コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
振り返ると、そこには長身の男が立っていた。
年の頃はわたしと同じくらいの、整った鼻梁にツンツンした黒髪が特徴的な男だ。
誰かに、酷く似ている。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
わたしは鋭い目付きで訊ねた。
制服からして我が校の生徒ではあろうが、見覚えはない。
わたしが一年生であることも加味すれば、上級生である可能性は非常に高い。
が、出会い頭に変質者などという失礼極まりないレッテルを貼られて敬意を払おうなどという気は、何処にもなかった。
???
男は敵意剥き出しでわたしを睨んでいた。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
何故わたしはこの男に変質者と蔑まれ、睨まれているのだろう?
本気で理由がわからない。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
しかし、そこを明確にしなければ話は進まない。
目の前の男から理由を聞くのが一番だろうが、聞いて答えてくれそうな雰囲気ではない。
仕方がないので、わたしは今日あった出来事を思い返すことにした。
そうすれば、おのずと答えも浮き出てくることだろう。
今日は定刻通りに家を出た。
定刻通りに学校に着き、午前中の授業を受けた。
昼休みは学食を利用。
午後の授業を聞き流し、今に至る。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
わたしはその一つ一つを吟味し、答えを導き出した。
が、それを口に出す勇気はなかった。
全身から汗が吹き出し、金縛りに遭ったように、足が地面に根を張る。
――そんな、まさか、見られていた……?
開き切った瞳孔が男を見据える。
しかし、男はイエスともノーとも口に上さない。
わたしは、恐る恐る乾いた口を開いた。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
声を絞り出してみると、喉が妙に痛かった。
しかし、ここで止めるわけにはいかない。
覚悟を決めると、わたしの口は独りでに動き出した。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
???
???
木崎姫歌(きさき ひめうた)
???
訳が分からないことを言う男。
ちなみに、麻ちゃんと言うのは我が校のマドンナである。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
???
木崎姫歌(きさき ひめうた)
???
男は急に謝り出した。
ふっ、ついに自分の過ちに気付いたか。
???
木崎姫歌(きさき ひめうた)
???
木崎姫歌(きさき ひめうた)
???
初対面の男に死ねと言われてしまった。初の体験である。
しかし男はそれだけでは満足出来なかったのか、更に声を荒げた。
???
木崎姫歌(きさき ひめうた)
男の言葉に、わたしは嫌な汗をかいた。
こ、こいつ……。
???
木崎姫歌(きさき ひめうた)
???
木崎姫歌(きさき ひめうた)
???
木崎姫歌(きさき ひめうた)
???
……え?
???
木崎姫歌(きさき ひめうた)
???
二人の間に、改めて沈黙が訪れた。
あ、あれ? こいつ、今、何て言った?
冗談で言ったつもりの言葉に、頷かなかったか? こ、こいつ、まさか、
木崎姫歌(きさき ひめうた)
???
木崎姫歌(きさき ひめうた)
わたしは半眼で訊ねた。すると、男は慌てた様子で返してきた。
???
木崎姫歌(きさき ひめうた)
???
木崎姫歌(きさき ひめうた)
???
男は尚もガミガミと怒鳴り続けた。
スポーツでもやっているのか、無駄に声が大きく、耳に響く。
そのため、このまま問答を長引かせるのが酷く面倒になってきた。
ということで、わたしは叫んだ。
楔の一撃を。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
???
男は目を白黒させた。図星でも突かれて焦っているのだろうか?
まあ、気持ちはわからんでもない。
しかしわたしも小学生を愛する者だ。いわば同志である。
もし額に土を付けて許しを請うのであれば、許してやらんこともない。
さあ、悔い改めよ。
そう、言おうとした瞬間だった。
男は少しの逡巡の後、懐から手帳の様なものを取り出し、叫んだ。
???
???
木崎姫歌(きさき ひめうた)
言われた通りに見てみると、それは見慣れたものだった。
何て事はない、我が校の生徒手帳である。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
先述した通り、男が同校の生徒であることは、制服で分かっていた。
わざわざ生徒手帳を示されるまでもない。
だから、わたしが驚いたのはそこではなかった。
そこではなく、
木崎姫歌(きさき ひめうた)
その、名前だった。