう言うことにしときます

これは多分、俺は首を突っ込まない方がいい話だな

百瀬

（まさか、あの姉さんに春が……）

真瀬

百瀬様

百瀬

えっ、あ、はい？

真瀬

港まで到着致しました。私はこの島から出る事ができないので、お見送りはここまでとなります

百瀬

あーはい。ありがとうございました

び、びっくりした、また心読まれたのかと……

車から降りて、トランクから荷物を出してもらう

百瀬

あ、そうだ。俺からも一個だけいいっすか？

真瀬

何でしょう？

百瀬

色々終わったら、報告がてらまた顔出しに来ますね。瀬様には特に、お世話になったんで

真瀬

……！　ええ、はい。共に楽しみにしております。きっとお嬢も喜ぶでしょう

フェリーに乗り込んで、また一息つく

百瀬

（この3日間、めちゃくちゃ色々あったなぁ……）

じいちゃん家に行って、そこから船に乗って小さい島まで行って、そこで何もかもを聞いて……

肝心のBoEの正体については…… ほぼ答えみたいな話を聞く事ができた

百瀬

（とりあえず、みんなとの集まりの前に、一旦情報整理するか……）

船に揺られて数時間、予定通りの時間に、フェリーは港へと着いた

荷物を持って降りて、スマホでここから家までの経路を確認する

百瀬

（んーと、ここからは……）

七瀬

おっ、モモ！

百瀬

え？　……って、姉さん！？

七瀬

おかえり、ちゃんと帰ってこれたんごたーばい

百瀬

まぁ、うん……え、まさかずっとここに？？

七瀬

そがんわけあるか！　もうじき帰ってくると思うたけん、車で迎えにきたっさ

百瀬

あぁ、そういうこと……

七瀬

とりあえずあっちに車止めてあるけん乗りな。それで色々あっちん話聞かせんしゃい

七瀬

えー、あんたん家どこ？　自分でカーナビに登録してくれん？

百瀬

はいはい……

車に荷物を入れて乗り込んだ後、カーナビに家の場所を入れる

百瀬

（でも、正直知らない土地で路頭に迷ってたから助かる……）

七瀬

……お？　なんや、やーらしかやつばい

百瀬

え、なんて？？

七瀬

可愛いやつだなぁってことよ。全く、昔っから素直やなかやけんなぁ〜？

百瀬

可愛いって、何が……

百瀬

（…………ん？　え、まさか……）

何の文脈もなく、心を読んだように話をする相手

それなら、島でも何人か会ってきた

百瀬

（……ばーかばーか）

七瀬

何なん急に？　年上に向かって失礼な

百瀬

やっぱりかぁっ……！！

予想が当たって、思わず頭を抱える

予知能力は魔法とは違う、魔力がなくても使える力だ

だから、魔法が使えない姉さんが能力を持っていたっておかしくはない

七瀬

そりゃ、今はうちが長崎支部代表しとーったいし、能力ん一つや二つ持っとらんば話にならんやろ

楽しそうにゲラゲラと笑いながら、そんなことを言う姉さん

長崎支部の代表……だから真瀬さんは七瀬姉さんのことを知ってたのか……

百瀬

はあ……なんかもう色々疲れたわ……

運転席にいる元気な姉さんの隣で、ぐったりと窓にもたれかかる

七瀬

着いたら起こすけん、それまで寝とって良かばい。

七瀬

流石んあんたも疲れとーやろ？

百瀬

流石のってどの俺だよそれ〜……

七瀬

昔はあがん元気に外走り回っとったじょん。何でこがん落ち着いたかねぇ

百瀬

何億年前の話だよ……

七瀬

何億って、全然10年も経っとらんばい。うちからしたら、あんたは今でも十分子供……

百瀬

……すぅ……すぅ……

七瀬

……って、寝てしもうたか。

七瀬

全く……そう言うとこが子供だって言いよーっさ、ったくこん自由人が。

七瀬

……首突っ込んだからには頑張りなさいよ、百瀬

七瀬

…………も……

百瀬

んぇ……？

七瀬

……も……モモ！　早う起きんねえ！

百瀬

おわっ！？　……って姉さん……？

七瀬

ほれ、家着いたばい。ここで良かね？

百瀬

え……あぁうん、ありがと

窓から外の景色を見ると、見慣れたいつもの街だった

気づけば、少し日が暮れ始めている

トランクから荷物を出して、運転席の姉さんの方まで来る

百瀬

姉さん時間大丈夫？　あっち着く頃真っ暗じゃない？

七瀬

ん？　あぁ、大丈夫ばいそれくらい。

七瀬

どっか泊まるにしてん荷物何もなかし、こんまま車飛ばして帰るつもりやけん

百瀬

（相変わらず強ぇな……）

七瀬

そう言うん全部聞こえとーけんね？　ったく、一端ん乙女に向かって失礼な。

七瀬

とにかくモモ、まずはお疲れ様。長旅多かったんやし、ちゃんと身体休めんねえ

百瀬

おう

七瀬

それと、また近か内に顔出すこと。

七瀬

母さんが料理食べて欲しかってんひっちゃか……あー、えーっとほら、うるさいけんさ

百瀬

あー、そういや言ってたな伯母さん……

久しぶりに会った後、すぐあの島行っちゃったからな……

七瀬

じゃあ、まぁそれくらいか。とにかく生きとかんね！

七瀬

魔法使い……しかも都会なんて、尚更何があるか分からんとやけん

百瀬

うん。姉さんも色々ありがと。めっちゃ助かった

七瀬

よかとよかと！　弟んからん頼み引き受けただけばい。

七瀬

じゃあ、そろそろ行くばい。またなモモ！　お仲間さんによろしゅう！

魔法使いは何を唱う？－紫苑の叛逆者－

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4件

まだ16歳で全然子供だもんね… 急に自由が無くなったら逃げ出したりしたいよね… けど今はそれが無くなったと思うと凄いな… 真瀬さんおっとぉ？七瀬さんに春が訪れるか？w← 確かに大体の事は七瀬さんに教えてもらったもんね〜うーん何も言わずに心読まれるのは誰でもビビりそうw なるちゃん一旦お疲れ様だね！！続き楽しみに待ってます！

そっか…総代でも16はまだ子供だよね… 本来なら友達と学校終わりに寄り道したり遊びに行ったり…そんなことができたりしてたかもしれなかったのに全部縛られたら逃げ出したくなるのもわかるよ… そして七瀬姉再登場！心が読めるまぁそうだよなwあの話からしたらw 試しにばーかばーか言ってみるなるせちゃんw そして”BoE”のことわかったんだ！？この後、みんなで合流かな？続き楽しみにしています！

かえで🍁✒️

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