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非情

第1話 - 非情

2021年09月19日

#ホラー

#ミステリー

#青春恋愛

#ストーカー

#サイコパス

梔子朽ち無し

しょう

なあ、りょうが

りょうが

どうした？

りょうが

またあれか、
しょうの好きな子の話

しょう

まあ、そんなところ

りょうが

素直じゃないなぁ、しょうは

しょう

なにいってんだか。まあそれで、例の子の話なんだけど……

りょうが

……またRineで、
冷たくされたのか？

しょう

まあ、そんなところ

りょうが

ああ、そうなのか

りょうが

それでどうしたんだよ？
それだけでRineよこしてきたのか

しょう

いや、今日はちょっと違うんだ
例の子……の、まりのちゃんがね

しょう

帰りのホームルーム後、俺らのクラスの前で誰か待ってるんだ、最近

りょうが

それがどうかしたか？

りょうが

俺らのクラスの女子と仲良くなったとか、そんなところじゃないのか？

しょう

いいや、俺も気になってホームルーム後に教室の掃除しながら、
まりのちゃんを観察してたんだ

しょう

そしたら、りょうがが部活道具持って教室を出た瞬間、何したと思う？

りょうが

何したって……俺何もされてないってか、された覚えないんだけど

しょう

いいや、
あれは確実に……

しょう

りょうがのことを凝視してた

しょう

悔しいけど、まりのちゃんは多分りょうがにみとれてたんだよ

しょう

やっぱりあんな高嶺の花みたいな女の子、俺には無理だったんだ……

りょうが

落ち込むなって、たまたまかもしれないだろ？

しょう

いいや、あれは偶然なんかじゃない

りょうが

なんでいきなり躍起になってんだ？

しょう

……あのさ。
俺、まりのちゃんの魅力に気づき始めて、
りょうがにも色々話したよな

りょうが

まあね、色々聞いたよ。
耳が痛くなるほどね

しょう

いつもはメガネしてるんだけど、たまたま外してるところを見てて

しょう

前髪も長いし、いかにも根暗って感じだけど、絶対可愛いんだよ

しょう

他クラスの子だけど、絶対付き合いたいんだ

しょう

だから、Rineも頑張って交換したんだ……

りょうが

うん、しょうの言いたいことは全部わかるよ。
でもね、一方的じゃダメなんだ

りょうが

……しょう、お前まりのちゃんに鬼電したんだってな

しょう

なんで知ってんだよ、りょうが

りょうが

……詳しくは言えない。
でも、風の噂で小耳に挟んだって程度だよ

りょうが

トークの内容とか知ってるわけじゃないし

しょう

……そうか。
やっぱり、俺ってメンヘラ？

りょうが

ああ、
メンヘラってどころじゃないよ

りょうが

だから俺、なんかあったらすぐ言えって言ったはずだ

りょうが

なんですぐ動いちゃうんだ。
もうしてからじゃ遅いんだよ

しょう

……わかってる

りょうが

いいや、分かってないね

りょうが

しょう、いい加減にしてくれ

りょうが

もう、
まりのちゃんをストーカーはやめろ

しょう

は？

りょうが

言いたくなかったけど、ネトストまでしてるらしいな。

りょうが

そこまでして何が楽しいんだ

りょうが

まりのちゃんの本性を、
知れることができるれば本望か？

しょう

ああ、そうさ。
まりのちゃんの全てを知りたいんだよ

しょう

好きだったら当然だよ

しょう

好きな子を追いかけない男がこの世にいるってのか？

りょうが

俺にはさっぱりだよ

りょうが

どんなに好きでも……

りょうが

仮にでも好きなら！

りょうが

そんな迷惑な事、
出来るはずないだろ……？

しょう

振り向いてくれないなら、
ふりむかせるしかない

りょうが

ああそうかよ。
ここまで言ってそうなのかよ

りょうが

もういいさ、勝手にしてくれ

りょうが

でもな、次、まりのちゃんを
困らせるようなことしたら

りょうが

絶対許さない

しょう

ああ、勝手にしてくれ

しょう

俺はもう、お前と仲良くする気なんてない

しょう

俺からまりのちゃんを取り上げたのは誰でもない、お前なんだよ

りょうが

なんでそうなるんだよ。
俺は、まりのちゃんに言い寄ったりなんてしてないが

しょう

いいや違うね

しょう

お前ら実は付き合ってんだろ
分かってんだぞ？

りょうが

話が膨らみすぎだ

りょうが

なんでそうなるんだよ

しょう

確かに、お前らは2人きりで、歩いて帰ったりしてないさ

しょう

でも俺は知ってる

りょうが

なにをだよ

しょう

まりのちゃんは、お前の部活が終わるのを確実に待っている……！

しょう

それも、
周りからバレないように、
遠くでな

りょうが

なんで知ってんだよ……ってストーカーだもんな、お前

しょう

今はどう呼ばれようが関係ない

しょう

そんでお前、部活帰りによくワクドナルド食いに行ってるだろ。

りょうが

それは……

しょう

それでよ、お前の席の後ろに、毎回誰が座ってるのか……知ってるか？

りょうが

黙々と食ってるから知らないよ、
そんなこと。

りょうが

それよりもう1時だ。
明日も学校だから早く寝るぞ。

しょう

いやまだ寝るなちょっと電話する

りょうが

俺と？

しょう

いや、まりのちゃんから

りょうが

こんな時間まで起きてるのか

しょう

悪いな、ちょっと待ってろ

まりの

ねぇ、しょうくん

しょう

えっと、どうしたの

しょう

いま、1時だけど……

まりの

あの……ね、急なお願いでごめん

しょう

いやいや、そんな、
謝らなくていいよ

まりの

今から通話できないかな……

しょう

え？

しょう

別にいいけど、なんで？

まりの

いまじゃないと、だめなの

しょう

あ、うん。わかった

まりの

かけるね

まりの

通話
04:27

しょう

じゃあ、そういうことでいい？

まりの

うん、大丈夫。
こちらこそいきなりごめんね

しょう

そんなことないよ

しょう

終わったよ

りょうが

何話してきたんだ？

しょう

これからのこと……とか、
色々……かな

りょうが

ふーん、そんで？
詳しく教えてくれよ

しょう

しょうくんいつもありがとうって

りょうが

どういうことだ？

りょうが

それだけの内容なのに、
30分近く経つかよ？

しょう

だって、お互い大事な話だもん
そのくらいかかるよ

りょうが

それはいいとして

りょうが

結局さ、俺の後ろに座ってたの、
誰だったんだよ？

りょうが

まさか、
まりのちゃんとか言わないよな

しょう

そんなことどうでもいい

りょうが

いや、どうでも良くないだろ

りょうが

お前さっきの記憶吹き飛んだか？

りょうが

それとも、まりのちゃんにしつこくしすぎて消されたか？

しょう

ジョークがきついよ

りょうが

……お前、大丈夫か？

しょう

うん、全然平気だ

りょうが

答えになってない

りょうが

お前今どこにいんだよ

しょう

家の前

りょうが

家の中入れよ、冬だぞ

しょう

入れてくれない

りょうが

お前、寝ないからって追い出されたってのか、そっちこそきついぞ

しょう

違う

りょうが

じゃあなんだよ

しょう

チェーンかかってる

りょうが

……おい

りょうが

何言ってんだ、しょう？

りょうが

おい、しょう？

りょうが

外で寝たら死ぬぞ？

しょう

あのね、正直に答えて欲しい

りょうが

何をだよ

しょう

入学早々、
他クラスの春菜ちゃんに
告白されてたよね。
嬉しかった？

りょうが

だから、友達から始めよって言ったって前も話したじゃん

りょうが

忘れたのか？

しょう

じゃあ添田さんは？

りょうが

正直可愛かったけど、
俺の友達が好きだって言ってて

りょうが

部活に集中したいって嘘ついた

りょうが

これはお前にもいえてなかった

りょうが

隠しててごめん

しょう

そうなんだ、全然だよ

しょう

じゃあ、まりのだったら……
OKする？

りょうが

いいや、しないよ

りょうが

だって、お前がまりのちゃんのこと一番好きなのは知ってる

りょうが

もしかしたら酷いことしてるかも知らない。でもしょうの愛情は嘘じゃない。
だろ？

しょう

よくわかってるね

しょう

あたり

りょうが

さ、はやく親に電話して入れてもらいなよ、風邪ひくぞー

しょう

やっぱり最高だね

りょうが

なにがだ？

しょう

もうわかってるでしょ

りょうが

……なにを？

りょうが

全然わからないって

しょう

じゃあおやすみ

りょうが

あ、え、ねるの？

りょうが

うん、おやすみ

りょうが

あーあ、マジで眠いな今日

りょうが

にしても、なんで昨日……ってか深夜、あんなに話したこととかはぐらかしたんだろ、しょう

りょうが

別に小学からの仲なんだから教えてくれてもいいのによー

りょうが

とりあえず朝飯作るか

そういって、りょうがは両腕を天井へ向けて大きく伸ばした。

彼は昨日の晩御飯に余った、豚のしょうが焼きを米を詰めた弁当箱へ丁寧に盛り付けていく。

りょうが

よし、できた

りょうが

朝飯めんどいなぁ……

りょうが

のりたまご飯でいっか

そういって冷蔵庫から取り出したのりたまと、昨日炊いたご飯を茶碗に盛ったなり、立ち食いをする。

りょうが

だらしない……！
ってお母さん怒るかな……

りょうが

……よし、ご馳走様でした

りょうが

とりあえずトイレ行くか

彼は茶碗と箸をシンクに放り込んだ。そして、その足でトイレへと向かう。

りょうが

はーあ……

りょうが

って……え？

りょうが

空い……てる

りょうが

ドアが……

りょうが

まてよ、チェーン……？

りょうが

おかしいな……
昨日かけた覚えは無いんだが……

りょうがはふと玄関の扉のタイルへと視線を下ろした。

りょうが

なんだこれ……

りょうが

靴……

りょうが

靴が挟まって開いてたのか。
誰がそんなイタズラを……

恐る恐る扉の前へと靴下のまま進んでいく。

覗き込むように。そして怯えた仔犬のように震えながら少しづつ身体を斜めにしていく。

りょうが

嘘だ……

りょうが

嘘だ……！

りょうが

しょぉぉぉぉぉぉ！！

冷えきり、青ざめた身体がそこにはあった。必死にこちらの玄関を覗いているしょうが、そこにはいた。

りょうが

急いで救急車、
呼ばないと……呼ばないと……

りょうが

だめだ……

りょうが

手が……手が……

りょうが

足が……足が……

りょうが

動かないよ……

りょうが

……ックソォ！
俺は……俺は……。

りょうが

どうすればいいんだよ！？

りょうが

……

りょうが

……誰だ

りょうが

後ろにいるお前は……。
誰だって言ってんだよ！

りょうが

返事しろよ

？？？

邪魔者は排除した

？？？

私をつけてきてたストーカー野郎も

りょうが

……は？

？？？

救急車呼んだら？

？？？

まだ助かるかも

りょうが

わかってて言ってんのかよ

りょうが

もう死んでるってわかってて言ってんのかって聞いてんだよ、クソ野郎！

？？？

なんで怒るの、りょうくん

りょうが

俺のお母さんと同じ呼び方すんじゃねぇよ……クソが……。

？？？

父親は女遊びに明け暮れて

？？？

りょうくんのお母さんは、
1年前……

りょうが

黙れ

りょうが

だからこそ、お前みたいなクソに、りょうくんだなんて……。

りょうが

呼ばれたくねぇんだよ、まりの

まりの

あれ、分かってた？

りょうが

とぼけんな。
なんでしょうがお前をつけてたのか。

りょうが

全部……ぜんぶもう知ってたんだ。
……でも、だからこそ。
それを、その事実を、しょうには打ち明けられなかった。

りょうが

お前がしょうを利用して俺に近づこうとしてたってことも

りょうが

お前を一番好きでいたのは紛れもなくしょうだった。
それなのにお前は……

まりの

ええ、ためらいもなく玄関の前で待たせた。用事があるからって言ってね。

りょうが

どうして……○○区△△市‪✕‬‪✕‬のフェムメルモ311号室だってわかった？

まりの

わかるでしょ、
あいつに案内させたの

りょうが

自分のした事を自供する犯人がどこにいんだ

まりの

えーっとー、私の事かな？

りょうが

ああ、そうさ。お前みたいな頭の狂ったクソ野郎のことさ。

りょうが

俺は、今すぐにでもお前の蹴り殺してやりたいさ。
過去一に最高なシュートが打てそうだ

りょうが

でも、俺のお母さんはそれじゃダメだって言うはずなんだ。
だから……

まりの

私と結婚してくれるの？

まりの

というかしようよー？

まりの

私ね、りょうくんと付き合うためにどれだけ苦労したか知ってる？

まりの

しょうは融通の聞かない野犬みたいな男だったわ

まりの

一回身体を許しただけで、たった一度のキスだけで、あんなになると思わなかったの

まりの

だから利用してやろうって思ったの。
壊れるまで

まりの

あまりにも早い故障だったわ

りょうが

てめぇ……

まりの

まりってよんでよ、
てめぇは名前じゃないよ

りょうが

うるせぇ

りょうが

友人を、一番親しかった友達を

りょうが

殺されたやつの気持ちがわかるか？

りょうが

わからないだろうな、お前には

まりの

なにいってんの、わかるよ

まりの

一番……。
親しかった友達を殺したんだもの
分からないわけがないでしょ

りょうが

それってまさか、春菜の事か……？

まりの

そう

まりの

だって春菜から聞いちゃったんだ

まりの

3組のりょうがくんが
とってもかっこいいって

まりの

他の男に告られたり好きになられないためにも、
前髪伸ばしてメガネもかけて。
暗い人ってイメージ植え付けようとしたけど、しょうにはバレて。

まりの

散々だった。ほんと

りょうが

そこまでして……失ってまで、
やることだったのかよ！？

りょうが

お前の友情は、
愛情だけで崩れちまうのかよ！？

りょうが

なあ、ほんとにそれだけか？

りょうが

誰を殺した……？

まりの

知りたい？

りょうが

ああ、教えてくれ

りょうが

俺らが幸せになる為なんだ

まりの

そうね、わかったわ

まりの

しょう……と

まりの

春菜と

まりの

添田さん

まりの

あと、花嶋さん

りょうが

ああそうか、ありがとな

まりの

うん、だってお互い幸せになる。
そのためだもんね？

りょうが

ああ……。
お互いが正しい道に進む為のな

まりの

ねぇ、私どうすればいい？
りょうがと幸せになるには

りょうが

そのままじっとしていればいい

りょうが

右手に持っている、
その包丁を床に置いて……ね

まりの

何言ってるのかな。
私、何も持ってないよ

りょうが

台所の包丁が一本消えてたよ

まりの

違う……違う……

まりの

私は幸せになりたいだけ！
りょうくんと……ただ……

りょうが

そろそろバトンタッチです

まりの

……え？

その瞬間、りょうがは玄関のチェーンを外した。

玄関の前には既に、しょうの姿は無かった。

？？？

突撃！

まりの

なっ

まりの

ちょ、やめてよ、ねぇ！

まりの

りょうくんたすけてよ！

まりの

なんで見捨てっ……

警官

黙れ

まりの

う、うぅう！

警官

包丁なんて使えない。
いや、使わせない。

警官

お前の話したことは、
全て聞いていた。
記録も残ってる。
もうおしまいだ。

？？？

もしもし

りょうが

もしもし、りょうがです

？？？

りょうがさん！
……えっと

？？？

……彼の容態ですが

りょうが

……どうだったんですか

？？？

幸い、
命に別状はありませんでした

？？？

外にいた時間は3時間程度……
だと聞いています

りょうが

本当に良かった……
よかった……！

りょうが

偶然朝練が入ってたんです。
不幸中の幸いというか、
なんというか

？？？

りょうがさん、よく頑張りましたね

？？？

だから、亡くなった方に対して、
負い目を感じたりとか……

りょうが

いえ、
ご遺族の方に挨拶して回ります。
俺が悪いんです。
全部。

看護師

そんな……。
私は一看護師としてではなく、
一人間として、りょうがくんは
悪くないと思ってますよ

りょうが

それでも、です

りょうが

本当にありがとうございました。
俺も色々落ち着いたら、
しょうのお見舞い行きますね

看護師

えぇ、分かりました。
病院一同、お待ちしております

りょうが

ありがとうございます。
では、失礼します

苦しみは終わりを告げた。

しかし、無情な世界は

終わりは始まりだと云う。

そんな彼にとって、

親友が、一命を取り留めたこと。

たったそれだけが

彼の救いだった。

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