背後の死神さん

注意事項は1話『出会い』にてご覧下さい

さっきまで、さっきまで

そうだ、拷問をしていたんだ

そして、道具を使ったから今寝てる

なるほど、夢か

どんな夢なんやろ

グズグズと泣いている子供がいる

やせ細った体に、ボロボロの服

頭にはフケと脂がみえる

捨てられて結構経つのか

それとも捨てられる前から風呂に入らせてもらえなかったのか

どちらにせよ可哀想な子供だ

ここで手を差し伸べても意味が無い

そんなことはわかっているのに放っておけなかった

チョコが好きだから何個か常備している

夢の中でもそれが反映されていてよかった

反映って言い方があっているのか分からないけど

チョコを知らないという事実よりも驚いたことがある

ずっと下を向いていて顔が見えなかった

そしていま、顔を上げた

この子の顔……

見れない

顔にぼかしがかかっているみたいに見えない

なんなんだ、この夢……

小さい頃の思考ってこんなものなのか

よくわからない

隣に座って常備している他のチョコを取り出す

ひとつを子供にあげ、もうひとつは自分で食べる

捨てられてから結構悲惨な目に会っている

こういう子が現実にいたら今頃病気になってて

俺ら死神の標的にされてたんかな

可哀想な子供すぎる……

この夢は、俺が死神だから見てるんかな

本当はどうにかして救ってやりたい

さすがに俺の家には連れて行けないから

初兎くんとりうらくんに協力してもらってでもって

でもこれは夢

諦めなきゃ

名前を聞くとまるでノイズのような音がする

名前の事は誤魔化すか

時間が来たのだろうか

時間が来たなら、もう目覚めてもいい気がする

名前が聞けない

でも、雰囲気でわかる

さっきまで話していたであろう子供だ

成長してる…

さっきが5歳くらいで、今はもう10歳にはなってるだろう

すごい礼儀正しい子になっている

子供の成長は早いもんだな

と実感する

…そんな話してないけど

＜あ、ｼﾞｼﾞｼﾞｼﾞｯくーん！

＜もう行くよー？

このチョコをあげたら常備している分はなくなる

でも、これは夢だし

現実だとしても補充すればいいだけ

＜ｼﾞｼﾞｼﾞｼﾞｯくん、その手に持ってるの何？

＜え！何それ？！

＜宝物じゃん！！

人の命を奪ってきた俺が

子供一人にここまで心を動かされるなんてな

…俺の夢の中だけの子供達かもしれねぇーけどよ

【背後の死神さん】 『夢』 ℯ𝓃𝒹

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